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2017年05月26日

イクメンやって過労死!?私がイクメンに反対する背景

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出典: Plus-handicap

 「男も子育てしよう」と呼びかけるイクメンは一大ムーブメントを巻き起こしました。ママだけでなくパパも子育てを積極的にやる。これは、とってもいいことだと思います。2013年ごろから産婦人科の病院や自治体で両親学級(パパママ教室)の講師の仕事もしていますが、私は一貫してこのムーブメントには反対しています。

 パパもママも子どもに愛情を注いで育てることはとても大事なことだと思います。親なのですから。外で働くパパが早く帰って家族と一緒に過ごすことはとってもいいことです。それがいいことだと思っていて、1人でも多くのパパに無理なく気持ちよく子育てや家のことにも目を向けてドンドン入っていって欲しいから、無邪気にイクメン(だけ)を奨める気にならないのです。

イクメンできない原因が男性自身にあるとは限らない

 外で働く男性が早く帰って家族と過ごす。とってもいいことです。では男性はどうやったら早く帰れるか。長時間労働を是認する雰囲気や長時間労働せざるを得ない労働環境が変わらないと、早く帰りたくても帰れないパパが大勢います。つまり、早く帰ってイクメンしたかったとしても、個人の努力ではどうしようもない環境的な要因が立ちふさがっているわけです。

 個人の努力ではどうしようもない環境要因が個人の責任に矮小化され、「早く帰ってイクメンしない男はよくない」という雰囲気を作ってはいないでしょうか。職場(労働環境)に恵まれた男性はイクメンできて、そうではない男性は(イクメンしたくても)イクメンできなくて悪とされてしまう。イクメンできることだって、今の日本では特権階級なのかもしれません。個人の努力だけではどうしようもない要因に左右されてそれが個人に負の烙印を押すのを、私は見逃せません。

 以前こんな事例がありました。

 あるママが「子どもの寝かしつけは夫にやってもらわないと自分の気が収まらないから、夫が帰ってくるまで子どものことを寝かせない。よその家のパパは子育てすごくやっているのにうちは全然協力してくれない」というのです。お子さんはまだ1歳にならないくらいの時期。寝るのが仕事で、睡眠が足りないと翌日かなりぐずります。

 「気持ちは分からなくはないですが、早く寝かしつけた方が翌日子どものぐずりも少なくなってあなたも楽だと思いますよ」と伝えたのですが、そのママは頑なに譲りませんでした。パパが早く帰って来られれば万事解決しそうですが、そうなっていないことで家族みんなが不幸なスパイラルにはまっていました。もちろん、パパには早く帰れない職場の事情があってのことです。

イクメン過労死が心配

 パパが仕事だけではなく、パートナーや子どもに目を向けて一緒に過ごす時間を作るのは間違いなくいいこと、重要なことです。しかしながら、先ほどから書いているように、長時間労働を始めとした労働環境が整理されないうちは、イクメンを推奨するのは時期尚早だと考えています。平日は長時間労働で疲れて帰って来て、そこから家事もやって、次の日も朝早くから夜遅くまで働いて、休日はイクメンで稼働して。いったい、いつ休むんでしょうか。

 以前こんな事例がありました。

 あるパパが夜な夜な風呂を洗いながらすすり泣いていたそうです。ママがすすり泣きに気づいて声をかけると、「役に立たなくてごめんね。もう頑張る自信がない…」というパパ。慌てたママが「大丈夫よ。じゅうぶんやってくれてるじゃない」と応えると「気を遣わせてごめんね…」とパパがまた謝ってくる。完全に鬱的な精神状態に陥っています。

 イクメンしなきゃというプレッシャーから「苦しい」「つらい」「これ以上がんばる自信がない」と相談してくる男性が増えている、という話を複数の地域の専門職の方たちから聞いています。生真面目で家族想いなパパほどこうなる可能性が高いので気をつけたいところです。

男性には男性の大変さがある

 ということを書くと、「女性だって昔から家事・育児・外での労働とやってきて、やりきれないと母親失格と言われたのに、男がそういう状況になるとかわいそうだなんてふざけるな!」と言われそうですが、例えば仕事の早退ひとつ取っても、女性が家庭の理由で早く帰ることと男性が家庭の理由で早く帰ることに対して、扱いの違う職場はまだまだあります(これは女性差別であるとともに男性差別でもあり、このこと自体が大変な問題です)。男性が家庭の事情で早退することにはまだまだ厳しい目線が付きものです。

 男性「子どもが熱出してるんでお迎えに・・・」
 上司「そんなの、奥さんに頼めよ。奥さん行けないのかよ」

 というように。もちろん、被雇用者として働いている以上、女性だって同様の苦労をしている方は大勢いらっしゃいます。だから「男性だけが大変だ」という気はありません。ここでは男性にも苦労はあるということにフォーカスしています。さらに「男の時だけふざけるな」と言いたくなる気持ちは大変よく分かるのですが、それはこれまで女性がされてきた(性別を理由とした)暴力的な扱いを男性に打ち返しており、暴力の仕返し・連鎖以外の何物でもありません。

 労働環境や、男性/女性に社会が求める役割像というものはとても手強く、なかなか打ち崩すのが難しい部分もあります。働き方の多様性が認知されてきたり、主夫が増えてきたり、どんどん新しい在り方が世に出てきていますが、まだまだ男性がお金を稼ぐことを期待されている状況は多いと感じます。

 家族のことを大事だと思えばこそ、家庭の外に行って働いてお金を稼ぐことを求められる男性。働く場で女性とは扱われ方が違うこともしばしばあります。それ自体が大変な問題ですが、その現実はすぐには変わらなさそうなので、それを前提として理解したうえで、男性と女性の問題やイクメンのことなどを考える必要がありそうです。イクメンを推し進めた先に男性の生きづらさが待っているという何とも皮肉な構図が気になって仕方ありません。【ライター:柳田正芳】


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