連載
#31 ことばマガジン
「~だそう。」で終わるの何だか気になる? 広まった理由を調べた
テレビのナレーションで、「~そう」という表現を聞いたことがありませんか?
【ことばをフカボリ:14】
テレビのナレーションで、「~だそう。」という表現を聞いたことがありませんか。人から聞いた話を伝える時の言い方で、「~そうだ」「~そうです」とせずに「~そう」で終わります。言葉足らずだとずっと違和感がありました。なぜそんな言い方が広まっているのか、調べてみました。(朝日新聞校閲センター・奈良岡勉/ことばマガジン)
私が奇妙に感じているのは、ナレーションの話し言葉です。ところが、書き言葉を使う新聞記事でも、実は以前から頻繁に使われていました。
朝日新聞の記事データベースで「だそう。」で記事検索すると、「あるのだそう。」「大切なのだそう。」と枚挙にいとまがありません。
さかのぼれば、1985年に「スーイスイ、だそう。」、87年に「一度たりとてないのだそう。」などが見当たります。
国語辞典にこうした用法は載っているのでしょうか。「三省堂国語辞典」は最新版・第7版(2014年発行)で初めて項目を立てました。
《そう 「そうだ(助動)」の語幹。「花よめさんはうれし―・新作のロールケーキも人気だ―・効果がある―よ〔女〕」》
「説明と例文は私が書きました。『新作のロールケーキ』の例はわかりやすく、見つけたときは喜びました」。同辞典編集委員の飯間浩明さんはこう振り返ります。
飯間さんによると、「今日は日曜日だ」→「今日は日曜日」(名詞)、「私は大丈夫だ」→「私は大丈夫」(形容動詞)、「まるで夢のようだ」→「まるで夢のよう」(助動詞「ようだ」)、「花嫁さんはうれしそうだ」→「花嫁さんはうれしそう」(助動詞「そうだ」の「様態」と呼ばれる用法)といった例をみてもわかるように、「だ」は省かれやすいのです。
言い換えれば、「だ」は着脱可能であり、助動詞「~そうだ」の伝聞用法も「だ」をつけなくてもよいではないか、というのが言葉を使う人のごく自然な(無意識の)思いでしょう、と飯間さんは説明します。
飯間さんが多く実例を取ったのは99~2000年ごろにかけて。「すでにこの用法は定着しています。新聞の紙面に出ていてもまったく違和感はありません」と言い切ります。
なるほど、そうでしたか……。とは言いつつ、私としてはかすかな違和感がなお残ります。日常会話はもとより、上司に向かって「~だそう」と報告できそうにありません。
別の国語辞典もひいてみました。「日本国語大辞典」の「そうだ」の項目の「語誌」には、「室町以降用いられた助動詞で、はじめ終止形は『そうな』であったが、近世中期ごろから『そうだ』の形もつかわれるようになった」とあります。
なるほど。ナレーションを現代の語り部のようにとらえ、「~そう」と言い終わったら心の中で小さく「な」と語尾を補って聞いていれば、そのうちなじんで、私から違和感も消えていくのかも知れません。「そう」も「そうな」も断定を避けた柔らかい言い終わり方ですから。
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