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北朝鮮が公開した「意外な施設」グッチやシャネル「元帥様がくれた」
北朝鮮は建国70周年記念行事の取材にあわせて、各国のメディアを平壌市内の工場や農場にツアーを行いました。その一つの化粧品工場には、なぜか資生堂やグッチ、シャネルなど外国の商品が並んでいます。そこで行われていたこととは……。(朝日新聞国際報道部・峯村健司)
「平壌化粧品工場」。金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長氏が夫人と一緒に視察しており、その時の写真が玄関に大きく貼られています。
そこで使い捨ての衛生服を着せられ、ガラス張りの工場内を見学しました。ほとんどが自動化されており、せっけんから化粧品など300種類をつくっているそうです。
日本のデパートのような巨大なショーケースにはファンデーションや口紅が並んでいます。
ふとその脇に日本語が書いてある製品が目に入りました。棚には資生堂のほか、グッチやシャネルなど外国ブランド製品が数十点置いてあるのです。
「世界水準を目指すようにと(金正恩)元帥様が視察の際に見本としてくださったものです」
平壌化粧品工場の康民心・研究所長(45)が解説してくれました。
サンプルのそばには説明板が掲げられています。平壌化粧品工場の製品と外国ブランドの成分比較表が細かく書かれていました。
ここの製品が「世界水準と比べても負けていない」ことを強調していました。康所長は「ロシアやイラン、中国などから注文がきています」と胸を張りました。
北朝鮮が「世界水準」「先端技術」にこだわって経済再建を目指していることはわかりました。
ところが「虫の目」で見ると違った姿が見えてきます。この工場のトイレも用を足した後、おけで水をすくって流すタイプでした。工場内の機械も古いものが目に付き、足踏みミシンを使っている作業員もいました。
街を走っている車や自転車も年季の入ったものが少なくありません。ちなみに記者団が乗っていたバスの運転席脇に付いていたプレートを見たら1983年の日本製でした。
金正恩氏は、これまでの核開発と経済改革を同時に進める「並進路線」から、経済力強化に力を入れる新しい路線に変えたそうです。確かに市内の工場や農場でも「人民尊重」「団結して生産力を上げよう」などと書かれたスローガンをよく見ました。
先端技術だけではなく、インフラ整備を同じく進めていくことが経済建設には必要です。発展の格差を埋め、本格的な開発を進めようと思ったら、各国の協力も欠かせないでしょう。
そのためには国際社会と約束した核と弾道ミサイルの放棄をしっかりと実現できるかどうかにかかっているのです。
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