話題
北朝鮮で「VRゴーグル」に出会うとは…秘密都市で見たもう一つの顔
日本でも映画館やイベントなどでVR(仮想現実)の技術が使われ始めています。先端技術とはかけ離れた木炭自動車がいまだに街中を走っている北朝鮮。ところが、私が北朝鮮当局者に案内された大学では、学生の教育実習にVRのほか、人工知能(AI)まで使われていました。専用のゴーグルをつけた女子学生たちが並ぶ姿を見ていると、まるで未来の世界に飛び込んだ錯覚になりました。(朝日新聞国際報道部・峯村健司)
平壌到着の翌朝、記者団は幼稚園や小学校の教師を養成する「平壌教員大学」を訪れました。
真新しいガラス張りの校舎の玄関には、金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記の肖像が掲げられていました。約1500人の教師の卵が学んでいるそうです。
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が「科学化、情報化、現代化が高い水準のモデル校を目指せ」と指示して、改築させたそうです。2018年1月には現地視察もしました。
教室に入り我が目を疑いました。薄暗い室内でVRの専用ゴーグルを着けた女子学生が頭をゆっくりと傾けてながら授業を受けています。VRを使った授業のやり方を学んでいるそうです。
ゴーグルと連動したノートパソコンをうまく操りながら、教師の質問に答えていました。
女性教師の鄭太実さんはその理由を説明します。
「AI(人工知能)技術で教育実習の効率がとても上がりました。(金正恩)元帥様から教育に全力を注入すれば祖国の未来は明るくなると教えていただいたおかげです」
VRを使った生物や地理、工作の授業の見学が続いた。どれも高い技術力で、洗練されている。まるで未来の世界を見ているようだ。今後、地方の学校にも広めていくそうだ。
いまだにチョークと黒板が残る日本の学校も学ぶところがあるかもしれない。ただ一方で、「ここまで先端技術を使う必要があるのだろうか」という疑問も残った。
記者団一行からちょっと外れてトイレに行ってみた。
小さな便器が一つだけで、風呂かと見まがうような大きな水槽が置いています。下水が整っていないようで、用を足した後、おけで水をすくって流さなければならないそうです。
AIやVRとおけ流しトイレ。このギャップにはただ驚くばかりでした。
1/19枚