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2019年04月10日

常に「真逆」を考える 『家、ついて行ってイイですか?』Pの企画術


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『家、ついて行ってイイですか?』の高橋弘樹プロデューサー=いずれも瀬戸口翼撮影

『家、ついて行ってイイですか?』の高橋弘樹プロデューサー=いずれも瀬戸口翼撮影

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ライターの方も、営業の方も、広報の方も、「企画」で悩んだりつまずいたりすることはありませんか? 多くの仕事に関係する企画力。どうしたら人の心をつかむ企画は生まれるのでしょうか? テレビ東京系の人気番組『家、ついて行ってイイですか?』(家つい)の高橋弘樹プロデューサーに聞きました。

“ちょっぴり役立つ”トークイベント

2月中旬、ライターや広報の方を対象に、“ちょっぴり役立つ”トークイベント「withnewsおはなし部」を開きました。その第1回ゲストが高橋プロデューサーです。企画の立て方について、近著「1秒でつかむ『見たことないおもしろさ』で最後まで飽きさせない32の技術」(ダイヤモンド社)にも惜しみなくノウハウを書いています。


トークは、withnews編集長・奥山晶二郎が質問を投げかける形で始まりました。

 

高橋弘樹(たかはし・ひろき)
2005年テレビ東京入社。以来13年、制作局でドキュメント・バラエティーなどを担当。プロデューサー・演出を務める『家、ついて行ってイイですか?』では、これまでに600人以上の「人生ドラマ」を放送。

 

奥山晶二郎(おくやま・しょうじろう)
2000年、朝日新聞社に入社。佐賀、山口、福岡の地方勤務を経て社内公募で東京本社デジタル部門へ。「withnews」立ち上げに携わり、現在編集長を務める。

『家、ついて行ってイイですか?』
終電を逃した人に、タクシー代を支払い「家、ついて行ってイイですか?」と聞き、OKだったらその場でついて行くテレビ東京系の人気番組。2014年1月に放送開始し、6年目に突入。

「見たことない企画の立て方」とは?

 

奥山編集長

そもそも高橋プロデューサーの考える「企画」とは何ですか?

 

高橋プロデューサー

企画って0から1を生むものだと思います。世の中にお金や新たな価値を生むもの、何かを生むきっかけになるものが「企画」かなと思っています。

 

奥山編集長

企画を立てるときに具体的に気をつけていることはありますか?

 

高橋プロデューサー

「見たことがないもの」を作ってやろうと思っています。すでに誰かがやっていることを、自分が人生かけてやるのはもったいないですよね。

 

奥山編集長

その、見たことがない企画の立て方を教えてください。

 

高橋プロデューサー

「見たことないもの」のためによくやるのは、ひねくれた発想をし続けることです。常に「真逆から物事を見る」ようにしています。

『家つい』は、自分が好きなものを思い浮かべていました。 『NHKスペシャル ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』という番組のような密着ドキュメンタリーをやってみたいと思いましたが、それはすでにやられています。予算的にもブラジルに長期間行くのは無理なので、真逆を考えました。

地球の真裏の見たことないところではなく、半径10mの見たことないところ。アポをとっていない人の家の中って、見たことないじゃないですか。半年の密着ではなくて、ドキュメンタリーの即興です。

 

奥山編集長

そんな面白い企画を考えても、採用される・されないの境界線があるのでは?

 

高橋プロデューサー

みなさん仕事をしていて身にしみていると思いますが、企画って属人的なものです。企画だけで選ばれることはありません。普段の勤務態度が重要

僕は企画が結構通る方だと思いますが、なぜかと聞かれたら「生活態度」だと思います。まじめじゃないけど、コツコツ与えられた社業をこなす。1.1倍の成果を出すことをディレクターのときにやっていました。サラリーマンなので、そんなもんですよ(笑)

お客さんにとって有益であれ

 

奥山編集長

受け手に時間を使ってもらうにはどうすればいいのでしょうか?

何かに時間を使うというのは、貴重な時間を割いてくれているということ。withnewsは無料モデルでやっているので、対価は時間になります。その人の限られた時間を2、3分もらうためには、何かしら役に立つとか、存在意義を見いだしてもらわないといけません。

 

高橋プロデューサー

テレビ局に入って、民放のバラエティー番組はいらないものだという発想を持てと教えられました。

確かにそうだと思います。誰も死なないし、病気も治らない。勝手に面白そうなことを放送してお金をいただく。いらない職業だということを立脚点にして、お客さんのことしか考えるなと。

家で楽しみたい笑いって何だと思いますか? 高尚なことばかり言っていても、誰もついてきてくれません。お客さんにとって有益であるべきで、そこに自分のやりたいことを混ぜるんです。

快感になること、有益性、PR、僕が伝えたいメッセージを忍ばせておいて、お客さんが欲しているものに包んで送る。それは今でも意識しています。

 

奥山編集長

受け取る側のニーズで包む。

 

高橋プロデューサー

視聴者の方が欲しているものが交わるところを目指して、企画に落とし込んでいきます。

自分がやりたいことがAの円、視聴者のニーズをBの円、会社が求めていることをCの円とすると、その三つが交わるところを目指しています。

 

奥山編集長

『家つい』で視聴者が求めそうなことはなんでしょう?

 

高橋プロデューサー

終電逃した方に、「タクシー代を払うのでついて行っていいですか」と聞く場面をどう見てほしいかというところですが、笑って見てもらいたいというのが入り口です。

酔っ払ってベロベロなので、動きも言っていることも面白い。家について行ったら、家が汚かったり奥さんが怒っちゃったりで、ベースは笑いです。

バズり=「やばい」「変態」

 

奥山編集長

「バズり」と「炎上」の距離感が難しいところがあります。

ウェブでは1日何千本とニュースが流れる中で、ごく一部しかピックアップされません。目立とうとするとタイトルであおるとか、過激な表現を抜き出すといったことが起きがちです。

バズりという表現ではないかもしれませんが、高橋さんの仕事でも意識していますか?

 

高橋プロデューサー

バズりでいうと、『吉木りさに怒られたい』という番組はYahoo!ニュースでバズりました。『家つい』もそんな感じです。ちょっと「やばいな」というのはバズると思います。

吉木りささんの番組は、吉木さんにずっと怒られるだけ。『家つい』はのぞき気質。僕は「やばい」「変態」という言葉で分析していたんですけど、今まで否定的だった価値観を解き放ったとき、バズりが生まれるんじゃないかなと思います。

ただ、バズはあくまで手段であって「バズり狙い」をやるのはよくないと思います。やりたいこと、核となるメッセージが根本にあって、取材対象のいい部分を描けることが大切です。


自己開示で信頼関係をつくる

 

奥山編集長

テレビは途中から見る人がいるとはいえ、世界観を共有しやすいコミュニティーな気がしています。例えばウェブは特に極端ですが、発信元も分からず一期一会でコンテンツに接している。細切れの出会いの中でも、意図をうまく伝えるためのコツはありますか。

 

高橋プロデューサー

視聴者と信頼関係を結びたいですよね。番組でもそうしていますが、「作り手の自己開示」が大切だと思います。

こういう人間なんですよ、こういう価値観を持っていて、こういうメッセージがあるんです、というのをプロフィールでさらす。

ブログならプロフィール、コンテンツだったら自分のキャラやメッセージを入れる。自分はこの価値に責任を持っているというのを明確にする。受け手は、違うと思ったら離れていくし、共感したら近付いてきます。

 

奥山編集長

『家つい』では、テロップの文体もタレントさんのアフタートークもひとつ自己開示の要素になっている?

 

高橋プロデューサー

おっしゃる通りです。テロップはディレクターが書いてきたものを尊重します。僕が手を入れることもありますが、それはディレクターと僕の自己開示です。このVTRについてどう思ったかというメッセージになるんですね。それをすることで、視聴者の皆さんにディレクターの狙いを分かってもらえるようにしたい

曲もそうです。「Let It Be」は人生を肯定する歌。そのままでいいよという歌だと思います。人生を1人20分切り取らせてもらっているんですけど、我々はどの人の人生も肯定していますというメッセージを伝えているつもりです。

批判に耐え抜いたものだけが生き残る

 

奥山編集長

なかなか企画が通らないとき、企画を通す「秘術」はありますか? 本当に面白くない企画なのか、思っていたものと違う形で角が丸くなって通らないなのか、組織だからこそ通らないなのか。

 

高橋プロデューサー

角が丸くなってしまうのは、反対者の方がいるからなんですよね。いろんな人が関わってくればくるほど、企画が自分のものじゃなくなってしまいます。

ヘーゲル的なこというと、AとBがあったら、昇華させるんですよ。自分の価値観を残して別の要素を取り入れるにはどうしたらいいかを連続して考える。

自分は人の家に行くロケをしたいけど、「人の家は危ないからやめろ」と言われたとします。危ないからやめるではなくて、危ないんだったら安全にするにはどうしたらいいか対応を考える。

反対者ってたくさんいます。でも、反対はありがたくて、リスクを洗い出してくれているだけだと思うんですね。反対意見を取り入れて、一段上に持っていく。テレビ作りの一般的な作業です。テレビはいろんな人が批判してくるけど、耐え抜いたものだけが通る世界です。

高橋プロデューサーが書いた企画書。左が『家、ついて行ってイイですか?』の基となったもの=高橋プロデューサー提供

高橋プロデューサーが書いた企画書。左が『家、ついて行ってイイですか?』の基となったもの=高橋プロデューサー提供

薄味うどんだけじゃダメ

 

奥山編集長

企画をもむ視点として、マスに向けた発信が前提だと思います。新聞は日本人全員に情報発信するスタンスでやってきましたが、ターゲットを絞り込んだものとみんなに受け入れられやすいもののほどよいバランス感ってありますか?

 

高橋プロデューサー

テレビ東京もマスメディアなので、多くの人に見てもらうという目的はあります。

固定ファンをつかみたい場合、薄味うどんだけじゃダメなんですね。ベースは誰でも食べられるけど、ちょっとアクセントを効かせる。「分かる人には分かる」ということをぶっ込んでいくんですね。コンテンツってそういうものだと思います。

 

奥山編集長

大事なことだと思います。一方で、こだわり部分は間違うと「自己満足」になりがちです。映像とテロップとの組み合わせもあると思いますが、気をつけていることはありますか?

 

高橋プロデューサー

これは自己満足でいいと思っています。気をつけなきゃいけないのは、本筋を邪魔しないことですね。

文体にこだわる記者がいても、それで伝わりにくくなるのでは意味がありません。番組も、こだわりが強すぎて本編を理解するのに著しく支障をきたしていたら、本末転倒です。お客さんが不快に思わない、望んでいることを阻害しないことが大切。その上で自分の価値観を忍ばせておくことが必要です。

 

奥山編集長

そもそも、マルチターゲットは今後も成立するのでしょうか? 趣味嗜好が細分化してきて、全部をカバーするのは難しい時代です。ターゲットを狭めて分かる人だけ分かればいいとするのか。

 

高橋プロデューサー

メディア論的にいうと、マスメディアはなくならない気はします。

情報が細分化すればするほど情報量は多くなる。誰かがまとめて編集する機能は大切です。マスメディアというプラットフォームの中にいろんなファンを増やしていく上では、マルチターゲットは大事かなと思います。

「変わる」と「変わらない」の併存

イベントでは、会場からもたくさんの質問が出ました。

「企画で『つかみ続ける』ために大事にしているところはありますか?」という質問に対して、高橋プロデューサーは「『変わる』と『変わらない』を併存させることが大切。変わろうとするあまりにファンを失っている例も見ています。変える部分、変えない部分を常に最適化しながらやるしかないですね」と答えていました。

ここでも重要なのは「お客さんが欲しているもの」は何かを考えることですね。

次回のwithnewsおはなし部は、4月15日(月)に開きます。テーマは「ライターの流動性が高まる時代に描くキャリアパス」。メディアのコンテンツ制作およびプロデュースの経験が豊富なノオト代表の宮脇淳氏とwithnewsの編集長・奥山晶二郎が語り合います。

詳細はこちらhttps://peatix.com/event/622957をご覧ください。

『家つい』はここで作られる! テレ東スタッフ部屋にまさかのアレが
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