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NGT48暴行事件 CM見合わせ、市長も苦言……問題悪化の原因は?

事件前、ステージ上でパフォーマンスをするNGT48の山口真帆さん=昨年9月、日本武道館
事件前、ステージ上でパフォーマンスをするNGT48の山口真帆さん=昨年9月、日本武道館

目次

 アイドルグループNGT48のメンバー山口真帆さん(23)が顔をつかまれるといった暴行事件の被害を公表して1カ月が過ぎました。事件の被害者が謝罪したことで、NGTの運営会社の対応に批判が殺到したこの問題は、いまも事実関係やメンバーとファンとの不適切な関係の有無などをめぐって臆測が飛び交う状況が続いています。山口さんら一部のメンバーのツイッターのプロフィルからグループ名が消えて、波紋が広がる一方、プロモーションに起用されている広告にも影響が出ています。事件から見えたアイドルビジネスの課題について考えます。

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新潟駅近くの商業ビル内にあるNGT48劇場
新潟駅近くの商業ビル内にあるNGT48劇場

NGT48という表記が消えた

 2月3日、山口さんのツイッターのアカウントのプロフィルからNGT48という表記が消えました。菅原りこさん(18)、長谷川玲奈さん(17)、村雲颯香さん(21)も続きました。いずれも山口さんが副キャプテンを務めるチームGに所属し、山口さんと親しいといわれるメンバーも多くいます。

 4人から理由説明はありませんが、折しも、NGTの公式サイトで、研究生出身の正規メンバーによる劇場公演の日程が発表された日だっただけに、ネット上では「正常化を図ろうとする運営への抗議では」といった見方が広がりました。


CM見合わせ、地元市長も苦言

 NGTが新潟開港150周年のスペシャルクルーなどを務めている新潟市の中原八一市長は1月下旬の会見で、「もう少し早くしっかりした対応を取っていればこのような状況にならなかったのではないか」とAKSに苦言を呈しつつも、NGTとの「関係性は今後も変わらない」と述べました。

 一方、広告業界には影響が広がっています。今回の問題が起きて、いち早くNGTが出演するCM放映を見合わせた新潟市の「一正蒲鉾」は、今後の対応は「まだ決まっていない」としています。(追記:2月下旬の取材で、同社は2月に契約を終了したことを、明らかにしました)

 広告業界の関係者からは、一般論としつつこんな声も聞かれます。

 「全容が見えず、どのメンバーに問題があるか分からない状態では怖くてCMなどには起用できない。一刻も早く分かっていることを明らかにして欲しい」

事件前のステージ。メンバーと歌う山口真帆さん=昨年9月、日本武道館
事件前のステージ。メンバーと歌う山口真帆さん=昨年9月、日本武道館 出典: 朝日新聞

夜に自宅玄関で……

 今回の事件、何が問題だったのかをあらためて振り返ります。

 事件が起きたのは昨年12月8日夜でした。山口さんの自宅玄関で顔をつかむなどしたとして、男性2人が暴行容疑で翌9日朝、新潟県警に逮捕されました。2人は同月28日、不起訴処分になり、釈放されましたが、新潟地検は処分理由を明らかにしていません。

 当初は被害者が匿名で発表されたため、表沙汰にはなりませんでした。

 ただ、翌9日午後、山口さんは元々決まっていた、新潟と福島を往復する列車内でのイベントに菅原りこさんと参加しました。「普段はファンに言葉をかけてくれるのに目を合わせることもなかった」。警備員に守られて歩く様子に、「どうしたんだろうとファンの間で話題になった」(参加した山口さんのファン)といいます。

「耐えられない」ツイッターで訴え

 事件が明るみに出たのは、1月8日の深夜から9日早朝。動画配信サイトで、山口さんは涙ながらに訴えました。

 「なんでこんな怖いめに遭わないといけないの」「(運営側が)対処してくれると言ったから、この1カ月怖かったけど、ずっと待ってた。だけど何もしてくれなかった」。ツイッターでも「まじめに頑張っている子もたくさんいる。そんな子たちが私と同じ目に遭うのは耐えられない」とつぶやきました。

 そして翌10日、新潟市のNGT48劇場であった3周年記念公演のステージ上で山口さんは、「お騒がせして、申し訳ありません」と謝罪しました。運営側のあいさつすらまだない段階でした。

 NGTの前キャプテンで俳優の北原里英さんが即座に「あなたは謝るべきではありません!悪いことしてないです」とツイッターで発信。運営会社AKSへの批判が殺到し、被害者が謝る異例の事態に、CNNやガーディアンなど海外メディアも後日、報じました。


沈静化できたチャンスあった

 山口さんの公表から1カ月。ネット上には山口さんを「勇気ある行動」とたたえる意見が多数を占める一方、「山口さんのせいで(グループが)壊れた感じがする」「混乱を拡大している」といった中傷も散見されます。

 犯罪の被害者で、グループの問題を「告発」した当事者が、批判にもさらされ続ける。そんな事態が続いてます。

 今回、鮮明になったのはAKSの危機管理対応の欠如、そして、説明責任を果たさない姿勢です。

 3周年記念公演の終了後、AKSはホームページにコメントを出し、被害を認めた上で、「(山口さんの)帰宅時間が推測できるようなことを伝えたメンバーがいた」と説明。しかし、実名や詳しい状況を明かさなかったため、ネット上では複数のメンバーの名前があげられ、背景にファンとの不適切なつながりがあったのではないかという疑惑や臆測が一気に広がりました。

 沈静化させるチャンスはありました。1月14日、AKB48グループの成人式の後に、AKSの松村匠取締役、早川麻依子・新NGT48劇場支配人ら3人が報道各社の取材に対応した時です。

 ですが、松村氏は山口さんが謝罪した件は「浅はかだった」と誤りを認めたものの、詳しい経緯や事実関係は捜査に関わるという理由でコメントを控えたり、設置する第三者委員会の調査にゆだねるという発言が目立ったりしました。加えて、直前までNGTの劇場支配人だった今村悦朗氏が姿を見せず、松村氏が引責ではなく「弊社の人事異動」だと説明したことが、火に油を注ぐ形になりました。

一連の問題について説明するAKS幹部。(左から)松村匠取締役、早川麻依子・新NGT48劇場支配人、岡田剛・同副支配人=2019年1月14日、東京都千代田区
一連の問題について説明するAKS幹部。(左から)松村匠取締役、早川麻依子・新NGT48劇場支配人、岡田剛・同副支配人=2019年1月14日、東京都千代田区

疑問は解消されず

 1月25日、早川劇場支配人は劇場での公演前に謝罪したうえで、事実関係については「一つひとつ事実確認をしている。私から臆測で話しては、メンバーのプライバシーや将来にかかわるので発言は控えたい」。「私どもが調査すると先入観が入ってしまう。第三者委員会にすべてをゆだねる」と話しました。

 2月1日、AKSは弁護士3人で構成する第三者委員会の設置を発表。調査期間は1カ月半をめどとするとしましたが、ここでも新事実は明らかにされませんでした。

 新たな非公式な情報や疑問点が出るたびに、それが新たな疑問や前の情報との矛盾を生む。「厄介」と呼ばれる一部の悪質なファンらに運営はどう対応していたのか。そしてメンバーとの不適切な接点があったのかどうか。肝心の疑問は解消されていません。

 「今の状態では安心して応援できない」。先月、劇場公演を見た20代の男性はこう語りました。

 複数のNGTファンによると、逮捕(不起訴)された男性2人は劇場公演やライブ、イベントなどでよく目撃されていました。

 ただほとんどのファンは握手会や劇場公演など、設けられた場でメンバーを応援する一方、プライベートな状況での接触は控えます。発覚すれば、普通なら運営から公演などへの「出入り禁止」など、ペナルティを課せられるリスクもあります。

 ところが今回、山口さん宅の玄関で事件が起きたことから、メンバーの住所が知られ、脅威にさらされていたことが明らかになりました。1月23日、地元紙の新潟日報は同社を訪問した松村氏らへの取材で「山口さんの向かいの部屋を加害者の男が借りていたことを明らかにした」と報道しました。リスク管理上、きわめて深刻な状況が放置されていた可能性があります。


何が問題だったのか……

 メンバーが安心して活動できる環境があってこそ、ファンも安心して応援できます。にも関わらず、運営側は、不安を払拭させる情報発信を積極的にしようとはしませんでした。

 日本を代表するアイドルグループの一つである48グループは、アイドルを夢見る女性にとって、あこがれの存在となってきました。高い倍率のオーディションを突破しても、そこからがスタートで、厳しい競争が続く世界。

 それでも、華やかなステージをめざし、地元を離れてアイドル活動に取り組んでいるメンバーも少なくありません。青森県出身の山口さんもその一人です。

 だからこそ、運営には、トップレベルのグループにふさわしい、リスク管理やマネジメント能力が求められています。メンバーの人数に対し、スタッフの人数に限りがある、メンバーのプライベートの管理はおのずと限界もある。

 そういった事情を差し引いても、メンバーが笑顔で活動できる根底には、メンバーの安全の確保、そしてメンバーはもとより、ファンから見ても透明性や公平感が感じられる運営環境が欠かせない。今回を通じてそう強く感じます。

 社会的信頼を取り戻すためにも、AKSは明らかに出来る事実関係は、第三者委員会の調査を待たずに公表するべきです。そして、第三者委の調査は幅広く行われ、結果はきちんと公表。踏み込んだ対処と改善策が講じられることを願ってやみません。

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