連載
#2 東日本大震災8年
大災害、その時ペットは……マンションの都市住民、今からできる備え
大規模災害が起きたときにペットをどうするかへの対策が動き始めている。2011年の東日本大震災以降、飼い主とはぐれたり、避難所への同行を断られたりする例が相次いだためだ。各地で獣医師会や専門学校などと災害時の協定を結ぶなどの支援態勢作りも進んでいる。
大規模災害の発生時、ペットを飼っている被災者がペットと共に避難所に入れず、自らの避難所生活を断念して自動車の中や被災した住宅内で過ごさなければならないことなどが相次いだ。
避難所では被災者のための場所の確保や食事の手配に加え、衛生上の問題でペットへの対応ができないことが多いからだ。
車中泊をする飼い主がエコノミー症候群になる例もある。自治体としても、被災者が避難所に入らないと被災状況の把握が難しくなり、救援態勢作りに支障がでることもあった。
こうした状況を解消するため、愛知、三重、岐阜、静岡の各県獣医師会と名古屋市獣医師会は昨年9月、相互協定を結んだ。
東海地方で災害があった場合、被災した地域の獣医師会から直接要請を受け、他の獣医師会が被災地に獣医師を派遣。
被災ペットを預かるシェルターが現地で足りない場合、保護や受け入れもするという。ペットの支援態勢をしっかり進めることで、飼い主の安全確保にもつなげたい考えだ。
災害直後の人命救助を担う災害派遣医療チーム「DMAT」の動物版ともいえる「VMAT」の育成も全国で相次ぐ。福岡や大阪、群馬などですでに発足したほか、各地で立ち上げが進められている。
福岡県獣医師会が13年に設立した福岡VMAT。16年4月の熊本地震では、福岡VMATのメンバーが益城町の総合運動公園体育館を訪れた。
避難所内を回ってペット同伴の避難者を見つけると声をかけて回った。地元の動物病院などが被災した場合に被災地の外から支援に入るのがVMATの役割だ。
また、動物愛護ボランティアリーダーの育成を進める自治体も。南海トラフ地震の影響が想定される静岡県は、災害時にペットの救護や飼い主への対応にあたる災害時動物愛護ボランティアリーダーを育成している。避難所でのペット収容スペースの確保も急ぐ。
昨夏の西日本豪雨では、岡山県真備町でNPO法人がトレーラーハウスを使った犬猫ペットの預かり所を開設した。
日中、自宅の片付けや仕事に出かける際にペットをどうするかが問題だった。トレーラーでは犬の訓練士やトリマーなど動物の取り扱い専門家が世話をした。犬は散歩にも連れて行った。
熊本地震の教訓から、南海トラフ地震の影響が想定される静岡県では、避難所運営ガイドラインも作った。避難者とペットの通り道を分けた収容方法、飼い主同士が協力してペットの管理に責任を持つなどの内容だ。
災害時、自宅が被災してペットの飼育が難しかったり、避難所への同行が難しかったりした場合に飼い主自身はどう行動すべきか。
(1)普段行きつけの動物病院や都道府県の動物保護管理センター、愛護センターに相談する。自治体と獣医師会が連携し、被災ペットの一時預かりや保護をしているためだ。
(2)避難所への同行避難を周囲の人から受け入れてもらいやすいように、ほえたりこわがったりしないよう平時からのしつけも大切、と獣医師会関係者は訓練や講習会で呼びかけている。
大規模災害の発生時に、東京都は福祉保健局が中心となり、獣医師会や動物愛護団体など関係団体と共働し、「動物救援本部」を設置すると「地域防災計画」に盛り込んでいる。
都内の被災自治体から情報を集め、獣医師の派遣などの要望に対応する。主に治療を進める「動物医療班」に加え、飼い主不明の被災動物の保護や施設への搬送を進める「動物保護班」を置き、一時的な保護施設として動物愛護相談センターなどを提供する。
一方で、近年の趣味・趣向の多様化から、ペットが犬や猫以外に多種化していることで、対応が難しくなるのではないか、との心配の声も。
23区のある担当者は「は虫類や猛禽(もうきん)類など個人で飼っているペットも多種になり、現状でも実態把握が難しくなっている。
さらに災害時の対処が多岐に渡るのではないか。動物園など実際に飼育経験のあるところとの連携が必要になってくる」と話す。
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