連載
「趣味に逃げて」人質事件で引きこもり 今井紀明さんの「#withyou」
2004年、イラクで武装勢力の人質となり、解放後も日本社会から「自己責任」の言葉を浴びせられた経験を持つ今井紀明さん。32歳になった現在は、大阪で、通信・定時制高校に通う子供たちと社会をつなぐNPO法人「D×P」の理事長として活動しています。10代に接する日々の活動が「いまはすごい楽しい」と話す今井さんですが、人質事件後は一時、自宅に引きこもっていました。そんな今井さんに「新学期、学校に行きたくないあなた」へのメッセージを聞きました。
――新学期、いろんな理由で学校に行きたくないと思っている若い子って多いと思うんですが、本やマンガ、映画など、オススメしたい作品などありませんか。
それって意味あるんすかね。みんなそれぞれの悩みがあって、その状況になる。同じ状況になり得ることなんて多分あり得ない。世代も違うから刺さるモノは人それぞれだと思います。
作品を薦めるくらいなら伝えたいことがあります。
――「伝えたいこと」それは何でしょう?
「全力で趣味に逃げようぜ!」です。
経済環境や家庭環境によるとは思うんですが、自宅でネット環境が整っている子は、twitterで自分のコミュニティーの仲間と趣味の話で盛り上がるとかでもいいんです。オンラインゲームでコミュニケーションとるのでもいいし。動画配信サイトで映画やアニメを見続けるのもいいですよね。いまの子たちは選択肢の幅が広いですよ。
――ちなみに今井さんが引きこもっていた期間はなにしてましたか
僕はガンダムと攻殻機動隊を見まくってました。ごはん食べてアニメみて、寝て。起きて、アニメみて・・・の繰り返し。
そうすると、ある日突然「あ、このままじゃいけない」と思うようになってくるんですよ。「他のことに対しても興味持たなきゃ」って。だからそれまで、趣味に没頭し続けたっていいと思うんですよね。
――没入は無駄じゃないと?
没入した経験って、その分野に詳しくなれるし、「引きこもり時代」をネタとして話せるようになる。過ぎたら案外話せるんですよ。
うちに来る生徒(主に10代)は、いじめなんかを過去に経験していて、ある種「逃げることに成功した子たち」ですけど、やっぱり、引きこもっていた時期のこと、話せるようになってますよ。あのときこんなマンガ読んでたわーとか。
――今井さんは引きこもってからどのくらいで「このままじゃいけない」と思いましたか
これは人によるけど、自分の場合は2~3カ月くらいだったかなあ。気づきがあってから外にでると、急に「吸収したい」っていう欲求が出てくる。だから、あんまり焦らなくていいと思う。
――学校に行かなくなると、心配する親や先生もいると思います
それなりに考えてるから大丈夫と伝えたい。親御さんは、なんでお子さんが学校に行きたくないのか、家にいたいのか、理解しようと努力してほしいですね。否定せずまずは聴いてほしい。
それに、子供は学校に行かない期間で自分の好きなものと向き合えるようになるから、自分の特性をつかんで、何が好きか、わかるようになるはず。
ある意味で、学校の教科だけでははかれないものがみえてくる機会になるかもしれない。
「不登校はしんどいよね」っていうことは語られてきましたが、「不登校は才能の始まり」。そう思っても全然いいと僕は思ってます。
取材で「不登校は才能だ」ということを話した。
— 認定NPO法人D×P(ディーピー) 今井紀明 (@NoriakiImai) 2018年3月25日
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