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#110 #withyou ~きみとともに~

不登校は甘え?「『弱さ』が許せない人」との接し方 ネットの注意点

10代のコミュニティサイト「ティーンズプレイス」の初代管理人たかれんさん=吉中智哉さん撮影
10代のコミュニティサイト「ティーンズプレイス」の初代管理人たかれんさん=吉中智哉さん撮影

目次

学校に行けなかったり、いじめられていたりする人にとって、ネットは大事な逃げ場所になります。一方で、「不登校は甘えだ」といった心ない反応が来ることも。「弱いことが許せない人」には、どのように接したらいいのでしょうか? 10代が集まるコミュニティサイト「ティーンズプレイス」を立ち上げた女性に、ネットの居場所の作り方を聞きました。

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10代が悩みを打ち明ける場

「友達いないよね、ぼっちだよねなどの言葉を数人に言われました」
 

「中学は今まで無遅刻、無欠席で、なんとかやってきたけれどそろそろ限界。勉強が手つかずで最近はうつ状態??かも知れません」
 

「毎日が辛いです」
 

「私は自分の全てを母に否定されます。何を努力しても認めてもらえない」

 

いじめ、不登校、家族……。10代向けコミュニティサイト「ティーンズプレイス」の掲示板には、たくさんの悩みが並んでいます。これまでに立てられたトピックは600以上。悩みには同じ10代が耳を傾け、コメントを残します。利用は匿名で、インターネット上だけのつながりです。

10代のコミュニティサイト「ティーンズプレイス」
10代のコミュニティサイト「ティーンズプレイス」 出典:https://teens-place.com/

居場所がなかった中学時代

2015年にサイトを作った初代管理人のたかれんさん(22・神奈川県在住)は、「人とのつながりが怖いこともあるけど、仲良くするのは楽しい。話せる相手がほしいときにインターネットはすごく有効な手段です」 と話します。

 

たかれんさんは中学1年生のとき、いじめがきっかけで不登校になりました。

学級委員になったことから、授業中に騒いでいる生徒を注意したり、掃除を真面目にやっていない人がいたら声をかけたりしていました。そのことがクラスメイトから疎まれ、悪口を言われるようになったそうです。

 

「よかれと思ってやっていたことが、クラスの人から受け入れてもらえませんでした。最終的にはクラス全体に無視されたり、陰口を言われたり、ものを隠されたり。『私は何のためにやってきたんだろう』と思いました。学校に、私の居場所はありませんでした」

たかれんさんはフリースクール「Riz(リズ)」の校長も務めています=吉中智哉さん撮影
たかれんさんはフリースクール「Riz(リズ)」の校長も務めています=吉中智哉さん撮影

不登校打ち明けたブログに共感

「ティーンズプレイス」は、学校に居場所がなかった経験が基になっています。たかれんさん自身、中学生のころ、不登校の経験や悩みを打ち明けているブログを見て励まされました。

 

「中学校は皆勤賞で称賛される子がたくさんいました。不登校は私だけ。その子たちと自分を比較して苦しくなっていました。だから、ブログで同じ経験をした人がいると知って嬉しかったんです。匿名とはいえ、打ち明けるのは勇気がいります。打ち明けてくれてありがとうございます、とコメントしました」

 

一方で、ネット掲示板では「学校に行きたくないのは甘えだ」「親に育ててもらっているだけ感謝しろよ」という意見もたくさん目にしました。「学校に行かない=悪い」と考えてしまうこともあったといいます。

 

「ネットに助けを求めた人に、『学校に行きたくないって思うのは悪いことじゃない』『学校に行かなくても別の居場所を見つけることができるよ』とちゃんと伝えたい」。高校入学後、相談サイトの相談員になりました。

フリースクールで学生とカードゲームをするたかれんさん(右)=たかれんさん提供
フリースクールで学生とカードゲームをするたかれんさん(右)=たかれんさん提供

ネット利用の注意点は?

相談員の経験や「ティーンズプレイス」の管理を通して、利用するときの注意点も見えてきました。一つは、「運営元の確認」です。

 

「運営元がはっきりしていないサイトは利用しないでほしいです。特に掲示板など不特定多数の人が出入りするようなサービスは注意した方がいいと思います。運営元がしっかりとしていれば、通報システムがあったり、削除依頼に対応してくれたりします」

 

自分の考えを否定されたり、心ない言葉を見かけたりしても、直接反論はしない方がいいと話します。反論したところで出口が見えず、気持ちが晴れることはないからです。トラブルにつながることもあるかもしれません。

 

「反論せずに運営者や周りの大人に報告してください。少しでもつらいと思ったらネットと距離を置く。私も最初は反論していましたが、弱い人を許せない人は、自分が弱ることを許されなかったんだろうなと思えてきました」

高校生のころから相談員としてたくさんの人の悩みを聞いてきました=たかれんさん提供
高校生のころから相談員としてたくさんの人の悩みを聞いてきました=たかれんさん提供


スマートフォンやパソコンで何げなく見ているサイトの書き込みも、「画面の向こう側」には必ず人がいることを忘れないでほしいと、たかれんさんは話します。

「ネットが怖いのは、相手が見えないからだと思います。でも、わたしを含め、ネット上で活動している人たちが、自分のバックグラウンドを明かしたり声をあげたりすることで、少しずつ『ネットの先』が見えてくるのではないでしょうか。そうすれば、ネットは『得体の知らない怖いもの』でなく『すてきな人とつながれるツール』になると思います」

「ティーンズプレイス」より
「ティーンズプレイス」より 出典:https://teens-place.com/

インターネット=広い世界

20歳になって、「ティーンズプレイス」の管理人を10代の知り合いに引き継ぎました。自身が中学生のころは大人への恐怖心があり、サイトを始めたときから10代だけで運営しようと思っていたそうです。

管理人は卒業しましたが、いまでもLINEや別サイトで悩み相談に乗るなど、生きづらさを抱える10代をサポートしています。

「学校や家で苦しい思いを抱えていたとしても、それよりずっとずっと広い世界がネットです。そこには、あなたのように苦しんだ人や、あなたのような人を助けたいと思っている人がたくさんいます。この人とは合わないと思ったら、関係を断ち切ることも簡単です」

「ネットは怖い面ももちろんあるけれど、使い方を誤らなければ絶対にあなたの人生を色鮮やかにしてくれるはず。だからどうか、ネットの先にいる人を、わたしたちを、少しでいいから頼ってみてください」


 

withnewsは昨年4月から、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou」を始めました。日本の若い人たちに届いてほしいと、「#きみとともに」もつけて発信していきます。以下のツイートボタンで、みなさんの生きづらさも聞かせてください。


みんなの「#withyou #きみとともに」を見る

 

いろんな相談先があります

・24時間こどもSOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)
・こどものSOS相談窓口(文部科学省サイト
・いのち支える窓口一覧(自殺総合対策推進センターサイト

【お知らせ】「#withyou」が本になりました

2018年4月からwithnewsで連載している、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou」が本になりました。1512円(税込み)で、4月19日発売です。
 
学校や普段の生活に生きづらさを感じていた人が、どうやって逃げたか、どうしたら逃げられるのか、その方法を集めました。色んな逃げ方を知ることで、自分なりの逃げ方を探し出すきっかけが見つかるはずです。一緒に「正しい逃げ方」を見つけにいきましょう。

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