連載
#13 「見た目問題」どう向き合う?
「アルビノになりたい」が炎上 ユーチューバーよききと当事者の思い
連載
#13 「見た目問題」どう向き合う?
「アルビノになりたい!」。そんな憧れから、髪の毛を真っ白にして周りにアピールしたら不謹慎だと思いますか? 人気ユーチューバーのよききさん(22)が髪を白くする動画を配信し、賛否の声があがりました。どうしてこんな動画をつくったのでしょうか。多くの批判が寄せられ、どう思ったのでしょうか。アルビノ・エンターテイナーの粕谷(かすや)幸司さん(35)と語ってもらいました。
おはよききです!
本物のよききだ!動画見ました!
本物のアルビノの方にお会いしたのは初めてです。
今までの動画の中で、一番賛否が分かれました。「好きな俳優みたいになりたい」というのと同じ気持ちで動画をつくったんですが……。
動画を見たとき、「スゲー、根性あるな」って思いました!
オレも、動画あげた後に(根性あるなって)気づきましたね。
そこまでやったら、髪や頭皮がボロボロになっちゃうよって。
そっちの話か!?
ハゲちゃいますよ! 楽しいコンテンツをつくるために体張ってスゲーなって感銘しました。
痛かったです。
高校生の時、一重に強いコンプレックスがありました。「眠そう」とか言われて……。二重になりたいなぁって。それでメイクに興味を持ちました。白さにも憧れがあって。
よききさんのアルビノに憧れる思い、僕はめっちゃ感じましたよ。
よききさんが動画に込めた思いをくまずに、「傷つく人がいるから不謹慎だ」と批判するのは違うのでは。「かわいそうな存在」って思われること自体が、当事者にとって痛みだと思います。
僕の身内に車いすの人がいます。かわいそうではなくて、普通にみんなと同じように接するのが一番なんじゃないかなって。
影響力のあるユーチューバーやインスタグラマーの方々に、「きょう車いす体験してきた」って企画をどんどんやって、感想を述べてほしいです。体験をすると、普通の人たちがどれだけ障害者と距離を置いて生活しているのかわかりますから。
よききさんがアルビノをネタにして炎上したから、あとに続く人たちも炎上を心配して、アルビノにふれるのはやめようとなってしまったら残念です。
そこを崩すためにもう一発いっときたいですね。変えるためには、一歩踏み出して、先頭で撃たれまくる人が必要じゃないですか。とんがりたいですね。
アルビノの方の書き込みもあり、うれしいです。
僕もこの方と同じ感想です。
もちろん、よききさんの動画を不快に感じるアルビノの方もいると思います。僕の「アルビノでも楽しく生きています」というメッセージをつらいという人もいるかもしれない。
僕は一重まぶたで「眠そうだね」「目細いね」って言われ続けたから、一重が嫌でした。でも、もし「一重っていいね」って周りから言われていたら、コンプレックスにならなかったかも。
僕は、母親に「みんなと違って白くて、かわいいよ、きれいだよ」って育てられました。「みんなと違う姿で生んじゃってごめんね」って母親に言われていたら、みんなと違うことは悪いことなんだって僕も思っちゃったと思います。
人種差別的な意味なんてまったくないんですけど……。そう言われると、「いじわる」って返すしかありません……。
レベルの高い揚げ足取りですね。アルビノは人種の問題ではないので、別の話ですし。でも肌の色だけに着目すれば人種の話になりうるわけで。
批判は怖くないです。まったく批判がないコンテンツは面白くないと思います。
クリームを塗ったり、長袖を着たりして、日焼けに気をつければ大丈夫です。洗濯物を干すくらいの短時間なら、僕は直射日光に当たっています。「アルビノ=短命」ではないです。
いろんな意見があると思いますが、自分は純度100%、本気で憧れています。すごい美しいと思います。生まれ変わったら……
それ以上言うと、炎上しますよ。
すごい美しいです。
僕は、生まれ変わったら、アルビノ美少女になって、モテたいです。
じゃあ、粕谷さん女装しますか?
よききさんメイクならやるかもしれないですよ!
粕谷さんと、ちらっと目が合うんですけど、めちゃくちゃ目の色がかっこいいんですよ。青くて。むっちゃきれいですよ。これ言ったら、また問題ですかね……。
あくまで、僕個人への感想だからいいですよ。僕はきれいって言われるのもうれしいですもん。不謹慎だから言わないでおこうとなったら、僕はつらいです。
アルビノについて知らなかったことを、つらい部分も含めて、ご本人から話を聞けたのは、何よりの経験になりました。 私が、よききさんの「アルビノになりたい」動画を見た時、「あ、これは炎上するな」というのが正直な感想でした。
特徴的な外見を持つ人がジロジロ見られ、いじめや就職差別にあう「見た目問題」を取材し続けています。8歳の長男は生まれつき右顔の神経が少ない当事者です。アルビノも当事者と位置づけられています。
よききさんも謝罪したように、アルビノの方々への配慮が足りなかったと思います。アルビノであることに生きづらさを感じている人の中には、肯定的な側面ばかり強調されることを不快に感じる人もいるでしょう。
「社会のマイナスの評価があるから、本人も苦しくて沈んじゃっているのでは」というよききさんの意見は、なるほどと思いました。変わるべきは見た目問題の当事者ではなく、彼ら・彼女らに向ける周りの視線だと、私も考えています。社会の視線が変われば、当事者の苦しみも和らぐかもしれません。
アルビノであることを前向きに受け止める粕谷さんの話からは、「アルビノ=苦労を体験した人々」と単純にとらえること自体が、偏見だと気づかされます。
よききさんには今回の経験を生かし、アルビノに対する社会の視線を変えるような、コンテンツに挑戦してもらいたいと思います。
*紹介したよききさんの動画への書き込みは、編集部の判断で誤字脱字を直したり、文章を短くしたり、表現を整えたりしています。
1/12枚