連載
#4 平成B面史
国産レトロゲーム、外国人も魅了 カナダ外交官「僕はオタクだった」
平成(1989年~)になっても、しぶとくゲーマーを魅了し続けたのが「国産レトロゲーム」。「ディスクシステム」や「メガドライブ」の単語に反応する人も多いはず。ゲームが趣味の記者(41)が赴任した名古屋に、レトロゲームにこだわりを持つ中古ゲーム店を見つけました。早速訪ねてみると、外国人客の姿が……。いったいなぜ?!(朝日新聞記者・前川浩之=1977年・昭和52年生まれ)
「この世にただのクソゲーなど存在しない!」
こんなモットーを掲げるのは、「名古屋の秋葉原」とも言える大須にある「MEIKOYA(メイコヤ)」。店長の三浦崇さん(47)が2009年5月に開業した中古ゲーム店です。「名作中古ゲーム屋さん」を略して「名・古・屋(めい・こ・や)」とするのが店名の由来。
三浦さんは、「私の人生は、ほとんどゲームで出来ている」と豪語する筋金入りのゲーマーでした。
名古屋市内の高校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。2年間の給与はほとんどゲームにつぎ込んでしまいました。その後、大手ゲーム会社「ナムコ」(現バンダイナムコアミューズメント)運営のゲームセンターで働き、「何か始めるなら自分が一番よく知っているものを売ろう」と考えて、中古ゲーム店を開きました。
「子どものころ、押し入れに隠されたりはしましたが、幸いにも親にゲームを禁止されなかったから、今の自分がある」と感じているといい、3児の父となった今、「子どもをゲームっ子に育てています」と笑います。
三浦さんによると、外国人のゲーマーは土日を中心に1日数十人訪れることもあるそうです。2018年12月下旬、記者が店頭で取材した週末はあいにくの雨で客足がいま一つでしたが、愛知県岡崎市に住む日系ブラジル人、ジュリオ・ヨコヤマさん(31)が家族で来店し、取材に答えてくれました。
なんでも、自宅に任天堂のゲーム機「スーパーファミコン」(1990〈平成2〉年発売)を持っており、「ゼルダ」シリーズがお気に入りとのこと。ファミコンの「ディスクシステム」(1986〈昭和61〉年発売)のローンチタイトルだった有名ゲームで、その後も続編が次々と出た人気ゲームです。
ジュリオさんは「古いゲームは、数百円程度で買えて安くて面白いし、ノスタルジックな雰囲気もいい。今のゲームより楽しいと思う」。母国ブラジルでは、ゲーム会社セガが1988(昭和63)年に発売した「メガドライブ」が大変な人気といい、これもまだ持っているそうです。
名古屋にある在名古屋カナダ領事館のトップ外交官、シェニエ・ラサール領事兼通商代表(50)は、オタワ大学の卒業アルバムで、「勉強をせず、ニンテンドーに秀でた」と紹介されました。
当時、自分の部屋でやっていたのは、北米版ファミコン「NES(Nintendo Entertainment System)」のアメフトゲーム。
「なぜか夢中になってやりました」
1994~95年、名古屋の南山大学に留学し、その後名古屋大法学部にも学びました。そんな学生時代によく通った街が大須。漫画喫茶でゲームもよくしていたとか。
当時は「お金がなくて」、大須にあったPCショップで自分でパーツを買い、自分でパソコンを組み立てて、PCゲームもよくやったそう。「あの当時、僕はオタクだった」と懐かしみます。
貿易会社などでの勤務を経て、カナダ外務省に入省後、米ヒューストンに駐在した際には、ニューヨークの街を作るボードゲームを自作し、米国で賞も受賞しています。自他ともに認める「ゲーマー」です。
そんなラサールさんの今の仕事は、カナダの会社が日本で商売をする際に手助けするのが主な任務の外交官。「正直、ゲームは今の仕事にほとんど関係ないですね」と話します。
でも、TVゲームをしたことが、3人の子どもたちと遊ぶために自作を続けるボードゲームの「創造性」に役立っていると感じるそう。
「『クソゲー』はゲーム文化の一つです」と断言します。
そうそう、中古ゲーム店の三浦さんがなぜ「ただのクソゲーなんて存在しない」と言い切るのかも、聞いてみました。
「ゲームにはそれを作ってきた当時の人の背景が見えます。私は、どんなにつまらなくても、『こんなクソゲーやれるか』とプレーするのをやめたことがない。困ったことなんですけど、やり始めたらクリアするまでやりきってしまう。ゲームセンターでもワンコイン(100円)で全部クリアするまでやり続けます」
ゲームを愛する心、そのあふれる思いから出たクソゲー愛。尊重したいです。
1/13枚