声優・落合福嗣さんが語る「子育て論」両親に必ず怒られた3つのこと
声優の落合福嗣さんが、親になって感じた、両親ならではの「子育て方法」とは?
次女「なっちゃん」との言い間違いを巡るやりとり「
#新たまねぎチャレンジ」でツイッターのタイムラインを笑顔で満たしてくれた声優の落合福嗣さん(青二プロダクション)は、普段から子どもたちと「どうして?」「なんで?」から始まる会話を楽しんでいると言います。ツイッターで共感を呼んだ落合福嗣さんの子育て論について聞きました。
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――2人の女の子のお父さんでいらっしゃいますね。
長女が5歳で、次女は2歳です。仕事から早めに帰れるときは、お風呂や寝るときなど、だいたいぼくが一緒にいます。
――お子さんとの会話は。
子どもとはすごくよくしゃべります。仕事で遅くなるときも、必ず「今日なにがあった?」とか、電話するようにしています。電話で話せなかったときは、「声のお手紙」として、ラインのボイスメッセージを送ってくれています。
会話をするときには、なるべく「たのしかった?」とか「おもしろかった?」とか聞かないようにしているんです。
――その心は。
「おもしろかった?」って聞くと、おもしろくなくても「おもしろかった」って答えが返ってきてしまうんです。
「おもしろかった?」って聞いた時点で、「面白いのか、面白くないのか、どっち?」って。二択を親が決めちゃっているじゃないですか。だからその聞き方は好きではないです。
――ではどんな聞き方をするんですか?
「どうだった?」て聞きます。
でも、「どうだった?」て聞くと、「どうだった」って返ってくるんですよ。
――あ、繰り返しちゃうんですね。
長女もそうだし、次女もそう。「感想を聞いているから、感想を言って」っていうと「かんそう」っていう。
長女は3、4歳になった頃から「どうだった?」に対して「おもしろかった」とか「いまいちだった」とか「たのしくなかった」とか言うようになりました。
そうなると、「楽しくなかったんだ。じゃあなんで楽しくなかったの?」という聞き方をするようにしています。
――他にも聞き方で気をつけている場面はありますか。
ごはんも、「おいしい?」って聞きません。「どう?」って聞くと、長女は「ちょっとしょっぱかった」とかって言います。
親って、ごはんを一生懸命作るので、当然「おいしい」って言ってほしいじゃないですか。それ以外の場面でも、「楽しかった」「うれしい」って言ってほしい。親の気持ち先行で「おいしい?」「うれしい?」「たのしい?」って聞いちゃうんですよね。
でも裏返すと、「おいしいって言って」「うれしいって言って」「楽しいって言って」ってことなんじゃないかと僕は思う。
――なるほど……(2歳の息子の母である記者、反省)
食事の話に戻ると、おかずもひとつじゃないから、どうだった?って聞くと「このなすのやつはまずい、こっちのやつはよかった」などと返ってきます。
「なんでこれまずかったの?」と聞くと「歯触りがいやだった」とか「味が薄かった」という話になるので、「じゃあこれに何を足したらいいと思う?」という尋ね方をします。そういうコミュニケーションの組み立て方ができるんですよね。
そういうコミュニケーションはめちゃくちゃ楽しい。
――「どうだった?」などの聞き方をするようになったきっかけはあったんでしょうか。
うちの両親(父は元中日監督の落合博満さん)がそうでした。
「おもしろかったでしょう」とは聞かなかった。「どう思った?」とか「どんなかんじだった?」とか。
僕が娘に「幼稚園どうだった?」って聞くと、長女は「今日は~して、それはおもしろくなかったけど、あとにやったおままごとはたのしかった」とかって話してくれます。子どもの中で「楽しかった」「面白かった」「悲しかった」って、一個じゃない。
大人って、トータル的にどうだったのか、総括を聞きたがります。
でも子どもたちにとっては、「このときはこう」、「そのときはこう」って、それぞれ分けているので、なるべくそういう表現ができるように聞いてみようかなって思っています。
2006年、リーグ優勝を決めてお立ち台で観客に応える中日監督時代の落合博満さん 出典: 朝日新聞
――お姉ちゃんはそういう自分の感情とかを上手にお話できるんですね。なっちゃん(次女)はどうですか?
「また来たな」って思います。というのも、次女も「どうだった?」ってきくと「どうだった」って言うんです。
でもそれは周りにいる大人たちの聞き方が、「おもしろかったでしょう?」とかだから。テレビでもそうですよね。「楽しかったひとー!」とか「みんな楽しかったー?」とか。
そうすると、それにレスポンスしてる子どもたちが「楽しかったー」とか「はーい」とかって、肯定する返事をします。だから、そのまねっこで「どうだった?」って聞くと「どうだった」と返してくる流れだと思うんです。
――そう考えると、大人の声掛け一つで子どもの反応の選択肢を狭める可能性もあり、ちょっとこわいです。
個人的には、教育番組のあり方も変わっていくべきなんじゃないかなと思っています。
「どうだった?」って聞く方が子どもはもっといろんな表現をするんじゃないかなって思います。
コミュニケーションって、ただ親が聞き触りのいいことを受け取って、子どもにとって聞き触りのいいことを言うことではなくて、どう思ってるの?っていうものの混ぜあい、出しあいだと思っているので。
――コミュニケーションってなんだろうなってことを考えるきっかけになります。
あと、「こら」と言わないようにしています。これもうちの両親もそうでした。うちの両親は基本的には怒らない。
長女が3歳の頃、板の間にペットボトルの水をいきなりまいたことがありました。
「だめでしょ」「こら」って言っちゃいそうになるところをこらえ、「どうしたどうしたどうした」と聞きました。
そうしたら「幼稚園で木にお水を上げたら花がさいた」と長女が言うんです。「パパ、これ木でしょ?」と。だから花が咲くかなと思ってかけたと言うんです。
「オッケー。わかった」と。「じゃあパパこれから説明するけど、水をあげても花が咲かない木なんだよ」と説明し、「植物育てたいの?」と聞きました。「うん」というので、「じゃあ花屋さんに行こう」というやりとりをしたことがありました。
だから、なんでも「こら」とかいわない。子どもたちは何を考えてそういう行動をしたのかを聞くようにしています。「人をたたいちゃだめでしょ」とか「ごはん粗末にしちゃだめでしょ」とか、ではなくて、「なんでそういう行動をとったのか」を聞くようにしている。
――「
#新たまねぎチャレンジ」もそんなコミュニケーションから始まった。
「なんでそう言うんだろう」というところから始まっていて、本人も「練習したい」というので、何度も練習してみました。そうやって模索しています。
――親子のコミュニケーション方法は、ご両親からの教育を受け継いでいる?
ウソと、こっちからの暴力、お金を粗末にすることの三つは、すっごい怒られました。絶対これだけはやっちゃだめっていう三つだった。
昔、テレビ出演した時、番組の中でお札をばらまいたときがあって。場所も覚えているんですが、そのとき、カメラが止まってる間に、母親に両肩持たれて端っこに連れて行かれて「それはあんただめだよ」って。「お父さんはそれで稼いでるんだよ」と。普段怒られないからすごい覚えてて「これはやっちゃいけないんだ」って覚えているんです。
――怒られるのはその三つだけだったんですね。
逆に、それ以外は「危ないからだめ」とかも言われませんでした。
4歳の頃、子ども番組でりんごをむいているのをみて、「やりたい」と言ったことがあったんです。そうしたら、母親からまな板と果物ナイフとりんごを渡されました。やってみると、案の定、指を切ってしまうんですよね。
すると母親が「なんでいま指切ったか分かる?刃の先に手があったから切ったんだよ」って教えてくれたんです。
「危ないからだめです」って言われても子どもはわかんないんですよね。だめなことはわかったけど、なんでだめなのか、経験で覚えさせるっていうのが自分の母親。すごいなと思っていますが、まねできないなと思います。
両親ともそういう考えでした。
――なぜそんなことがお母さんはできたんでしょうか。
やっぱ、子どもがどうなっても責任を取るってことでしょうね。あとはやっぱり勇気でしょう。
それは決して無責任な放任ではなくて。本当の放任は見守る主義じゃないかな。放っておいているようにみえて本当はちゃんと見守っている。だから、うちは「見守り子育て」だったんだなと思います。
僕は大人になってから「自分だったらこうしたい」という希望が言えます。でも、「どうすればいいですか? 指示ください」と言う若い子もいます。怒られるのが怖いから最初から正解にいきたがる。
それは小さいときから「これだめ」「それだめ」「あなたの道はこっち」という教育をされているから、指示待ちになってしまうんだと思います。
――親の声掛け一つで、その後の人生も大きく変わることもあるかもしれません。
多くの場合、子どもの方が長生きする。であれば、この子が一人になったときに自分で歩けるような育て方をしないといけない、と思っている。多分、両親もその考え方に基づいての育て方だったんでしょう。
実際自分が子育てをしていると、両親へのリスペクトも強くなってきていますね。