顔の変形やあざ、まひ……。人とは違う外見のため学校でいじめられ、就職や結婚で苦労する「見た目問題」。当事者のリアルな体験は、多感な中高生の悩みを解決するためのヒントになるかもしれません。「手術で普通の外見になれるとしたらどうするか」「過去の自分に何と声をかけるか」……。当事者3人が中高生と交流したイベントでは、たくさんの質問が寄せられました。3人が出した答えとは。
中高生と「ミタメトーク!」
23日に東京・渋谷で開かれたイベント「ミタメトーク!」で中高生と交流したのは、この3人です。
生まれつき髪や肌が白く、弱視。ずっと外見に違和感があったが少しずつ誇りに思えるようになった。福祉施設勤務。
顔の骨が未発達で生まれ、聴覚障害もある。中学時代、引きこもりを体験した。筑波大大学院生。
顔の左側に大きなあざ。高校時代は友だちがいなくて孤独だった。自転車の旅を転機に前向きになれた。公務員。
(前編)顔の変形やあざ… 悩んだ3人が中高生に伝えた生きるヒント

中高生からたくさんの「?」
イベントでは、当事者の話を聞いた後、中高生から質問を募りました。見た目問題の解決に取り組むNPO法人「マイフェイス・マイスタイル」のアドバイザーを務める朴基浩さんが寄せられた質問を読み上げ、当事者3人が答えていきました。
これだけは絶対に曲げないという信念はありますか?
神原さん
即答した神原さんに、会場からは「おー」という歓声とともに拍手が起こりました。
神原さん
仕事の面接で見た目で断られたことはありますか?
神原さん

自分を受け入れることで変化したことは何ですか?
三橋さん
世の中に症状を知ってもらいたいですか?
石田さん
僕の見た目に慣れてもらいたい。トリーチャーコリンズ症候群の後輩たちが過ごしやすい社会になってほしいので。
神原さん

「うっとうしい善意」もある
司会者の朴さんが「僕からの質問」として、「うっとうしいと感じる善意はある?」と尋ねました。
三橋さん
この症状を知ってもらいたくて、意図的にあざを隠さないでいます。そういう僕の思いをくまずに、「隠すことが正義だ」と押しつけられるのは迷惑です。
神原さん
石田さん
安易な共感に疑問を呈した石田さん。司会の朴さんは「きれいごとばかりじゃない、生の声です。どう接すればいいのか、わからなくなってしまいますよね。中高生のみなさんにはモヤモヤしてほしい。答えはありません。悩んでほしい」と訴えかけました。

「普通の外見になれる手術があったら受けますか?」
中高生が手を上げて直接質問をする時間もありました。
参加者
石田さん
日常生活もたぶん同じ。友達になろうと僕から声をかけても、拒否する人もいます。そういう人がいることを覚悟しないと、僕は社会に出られなくなってしまいます。
参加者
神原さん
石田さん
そのためには、成功体験や僕は頑張ったと思えることを積み上げることが大事だと思います。ゴールはないと思います。
参加者
石田さん
顔が変わることで、今までの自分を受けて入れてくれていた親や友達がどう思うのかなという気持ちもあります。
ただ、小学生の時のように、すごい苦しい時だったら普通の顔を選択していたかもしれません。
三橋さん

「逃げてもいいよ」
参加者
三橋さん
石田さん
神原さん
そう感じる自分を親不孝だととらえてきたけど、うれしくないのは私の中で自然に生まれた気持ち。だから、「その感情は間違っていないよ、素直でいいよ」と言ってあげたいです。

「差別」って何?原因は?
テーマは「差別とは何か」にまで広がりました。
参加者
神原さん
石田さん
三橋さん
「知らないこと」が差別の原因と、神原さんと石田さんは指摘しました。
一方で、司会の朴さんは「本当ですか? 知った上で差別的発言をする人っていますよ?」と疑問を投げかけ、会場はモヤモヤした雰囲気に。中高生たちも考え込みます。

「接し方、自分流で考えて」
最後に、当事者3人が中高生にメッセージを送りました。
三橋さん
神原さん
石田さん

中高生が感じたこと
3人の言葉は中高生の心にも響いたようです。彼ら・彼女らが会場で語った感想を紹介します。
参加者
芸能人に外見に症状がある人がいれば、世の中が変わるんじゃないでしょうか。
参加者
確かに見た目が普通とは違って、人間っぽくないところもあるかもしれない。でも、「僕たちも人間なんだ」と訴えていく必要があります。
参加者
参加者
参加者

共催:withnews、NPO法人「マイフェイス・マイスタイル」
協力:朝日中高生新聞
撮影:岩井建樹、神戸郁人