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赤く咲いたのは30秒だけ… 「鉄の薔薇」が美しい 作者に聞きました
鉄の端材でつくった薔薇がネット上で注目を集めました。
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鉄の端材でつくった薔薇がネット上で注目を集めました。
赤く咲くのは制作中の約30秒だけ――。先日、鉄の端材でつくった薔薇がネット上で注目を集めました。制作工程も含めて公開したのは、東京藝術大学大学院の修士課程で先端芸術表現を専攻しているカシワギヰチ花さんです。鉄の薔薇に込めた思いを聞きました。
先月下旬、ツイッターにこんな文章が投稿されました。
「海外の鍛冶屋さんのインスタとかで見てやってみたかったことをやった 端材でつくって材料費タダ、所要時間2時間半、楽しい」
画像が2枚添付されており、1枚は黒っぽく見える鉄の薔薇。もう1枚は花びらが赤く輝いています。鉄を熱して制作する過程で一時的に赤くなった時に撮影されたようです。
この投稿に対して、「燃えるような赤ですね」「買わせてもらえませんか」といったコメントが寄せられ、リツイートは1万3千、いいねは3万を超えています。
制作して投稿したのは、カシワギヰチ花さん。多摩美術大学を卒業し、現在は東京藝術大学大学院の修士課程で先端芸術表現を専攻しています。
電源コードをモチーフにした大きな立体作品をメインに手がけていて、制作テーマについては、こう話します。
「取るに足らない個人的な物語を鉄で再構成する、といったところでしょうか。鉄を熱して曲げるという行為の集積から立体をつくり、人間(私自身)の思考の変遷をたどる試みをしています」
今回の鉄の薔薇は、どのようにして制作されたのか? 詳しく話を聞きました。
――制作のきっかけは「海外の鍛冶屋さんのインスタとかで見てやってみたかった」とありましたが
私がいくつか見たものは、鍛冶屋さんがお仕事の合間につくったものだったと思います。
私自身も遊び心のあるちょっとしたものが好きですし、花というモチーフが、塊の重い鉄とは真逆の薄くて柔らかいイメージのものだったので、つくってみたら面白いだろうなと興味を持ちました。
――いつごろ制作したものでしょうか
5月末に親しい友人の結婚パーティーがあり、それに合わせてプレゼントとして制作しました。
合計で4本つくり、新郎新婦、新郎のご家族、新婦のご家族にそれぞれ1本ずつプレゼントし、試しにつくった1本はまだ手元にあります。
――使用した素材や、作り方について教えてください
材料に使ったのは1.2mm厚の鉄板(花弁)と、直径6mmの鉄の棒材です。本物の薔薇よりも花弁の枚数や形をデフォルメして、作業工程もシンプルになるようにしています。工程は以下の通りです。
(1)下書きして花弁・ガクをノコギリで切り出す
(2)バリ(出っ張り)を取る
(3)花弁・ガクを熱して叩いて薄く伸ばす
(4)中心に茎と同じ大きさの穴を開け、通して順番に茎に溶接
(5)熱して順番に花弁を立てる
(6)熱して花弁を開きながら微調整
――制作する上で心がけたこと、大変だった点は
元の鉄板の無機質で硬い感じから、花弁の薄くて柔らかい雰囲気に近づくよう心がけました。少し大変だったのは、薄い素材の溶接作業でしょうか。
――制作しながら感じたことは
見よう見まねで、作業工程も想像で補う部分が多かったのですが、意外と上手くいくものだなと。他の種類の花や、全く別のものをつくるのにも応用できるかもしれないな、と考えながらつくっていました。
――花が赤く見えるのは時間にしてどれくらいでしょうか
材料の大きさや厚さにもよりますが、今回の花弁の場合はかなり薄いので、30秒足らずで元の色に戻ってしまいます。
――完成した時の気持ちは
予想外に上手くできたので嬉しかったです。あとはプレゼントの予定だったので、喜んでもらえるといいなと。
――話題になったことについては
自分のつくったものに対して、様々な方から「綺麗」「ぜひ欲しい」というコメントを頂けたので、嬉しかったです。あとは、滅多に会わない友人から連絡が来て、SNSの拡散力に驚きました。
薔薇からは少々それてしまって恐縮ですが、普段の制作物にも、熱して柔らかくなった質感を曲線として留める、重力に逆らった不思議な造形など、「熱した時の赤」だけに留まらない鉄の魅力が盛り込んであります。注目していただけたらと思います。
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