連載
「不登校になれたから、生き続けられた」新聞で経験伝える女性の思い
不登校や引きこもりの現状を伝える「不登校新聞」が、5月に創刊20年を迎えました。編集には、10~40代の不登校経験者も「子ども若者編集部」として関わっています。かつてどんなことに悩み、いま発信者として何を感じているのでしょうか。編集部の一人に話を聞きました。(朝日新聞東京社会部記者・山下知子)
「しんどい思いをしながら学校に通っている子、それから先生に読んでもらいたい」
不登校新聞子ども若者編集部員の水口真衣さん(21)=埼玉県入間市=はそう話します。
高校3年の秋、不登校になりました。「小学生の頃から、いわゆる『いじられキャラ』でした」と水口さん。したくもない物まねをさせられたり、行動をからかわれたり。先生に相談しても「仲良しの証拠」と取り合ってくれませんでした。
「叫びたいぐらい嫌でも、笑ってその役を演じていた」と振り返ります。
高3のある日、LINEで「こういうこと嫌だったんだよね」と、正直な気持ちを長文につづり、「友人」たちに送りました。
しかし、返信は「じゃあ、もうつきあわない」。
友人じゃなかった、学校に行ったら1人になるーー。怖くて家から出られなくなりました。1年近く引きこもりました。
2年前の春、不登校新聞を取り上げたテレビ番組を見ました。同世代が、卒業式に出るか出ないかを議論している姿に「私と同じことで悩んでいる」。母に頼み、1カ月後には、子ども若者編集会議に出ました。
それ以来、毎月の編集会議に参加しています。会議では、自分の中のモヤモヤや、気になることはなるべく話すようにしています。学校について悩む子たちが「私だけじゃない」と思える記事になると考えるからです。
昨年の9月15日号では、「居場所から『離れなきゃ願望』」を取り上げました。つらかった時、水口さんの居場所は、ラジオ番組のネット掲示板。素の自分をさらけ出して何でも語れる一方、なぜか「離れなくては」と思う自分がいました。
そんな思いを編集会議で口にすると、何人かがうなずきました。「みんな、歯を食いしばって耐えることが当たり前の環境で生きてきた。温かく安心できる環境に甘えていいのか、と思ってしまうのかもしれない」
今は、「不登校になれたから、生き続けられた」と思っています。
「きつい思いは消えないけど、不登校を『経験』にして、学校について悩んでいる全ての子に『あなただけじゃない』と伝えたい。先生には、表面だけでなく、奥深くまでちゃんと私たちのことを知ってほしい。私たちの思いを伝えたいです」
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