連載
#100 #withyou ~きみとともに~
2人の息子は発達障害…だけど、こんなに違う! 母が描く成功と失敗
一つのことに集中したり、落ち着きがなかったり、困ったらカエルのように丸まったポーズをしたり……。四国地方に住む30代の主婦ちちゃこさんは、発達障害と診断された2人の息子の様子をマンガで紹介しています。息子たちの姿を通して、「いろんなパターンがあることを知ってほしい」と話します。
主人公は、小学校1年生の長男のぼる君(7)と、幼稚園年少さんのひとし君(4・いずれも仮名)です。2018年の春、のぼる君は自閉症スペクトラム軽・中度とADHD(注意欠陥・多動性障害)、ひとし君は自閉症スペクトラム中度と診断されました。2人は月1回病院に通っています。
のぼる君は、一つのことに集中しやすいけど忘れっぽく、衝動的で多動傾向があります。
ひとし君は、集団の中では刺激が強すぎて落ち着きがなくなってしまうそうです。幼稚園に通いながら障害がある子どものための療育施設にも通い、支援を受けています。
のぼる君の成長で違和感を持ったのは2歳後半のとき。トイレの壁に貼っていたひらがな表を見て、自然と全て覚えていたといいます。「すごい!天才!」と思っていましたが、単語や文が続けて読めませんでした。
「例えば『そら』だったら、『そ』と『ら』の二文字の認識しかなく、連続で読むということが理解できていないようでした」。文が読めるようになったのは、それから1年後くらいだったそうです。
また、同世代の子どもに比べ、落ち着きがないとも思いました。
ひとし君はのぼる君と反対で、話さない子どもでした。自分から何かをすることもなく、ちちゃこさんの手をつかんで何かをさせようとする発達障害の子に見られる「クレーン現象」があったそうです。注意されたり困ったりすると、体を丸めてカエルのようなポーズをすることもありました。ひとし君の考えていることがわからず、混乱したそうです。
家族の間でも、初めはなかなか理解されませんでした。ひとし君はちゃんとお手伝いをする「良い子」です。ただ、集団に入るとパニックになってしまうという自閉症スペクトラムの特性は旦那さんや祖父母には伝わらず、幼稚園でうまくいかないのは「甘えているだけ」「ふざけているだけ」と捉えられたといいます。
ちちゃこさんも初めは甘えではないかと思っていましたが、療育施設のスタッフや保育士さんに相談するうちに理解できるようになりました。
もともと漫画家だったこともあり、ちちゃこさんは昨年、子どもたちのマンガを描き始めました。情報収集や発達障害のいろんなパターンを知ってほしいと、今年に入りツイッターで発信し始めました。
「みんな、有名なマンガでしか自閉症について知らないのではないかと思いました。もっと、いろんなマンガがあっていいと思います。うちの子はこういうパターン、別の子はこういうパターンと、いろいろ知っていただく機会があればいいなと思い、始めました」
「『光とともに…』や『はだしの天使』など、自閉症を描いた名著はあります。でも、その主人公と(のぼる君、ひとし君は)全くタイプが違うんです。ツイッターでうちの子はこんな感じなんですと発信して、経験者のママさんたちと交流できたらと思いました」
実際、ツイッターでは母親同士が交流し、たくさんの学びがあるそうです。
「先輩ママさんたちをフォローして、勉強させていただきました。ひとしは視覚過敏で、強い日差しが苦手です。サングラスを買おうと思ってメガネ店に行ったら、1万円以上もしました。そのことをつぶやいたら、『100均のサングラスで十分ですよ』と教えてくれました」
マンガは同じ境遇のお母さんたちに向けて発信していますが、同時にその家族にも読んでもらいたいと考えています。ツイッターでの交流を通して「お母さん1人だけが子育てを頑張っている」と感じていたからです。
「旦那さんのフォローがない、おじいちゃんおばあちゃんたちの理解がないという声も聞きます。障害がある子をまず家族が受け入れてから、次に社会に理解を求める。その結果、発達障害が受け入れられる社会になればと思います」
ちちゃこさんの旦那さんは、最初は理解がなかったものの、最近では発達障害に関するニュースの記事を読んだり、子どもの発達問題を抱えている同僚の話を聞いたりして、受け入れてくれるようになりました。
「旦那が子どもたちのことを受け入れてくれたおかげで、家族の絆がすごく強くなりました。家族の理解はこんなに重要だったと、改めて思いました」
療育と葛藤(1/5)
— ちちゃこ (@chichako07) 2018年8月21日
「うちの子はかわいい小さな種」の続きです。
長いし、重いです。
だんだんこれを、旦那に読んでほしいと思うようになりました。
不定期で続きをあげていきます。#発達障害 #自閉症 #育児漫画 #絵日記 #コミックエッセイ pic.twitter.com/NWlYmQMCPN
ツイッターでは子どもたちの発達障害について発信しているちちゃこさんですが、現実ではママ友との関係に悩んだこともありました。
「ママ友に『発達障害』と打ち明けると、みんなサーッと引くんです。どう対応していいかわからないんだと思います。どんな言葉をかけてほしいか、自分でもわかりません」
のぼる君やひとし君のことを仲良くなったママ友に説明した時に、想定していなかった反応を示されて、ショックを受けたこともあります。
「どこまでカミングアウトしていいかがわかりません。『障害』という言葉が壁になっている気がします。発達障害と診断されたと言ったら、『そんな大変なことになったの?』と言われました。世界が遮断される感じになります。関わりのない人にとっては知らない世界なので、かわいそうと思われているのかもしれません。相手を困らせてしまうので、いまはあまり言わないようにしています。どうしたらいいのか……難しい問題です」
ちちゃこさんは迷いながら子育てを続ける中で、子どもたちの自己肯定感を上げることが大事だと実感しました。褒められることや認められることが自信につながり、行動にも変化が出るからです。
「のぼるは習い事をしていないので(発表会などで)目立つ機会がありません。でも、『クッション言葉』を覚えたマンガをツイッターに載せたら『いいね』をたくさんもらえて、それを見せたら自己肯定感が上がったようでした。今後も基本的には子どもを褒めることや成功体験を描いていきたいです。それで自信を持ってくれたらと思います」
最近ののぼるの成長
— ちちゃこ (@chichako07) 2018年7月23日
最近の成長が著しいので、漫画にしてみました( ;∀;)
この一言があるだけでかなりストレスが減りました。#育児っていいな #育児漫画 #エッセイ#自閉症 #ADHD pic.twitter.com/tHgTijeD57
ひとし君も、療育施設で褒められることが増え、カエルのポーズをして閉じこもることがほとんどなくなったそうです。
自信をつけるとともに、2人の得意なことを伸ばしてあげたいというちちゃこさん。
「好きという気持ちが個性や特技につながるので、その気持ちをたくさん持ってもらいたいと思っています。2人が好きなことを職業にできるように、のびのびと育てたいです」
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