IT・科学
豪雨被害、あえて「インスタ映え」支援 「盛った器」で魅力発信
災害で困っている地域のために何かしたい。寄付でもボランティアでもいいけど、もっと身近な方法は? SNSの拡散力を活用した「インスタジェニック」な支援があります。九州北部を襲った豪雨では、地元の焼き物の魅力を伝えようと器に料理を「盛った」写真が発信されました。そんな写真を見た人が、これまで知らなかった被災地の魅力に気付く。新しい支援の形になるかもしれません。(朝日新聞福岡本部記者・小原智恵)
「インスタジェニック」「インスタ映え」。写真の見栄えだけを気にするような、普段ならちょっとネガティブな響きのある言葉です。でも、SNSの世界では目をひく画像がシェアされやすいのも事実です。
そんなSNSの発信力を災害支援に活用できないか? 色々な手続きが必要な寄付や、時間を作って現地に足を運ぶボランティアはハードルが高い人にも、SNSで被災地の魅力を発信するお手伝いなら接点が持ちやすそうです。
焼き物の里だった福岡県東峰村や大分県日田市に豪雨が襲ったのは7月5日。それ以後、「#小石原焼」「#高取焼」「#小鹿田焼」のハッシュタグとともに心配の声を載せたり、つくった料理を小石原焼や高取焼、小鹿田焼に盛りつけて発信する支援をする人がみられました。
被災地のものを買って支援する動きは、東日本大震災や熊本地震の際にも見られましたが、自宅にある被災地の器に料理を盛りつけ、発信する支援はインスタグラムならではです。
また、その投稿を見てほしいと思ったら購入し、発信することで支援の連鎖になる新たな支援の形だと感じました
実際、現地の窯元などのような状況なのでしょう。豪雨後の10日に再開した福岡市中央区にある東峰村のアンテナショップ「東峰ムラガールズ With+(ウィズプラス)」を訪ねました。
店には東峰村の7つの窯元から仕入れた小石原焼と同じく村で作られる高取焼がずらりと並んでいます。豪雨後には、知人が軽トラで村に入り、在庫を受け取りに行きました。土砂が流れた窯元もあり、泥がついたまま運ばれてきたものもあります。
村出身で店長の上野恵梨奈さん(29)は、「豪雨で土砂が流れたり、落雷が原因とみられる火災で窯が燃えてしまったり大きな被害にあった窯元さんもいる」と話します。
上野さんも3年前にアンテナショップを開店して以降、器を通して東峰村のよさを発信しようと小石原焼や高取焼につくった料理を盛って、インスタで発信しています。
「料理も好きなので盛り付けることで器や村のよさを伝えたい」と続けてきたそうです。
上野さんは多くの人たちに使って発信してもらいたいと言います。
「盛り付けて発信することで東峰村=小石原焼と知らない人に知ってもらうきっかけになる。そして、豪雨で厳しい状況にある窯元さんたちを励まし、伝統文化を守ることになります」と呼びかけています。
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