マンボウ好き、集まれ!
9月30日、下北沢の本屋「本屋B&B」で、本の刊行を記念したトークイベントが開催されました。




「3億個を産卵→生き残るのは2匹」はウソ?
澤井さんによると、この通説の元となったのは、イギリスの有名な科学雑誌「Nature」。1921年に発表された論文に「マンボウの卵巣内に3億個以上の小さな未成熟の卵が含まれていることを発見した」という記述があったそうです。

このため、「1度に3億個の卵を産む」という事実は確認されていません。

「元となった情報はわかりませんが、『少なくとも雄・雌の2匹が生き残れば、種として存続することができる』という意味から派生したのではと考えています」。
実際のところ、マンボウの繁殖や産卵についての知見はほとんどありません。「伝言ゲームのように、事実が改変されて伝わっていった」という澤井さんの話に、参加者は聞き入りました。

ネット上の「最弱伝説」も研究

「マンボウのひみつ」では、そんな噂のひとつひとつに対して、発生した時期を特定。誤った情報が拡散した原因も考察しています。そして、「最弱伝説」の発端となったとされる「ジャンプして着水の衝撃で死ぬ」についても丁寧に否定しています。

「ひれを欠損するケガを負っても、生き延びていたマンボウを見たことがあります。また食用に漁獲された大きなマンボウは、船の上である程度解体されるのですが、漁港に戻ってもまだ心臓が動いていた、という場面も目撃しました」。
「ネット上にあるマンボウの噂はあくまで『噂』です。あまり鵜呑みにしないでほしい」といいます。
マンボウ研究、今は「趣味」
「例えば、マグロなど一般的によく食べられる魚は需要があるので、養殖をしようと試みるなど、研究されて理解が進みます。これに対して、マンボウは漁業的価値が低く、また重くて調査自体が大変なので、科学的なアプローチがあまりされていません」。

それでも今年7月に発表された、新種のマンボウ「カクレマンボウ」の発見にも寄与するなど、精力的に活動しています。
「今はマンボウ研究は『趣味』になっています。マンボウが好きだから続けていますが、安定した収入を得ながら研究ができる環境を常に探しています。マンボウを研究したいという仲間もいると嬉しいですね」と話しています。