連載
マンボウ最弱伝説はウソ 「ジャンプで衝撃死」「太陽光で死ぬ」
ネットですごく盛り上がってる「マンボウ最弱伝説」は嘘でした。「海底へ潜ろうとして寒さで死ぬ」とか「朝の太陽光を浴びると死ぬ」とか。マンボウの名誉を守るため、取材しました。
連載
ネットですごく盛り上がってる「マンボウ最弱伝説」は嘘でした。「海底へ潜ろうとして寒さで死ぬ」とか「朝の太陽光を浴びると死ぬ」とか。マンボウの名誉を守るため、取材しました。
1/27枚
愛くるしい姿が人気の「マンボウ」。水族館でおなじみの魚ですが、詳しい生態は謎の部分も多いです。ネット上では「海底へ潜ろうとして寒さのあまり死ぬ」「朝の太陽光を浴びると死ぬ」といった「マンボウ最弱伝説」が盛り上がり、激ムズの「マンボウ育成ゲーム」まで登場。噂はどこまで本当なのか? マンボウの名誉を守るため、真偽を取材しました。
(朝日新聞デジタル編集部 若松真平)
ネット上で語られている主な「最弱伝説」はこんな感じです。
【小魚の骨が喉に詰まって死ぬ】
【寄生虫を殺すためにジャンプ→水面に激突して死ぬ】
【ほぼ直進でしか泳げず死ぬ】
【海底に潜水して、寒さのあまり死ぬ】
【朝の太陽光を浴びると強過ぎて死ぬ】
【近くに居た仲間が死亡したショックで死ぬ】
【水中の泡が目に入ったストレスで死ぬ】
【皮膚が弱すぎて触っただけで痕が付き、その傷が原因で死ぬ】
伝説を検証すべく、今回取材したのは名古屋市にある名古屋港水族館。数あるマンボウを飼育している水族館の中からここを選んだ理由は、13000件以上もリツイートされたこんなつぶやきを見つけたからです。
今日は名古屋港水族館に行ったのですが、マンボウの餌やりショーの間、説明のお兄さんが「最近ネットで、ジャンプして着地の衝撃で死ぬという話が出回っていますが嘘です。消化できない、びっくりして死ぬ話も嘘です。この水槽の前でカップルの彼氏の方が自慢気に話してますが嘘です」と熱弁してました
— しの(にゃー) (@raf00) 2014, 8月 25
もしかしたら、ここに登場したお兄さんかもしれない飼育担当の小串輝さんに伝説の真偽をひとつずつ聞いてみました。
【小魚の骨が喉に詰まって死ぬ】
消化能力は弱いです。海中ではクラゲなどを食べますが、名古屋港水族館ではイカとエビのすり身を与えています。魚をそのまま与えると骨が腸に刺さって死ぬことがあります。
【寄生虫を殺すためにジャンプ→水面に激突して死ぬ】
水族館でもジャンプすることはありますが、それが原因で死んだことはありません。
【ほぼ直進でしか泳げずに死ぬ】
マンボウも回転できます。他の魚と違って体を曲げるというよりは後ろの方にあるヒレで方向を変えるため、小回りは利きにくいですが、まっすぐしか泳げないわけではありません。
【海底に潜水して、寒さのあまり死ぬ】
800mぐらいまで潜るとされているので、それはないです。
【朝の太陽光を浴びると強過ぎて死ぬ】
ありえません。光が原因で死ぬとしたら、水族館の水槽に向けてカメラのフラッシュがたかれてビックリし、水槽などにぶつかる場合でしょう。朝日を浴びて死ぬなら、水族館に連れてくることもできません。
【近くに居た仲間が死亡したショックで死ぬ】
個体が減ることへのストレスよりも、増えることへのストレスの方が大きいとされています。新しい仲間が加わると、縄張り意識から相手の邪魔をすることがあります。仲間が死んだショックで死ぬことはないと思います。
【水中の泡が目に入ったストレスで死ぬ】
気泡が目の中にできる「ポップアイ」という病気にかかることはあります。ただし魚類一般の話なので、マンボウだけが特別弱いというわけではありません。
【皮膚が弱すぎて触っただけで痕が付き、その傷が原因で死ぬ】
皮膚が弱いのは事実です。表面はザラザラしていて固いですが、人が強くさわると跡がついてしまいます。傷が付きやすく治りにくいため、そこから感染症になって死ぬ可能性はあります。だだ、他の魚と比べて極端に弱いというほどではありません。
伝説のほとんどはまったくのウソか、事実をおおげさに解釈したものでした。
小串さんはマンボウを担当して4年目ですが、ここ1、2年の間で最弱伝説を耳にすることが増えたといいます。
なので、エサやりタイムなどに「マンボウはそんなに弱い生き物ではありません」と来館客に積極的に伝えているそう。
それでも、話したそばから「マンボウってスゲー弱いらしいよ」とか「ああっ、他の魚にぶつかりそう。死んじゃうよー」といった声が聞こえてくるといいます。
小串さんはこう訴えます。「ネット上の話をそのまま信じないで、実物を見に来て確かめてください。わからないことがあったら飼育担当に何でも尋ねてみてくださいね」。
こちらでは、マンボウがエサに素早く食いつく映像が見られます(17秒目くらいから)。けっこうスイスイ泳いでます。
お友達が「知ってる?マンボウってさあ・・・」と語り始めたら、みんなでそっと止めてあげてください。
この記事が少しでも多くの人に読まれて、マンボウの名誉回復につながりますように。