連載
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#13 「見た目問題」どう向き合う?
「アルビノになりたい」が炎上 ユーチューバーよききと当事者の思い

「アルビノになりたい!」。そんな憧れから、髪の毛を真っ白にして周りにアピールしたら不謹慎だと思いますか? 人気ユーチューバーのよききさん(22)が髪を白くする動画を配信し、賛否の声があがりました。どうしてこんな動画をつくったのでしょうか。多くの批判が寄せられ、どう思ったのでしょうか。アルビノ・エンターテイナーの粕谷(かすや)幸司さん(35)と語ってもらいました。
生まれつきメラニン色素をつくれない、またはわずかしかつくれない遺伝子疾患。皮膚や体毛が白い。紫外線に弱く、視覚障害をもっている人が多い。
6月22日に配信した動画で、よききさんは「アルビノになりたい」「白くなりたい」と、美容院に行き、髪の毛を真っ白にした。翌日の動画では、説明・配慮不足で不快な思いをさせてしまったと謝罪する一方、「アルビノの方からしたら、かわいそうと常に心配されるのは逆に嫌な気持ちになるんじゃないかな」と語った。





表現が問題?賛否分かれる

動画への書き込みで、「(病気である)アルビノになりたい」って表現はよくないと指摘されました。「アルビノのような白さになりたい」って表現ならよかったのではないかとも言われ、「確かにその通りだな」と思い、謝りました。







コンプレックスの裏返し

そんな時、ネットでアルビノモデルの女性の記事を見て。本当にきれいだなーって。

「かわいそうな存在」なのか

僕は「アルビノを悲劇にしない」ってキャッチフレーズで活動してきました。「アルビノ=不幸」という思い込みを壊したいと。僕はアルビノに生まれてよかったと思っていますよ。きれいだと思ったら、きれいだって言ってほしいです。



変えるために一歩踏み出す





不快に思う当事者も

でも、その人が気づかないだけで、その人のことを「美しい」「好きだ」って思ってくれている人がいるかもしれない。そんな風に思ってもらえたらいいなと思います。

アルビノの方も、白斑の方も、社会のマイナスの評価があるから、本人も苦しくて沈んじゃっているのでは? アルビノの人には大変なこともあるけど、よい部分もあるってことを、知ってもらいたいなって思います。


肌の色の話題は人種差別?


発信者側の意図とは別に、受け止める側がどう受け取るか、解釈するか。たくさんの視聴者がいる中で、難しい問題ですね。

批判は成長の種

ユーチューバーを始めて1年半ちょっとですが、いろんな意見をもらって、自分も成長できました。今回も、「アルビノになりたい」って表現がよくないとの指摘はとても参考になりました。愛のあるアドバイスや意見はありがたいです。
アルビノへの理解が不十分な人も


純度100%、本気の憧れ











【取材を終えて】社会の視線を変えるコンテンツに期待
私が、よききさんの「アルビノになりたい」動画を見た時、「あ、これは炎上するな」というのが正直な感想でした。
特徴的な外見を持つ人がジロジロ見られ、いじめや就職差別にあう「見た目問題」を取材し続けています。8歳の長男は生まれつき右顔の神経が少ない当事者です。アルビノも当事者と位置づけられています。
よききさんも謝罪したように、アルビノの方々への配慮が足りなかったと思います。アルビノであることに生きづらさを感じている人の中には、肯定的な側面ばかり強調されることを不快に感じる人もいるでしょう。
「社会のマイナスの評価があるから、本人も苦しくて沈んじゃっているのでは」というよききさんの意見は、なるほどと思いました。変わるべきは見た目問題の当事者ではなく、彼ら・彼女らに向ける周りの視線だと、私も考えています。社会の視線が変われば、当事者の苦しみも和らぐかもしれません。
アルビノであることを前向きに受け止める粕谷さんの話からは、「アルビノ=苦労を体験した人々」と単純にとらえること自体が、偏見だと気づかされます。
よききさんには今回の経験を生かし、アルビノに対する社会の視線を変えるような、コンテンツに挑戦してもらいたいと思います。
*紹介したよききさんの動画への書き込みは、編集部の判断で誤字脱字を直したり、文章を短くしたり、表現を整えたりしています。