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渡辺直美、アメリカで確信した「お笑い界の隙間」 控える北米ツアー
2月に開催した東京ドーム公演では、ギネス世界記録を樹立しました
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2月に開催した東京ドーム公演では、ギネス世界記録を樹立しました
今月11日開催の東京ドーム公演で、4万4356枚のチケットを即日完売し「女性ソロコメディアンによるコメディーショーでのチケット最多(販売)枚数」のギネス世界記録を樹立した渡辺直美(以下、渡辺)。今春からは、北米ツアー『FROM TOKYO』を開始するという。常に前進し続ける彼女の現在地と特有の魅力について考える。(ライター・鈴木旭)
コメディーショー『渡辺直美(20)in東京ドーム』は、歌あり踊りあり笑いありのバラエティーに富んだ白熱のステージだった。
登場間もなく渡辺が「東京ドーム、ブチ上がっていくぞー!」と叫ぶと、生バンドの演奏に合わせてダンサーとともにビヨンセの「Crazy in Love」のパフォーマンスが始まる。途中、真っ白なフリンジの衣装に早着替えし、花道を走ってセンターステージに向かうと艶めかしい動きを見せて観客を魅了。圧巻のオープニングで会場を盛り上げた。
幕間映像が終わると、今度は制服風の衣装とストレートヘアにチェンジ。息を切らせながら「さっきのビヨンセで体力全部使いました」と漏らして笑わせ、そのままの流れでプライベート写真をスクリーンに映しつつ誕生から18歳までの半生を語り始める。
母親が台湾人で父親が日本人。片言の日本語を話す過保護な母に育てられ、世間知らずな少女になったこと。夏休みに母親の故郷・台湾に行くと、日本語チャンネルで『志村けんのだいじょうぶだぁ』(フジテレビ系)が3時間おきに流れていたこと。内弁慶だが、仲の良い友だちにものまねを見せて笑わせていたこと――。
詳しくは後述するが、それはまるでアルバム写真をめくって語られているようなリラックスした空間だった。エピソードによっては、ライブを観にきた小学校時代の同級生や教師、中学時代のバレー部の後輩がスクリーンに映し出される。巨大な会場が学生時代の話題でひとつになる演出は、2年前の『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム』を思わせた。
吉本興業のお笑い養成所・NSC東京校に入学してからは、『ミュージカル渡辺直美物語』として進行。同期のジャングルポケット、1期上の先輩であるパンサー・向井慧、チョコレートプラネット、シソンヌが本人役、しずる・ 池田一真があらゆる吉本社員役を好演。コンビ時代の相方役を朝日奈央が務めたほか、『ピカルの定理』(フジテレビ系)で渡辺と共演したハライチ、モンスターエンジン、平成ノブシコブシ、ピース・又吉直樹らも本人役で登場した。
2022年に渡辺が主演を務めたミュージカル『ヘアスプレー』パートでは、エリアンナ、三浦宏規、平間壮一ら共演者が再結集。花道とメインステージをいっぱいに使って「You Can't Stop the Beat」を熱唱した。その後、観客とコミュニケーションを取りながらトロッコで一周し、秘かに「Peach Nap」としてアーティストデビューしていたことを明かして笑わせる。
続けてラッパー・千葉雄喜とのコラボ楽曲を歌い上げると、最後はレディー・ガガの「Judas」のパフォーマンスを茶目っ気たっぷりに披露。ほぼ出ずっぱりで3時間超のステージを駆け抜けた。
渡辺は茨城県石岡市出身。幼少期から元気でお調子者。中学に入ってもものまねで仲間を笑わせ、一度ヤンキーの後輩のものまねをしたところ、本人にバレて呼び出されたこともあったという。
母親に愛された一方で、苦労も少なくなかった。渡辺が誕生して間もなく両親が離婚。外国人で持病もあった母親はなかなか仕事にありつけず、渡辺が5、6歳の頃はパチンコで生計を立てるような不安定な生活が続いたという。
8歳のときに母親が再婚(後に離婚)するも、父親は渡辺に興味を示さなかった。中学に入ると、母親が居酒屋を始め帰宅が遅くなる。渡辺は自分ひとりで夕飯を作り洗濯する日々。母親と心の距離も開いた。
学校には多くの友人がいたが、自宅では「テレビ」だけが家族。お笑い番組が支えだった中で、「同じように苦しんでたりとか悩んでる子どもたちとか、つらい思いしてる人たちを笑わせるんだ」と固く決意する。<2024年12月1日放送の『突然ですが占ってもいいですか?』(フジテレビ系)より>
また、CSお笑い専門チャンネル『ヨシモトファンダンゴTV』を見て劇場でネタを披露する芸人がいることを知り、「吉本に入りたい」と具体的な目標を持つようになった。
中学卒業後は、ファミレスでアルバイトを開始。1年後にバイトリーダーになると、年上の同僚もいる中で「いかにして自分らしくチームをまとめるか」を学んだ。そこで3年働いて資金を貯め、母親の反対を押し切って上京。2006年、満を持してNSCに入学した。
当初は、コンビを組んでいた。コントがやりたかったからだ。しかし、「わたもち」「フレッシュライム」と渡り歩くもうまくいかず。そんな矢先、2008年1月放送の『新春大売出し!さんまのまんま』(関西テレビ/フジテレビ系)でビヨンセのものまねを披露するとピン芸人として注目を浴びる。
同年3月には『笑っていいとも!』(同系)の「いいとも少女隊」に抜擢され、バラエティーや劇場の仕事が次々と舞い込んだ。先輩やテレビ関係者とのつながりも広がっていく中、2010年に夢だったコント番組『ピカルの定理』(同系)の出演が決まる。翌年からは『笑っていいとも!』の月曜レギュラーとなるなど、一気に人気芸人の道を歩むことになった。
しかし、2013年に『ピカルの定理』、2014年に『笑っていいとも!』が相次いで終了。未来のことを考え、「自分ちょっと武器なさ過ぎるな」と感じた渡辺は3カ月のアメリカ・ニューヨーク留学を決意する。渡米した渡辺は大いに刺激を受け、ここで後のグローバルな活動のベースを築いた。
2014年のアメリカ留学を経て、個性的でお洒落なインスタグラムの投稿写真が世界的な注目を浴びるようになった渡辺。そのことで、ファッションアイコン、インフルエンサーとしてのイメージが増していく。
アパレルブランド「PUNYUS」をプロデュースする一方で、芸歴10周年となる2016年にニューヨーク、ロサンゼルス、台北を周る初のワールドツアー「Naomi Watanabe WORLD TOUR」を敢行。ドラマ、CM、バラエティーと国内外の仕事が舞い込むようになった。
2019年には、千鳥の大悟から「今お前がやってる日本の仕事はワシらでもできる。でも、アメリカでやってる仕事はお前にしかできない」と背中を押され、アメリカ進出を意識するように。「アメリカのお笑い界に私がいける隙間があるかどうか」を確認すべく、たびたびアメリカを訪れる生活を送る中で「イケるぞ」と確信。2020年にはニューヨークに自宅を購入した。<2026年2月5日放送の『アメトーーク!』より>
また、同年にYouTubeチャンネルで公開したレディー・ガガ&アリアナ・グランデのMV『Rain on Me』のパロディー動画(渡辺がレディー・ガガ役、ゆりやんレトリィバァがアリアナ・グランデ役)が1週間で1000万再生を突破し、レディー・ガガ本人がSNS上で「Love this!!!」とコメントするなど大反響を呼んだ。
最高の形で2021年から活動拠点をニューヨークに移すも、当然のことながら日本とは異なるビジネス形態や環境にアジャストしていく必要があった。日本の芸能事務所が請け負っている役割は、エージェント(営業担当)とマネージメント(管理担当)に区分されており、渡辺に入った出演料から各々に報酬を支払う。
お笑いの主流はスタンダップコメディーやインプロ(即興演劇)。現地の新人は自身が出演料を払って舞台に立つところから始まり、大小のフェスに参加したり、ヘッドライナー(ショーのメインのコメディアン)の前座を務めたりしながら実績を作ってコメディークラブのレギュラーを獲得。その後、有名なフェスに出演し、コント番組の脚本を書くなどして名前を売っていく。
ヘッドライナーとしてツアーを行えるようになってからは、テレビドラマやコント番組に出演して認知度を上げ、Netflixとスタンダップコメディー特番の契約をする、テレビ司会者・プロデューサーを務める、もしくは映画俳優・監督としてキャリアを積む、といったルートをたどるのが定石となっている。
ただ2000年代中盤以降は、日本と同じようにネットから頭角を現す新人が登場し、巨大メディアや有名クラブの出演に頼らない発信・収益化も可能となったため、セオリー自体が揺れているのは共通するところかもしれない。そんな中、渡辺は前述のインフルエンサーとしての仕事やパロディー動画での知名度を生かしつつ、着実に歩みを進めている。
2022年にアメリカのファンと全編英語でトークするPodcastの冠番組『Naomi Takes America』をスタートさせ、2023年にアメリカ7都市を回るトークライブツアーを敢行後、翌2024年の単独スタンダップライブ『Stand Up with Naomi Watanabe』を開催。現地に馴染む、スタンダップのスタイルへとシフトしていった。
2024年12月にロサンゼルスに拠点を移したゆりやんによると、アメリカでは「『インスタグラムのフォロワーこんだけいます』とか『日本ではこんだけ活動してました』って言っても、『だから?』(筆者注:と評価されない)」という。<2026年2月7日放送の『アナザースカイ』(日本テレビ系)より>
このことからも、アメリカにおける渡辺の存在感がいかに大きいかがわかる。今はモデルやアニメ作品の声優といった幅広い仕事をこなし、徐々にコメディアンとしてファンを拡大させていくつもりなのだろう。
東京ドームライブのクレジットを見ると、そうそうたる顔ぶれに驚く。東京03とゆかりの深い作家・オークラが演出、イラストレーターのニイルセンがオープニングVTR、サイトウ”JxJx”ジュンら「カクバリズム」所属のミュージシャンたちがバンド演奏を担当。数々のバラエティーやライブ公演を手掛けてきた並木慶が総合演出を務めている。
また、多くのコントライブの楽曲を制作する音楽家・金光佑実や、渡辺とNSCの同期でシソンヌのコントライブにもたずさわる作家・今井太郎らの名前も見られる。キービジュアルは東京03の公演でお馴染みのアートディレクター・吉田ユニ。つまり、東京のライブシーンを作ってきた面々が集結したライブでもあるのだ。
約3年前、筆者は令和版『風雲!たけし城』(Amazon Prime Video)の取材で渡辺本人と顔を合わせたことがある。そこでは、どんな質問にも友人と接するような親しみのある語りを見せ、時に豪快に笑って現場を明るくしていた。そんなポジティブなスタンスが、国内外のクリエイターを引き寄せているような気がしてならない。
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