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連載

#19 平成B面史

マヂラブ野田さんが語るインターネット「炎上させる側だったかも」

今は「本当にいい時代ですよ」

インターネットについて語る「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさん=丹治翔撮影
インターネットについて語る「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさん=丹治翔撮影

目次

奇抜な発想とムキムキの筋肉で人気のお笑い芸人、「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさん。2017年の「M-1グランプリ」で上沼恵美子さんに酷評されるという絡みで注目を集めましたが、オリジナルゲームをつくるほどプログラミングが得意という意外な一面もあります。中学生の頃、インターネットの掲示版にこもっていたという野田さんは、お笑いをやっていなかったら「炎上を焚きつける一人」になっていたと言います。同時に、ネットから様々な才能生まれている現代を「本当にいい時代になった」語ります。野田さんが見てきたネットを取り巻く変化と、正しい向き合い方について聞きました。

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あめぞうに入り浸った中学生「本当にいい時代ですよ」

――野田さんは15年以上「魔法のiらんど」のホームページを愛用し、日記は2015年に限定販売で書籍化もされました。パソコンが得意で先輩のホームページも作っていたという野田さんが、インターネットを使うようになったのはいつ頃でしたか?

いつぐらいだろう……20年くらい前、中学生の時に「あめぞう」っていう掲示板サイトがあって、そこにずっとこもっていましたね。

これ、誰にも言ってないんですけど、小説板にいたんですよ。そこで書いた小説がちょっと話題になったんです……ハンドルネームなんて絶対言わないですよ。死んでも言わないです(笑)

一番多感な年頃のド痛い時期ではあるんですけど、そこで文章を書くことも学びました。当時はあめぞうをやっていたり、オンラインゲームをやったりとネット中毒でした。
丹治翔撮影
丹治翔撮影
――今でこそインターネットは当たり前のものになっていますが、当時は周りに同じような経験をしている人はいなかったのではないでしょうか。

誰もいなかったです。逆に今が新鮮というか、ネットに詳しい人、オタクと言われる人が多くなってきて、時代がちょっとずつ自分に寄ってきている感じがしますね。

昔は「ネットとかゲームをやるやつなんて絶対面白くない」っていう芸人はいたんで、僕の中ではやっと時代が変わってくれたなあって感じますね。
――その変化はいつ頃から感じていますか?

社会全体で言えば、「電車男」くらいから許容されてきて、身近なものになってきた感じでしたね。

芸人の世界だったら、オタク芸みたいなのをやる人が多くなってきた時期があったんですよ。今だったらアニメオタクとかゲームオタクもいますし。よしもとにプロゲーマーもいる時代ですから、社会全体がじわじわと寄っていたんですよね。それを嫌がる先輩もいたんですけど、僕はありがたくて仕方なかったんです。
マヂカルラブリーの野田クリスタルさん(左)と村上さん=2019年
マヂカルラブリーの野田クリスタルさん(左)と村上さん=2019年 出典: 朝日新聞
――野田さんが日記を始めた頃は、眞鍋かをりさんや中川翔子さんなど芸能人本人が情報を発信していく黎明期でもありました。野田さんはインターネットで発信することにどんな思いがありましたか。

これまで人付き合いなしに、上に上がれる方法が少なすぎたんですよ。先輩とか関係者と一緒にたくさん飲みに行って、仲良くなると仕事の場でもそれによって成り立つとかあったと思うんですよ。

僕そういうのめちゃくちゃ不得意だったから、お笑いも「実力だけじゃないな」って思っちゃっていて。「結局仲いいだけじゃん」とか思っちゃうんですよ。

でも今はYouTubeとかインスタで有名になれるから、それがいらなくなってきている。だからどんどん生意気な後輩が出てくると思うんですけど、それでいいと思うんですよ僕は。

「なんでこの人こんな有名なの?」みたいな人も出てきている。でも、今までそういう芸人がいたはずなのに、つぶされてきた訳ですから。本当にいい時代ですよ。

いろんな戦い方が生まれてきて、僕にとってもめちゃくちゃやりやすいですね。

ネットは「便利に使えなくなったらおしまい」

――一方で、ネットの「ゆるさ」みたいなものはなくなってきた気がします。情報が残っているがために、過去のことで炎上、叩かれるという場面も増えてきました。

僕お笑いやってなかったら、クソみたいなネットの使い方してると思うんですよ。炎上してる人を攻撃している人のうちの一人みたいな。それが今、お笑い芸人として矢面に立つ立場になっているから抑えられているんだと思います。

だから叩く人間の気持ちも理解しているんです。不倫したとか、そういう人が「ただで済まないでほしい」っていう期待感ってあるじゃないですか。相手のことなんぞ、自分が外野だろうが知ったこっちゃないんです。
丹治翔撮影
丹治翔撮影
――野田さんを「炎上を焚きつける一人」にしなかったのは何だったと思いますか。

いろんな人と関わったからですかね。ネットだけじゃわからなかったことが、わかったんです。

やっぱり仕事上、炎上させられている人を生で見ることが多いんですよね。そう思うと、攻撃してる人って何もわかってないなって思っちゃうんですよ。本人はこういう思想を持ってこう言っただけなのに、めちゃくちゃなことを言われて傷ついてっていうのを何度も見てきているので。
――野田さんが考える「ネットとの付き合い方」とはどんなものでしょうか。

僕の中でネットは、「便利に使えなくなったらおしまい」っていうのがあって。たまに「人生」が入っちゃう人いるじゃないですか。気持ちを入れたり、語っちゃったりとか、それはおしまいです。それはネットの正しい使い方じゃないです。

ネットはツールなんです。「ggrks(ググれカス)」っていう言葉があったと思うんですけど、「ggrks」って言われて、いらだって反論してしまったら負けなんです。逆に「ggrks」って言ってきた人に情報を出させたら勝ちだと思っています。それくらい距離感をもってやっていくのがベストだと思いますね。

<野田クリスタル>
1986年生まれ、神奈川県横浜市出身。本名は野田光。プログラミングが得意で、オリジナルゲームも開発。相方の村上さんとともに、2007年にお笑いコンビ「マヂカルラブリー」を結成。2017年のM-1グランプリの決勝では、審査員の上沼恵美子さんに酷評されたことが話題に。しかし2019年のM-1敗者復活戦出場時に、一連の出来事を上沼さんが忘れていることが発覚。このことについては、「だから大物なんだろうな、小物は一個一個のことを忘れないですからね」と話す。

 

withnewsでは、平成を象徴しているのに普段は忘れられがちなアイテムや出来事を「平成B面史」と名付け、取材してきました。みなさんの中で「そういえば……」とひらめいたものをハッシュタグ「#平成B面」をつけてツイートしてくれませんか? 編集部が保存に向けた取材にかかります。

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