話題
けもフレ「しんざきおにいさん」実物も「神」だった あの噂の真相…
大盛況のうちに最終回を迎えたテレビ東京のアニメ「けものフレンズ」。メインキャラクターであるネコ科の動物「サーバル」はもちろん、サーバルの音声解説をした多摩動物園(東京都日野市)の飼育員「しんざきおにいさん」にも注目が集まっています。ほんわかとした語りに、ファンが急増。一体どんな人なのか、インタビューしてきました。
「けものフレンズ」とは、超巨大総合動物園「ジャパリパーク」を舞台に、「アニマルガール」と呼ばれる動物が人間の外見をしたキャラクターたちと、人の外見だが自分が何者かが分からない「かばんちゃん」が織りなす冒険の物語です。
メインキャラクターの「サーバルちゃん」などが話す「すごーい!」「たーのしー!」というポジティブで単純なセリフが癖になる、と、ネット上で多用されるようになりました。
また番組の途中には、実在の飼育員による動物の音声解説コーナーがあることも特徴的です。
専門的なその内容がアニメのキャラクターに反映されていることもあり、動物に対する知的好奇心をくすぐられる演出となっています。
アニメの前半は愛らしいキャラクターが繰り広げるほんわかとした穏やかな放送回が続くのですが、廃墟と化している「ジャパリパーク」の謎や、アニマルガールたちを危険にさらす「セルリアン」の存在など、徐々に不穏な空気がたちこめてきます。
それでも全体としては楽しいストーリーとなっているので、心に引っかかるものがあっても「でもまあ騒ぐほどでもないか」と見進めることとなります。しかし、最終回を目前とした第11話が、予想だにしていなかった大ピンチで終了します。
楽しかったあの頃に癒やしを求めて、ニコニコ動画で公開されている第1話を見てみると……なんということでしょう、気にも留めていなかったセリフ、エピソードが第11話の伏線となっていたのです。
衝撃の展開に、「けものフレンズ」ファンが藁をもすがる思いで助けを求めたのはそう、第1話で「サーバル」の解説をしている多摩動物公園の「しんざきおにいさん」でした。
その素朴な語り口調に、ニコニコ動画の該当のコーナーのコメント欄には「しんざきおにいさんたすけて」の文字が並ぶ事態となり、Twitterでも「しんざきおにいさん」というキーワードが爆発的に使われるようになりました。
多摩動物公園に取材を申し込んでみると、インタビューに応じていただけることになりました。どうやら秘密の存在ではなさそうです。
アニメが放送されているときからずっと気になっていた「しんざきおにいさん」。取材日は、最終回直後の興奮冷めやらぬタイミングです。まさか本当にお会いできるとは…。インタビューの脳内シミュレーションを繰り返し、主題歌「ようこそジャパリパークへ」を暗唱した上で新品のブラウスを買いに行きました。
お会いできることが嬉しい反面、アニメ界のタブーに触れているような気もして、浮足立っているかと思えば突然真顔になるという、はたから見れば非常にヤバい数日間を過ごしました。
待ち合わせの場所は、アフリカ園内にあるサーバル舎前。…ついに、あの「しんざきおにいさん」に会える…。
「こんにちはー」
約束の時間に現れたのは、すらっとした体格に真面目そうな顔だちの男性。「しんざきおにいさん」こと新崎慶太さん(24)です。この方が…「しんざきおにいさん」!
大学卒業後、多摩動物公園で飼育員として働き始めて今年度で3年目。担当しているのはライオン、チーター、サーバルのネコ科3種類だそうです。
普段は動物の体調管理や給仕、獣舎の掃除などを行なっているという新崎さん。担当しているサーバルについては「特に希望した訳ではない」とのことですが、大学生の頃から多摩動物公園で見ていたそうです。
「もともとネコ科は好きだった」と話します。
せっかくなので、基本的なところから新崎さんにサーバルについて伺いました。
サーバルはアフリカ大陸のサハラ砂漠より南、サバンナ地域と言われるところに生息しています。うさぎやねずみをはじめ小型の哺乳類などを好み、特に中型の鳥のホロホロ鳥については飛び立つ瞬間にジャンプして捕らえると言われているそうです。多摩動物公園では馬肉と鶏頭を主食としているとのことでした。
多摩動物公園には6頭のサーバルが飼育されています。この日は2015年9月28日に誕生したオスのアポロを見ることができました。
他のネコ科の動物と違うところは、「いろいろなところに興味を持つことですかねぇ、特に若い個体は遊ぶのが好きですね」とのことです。
サーバルは耳が大きく、土の中の音も聞こえると言われているそうで、サーバル舎に住んでいるモグラの音が気になって塚を手で掘り返しているそうです。また遠くの音が気になって、じっと様子を伺っていることもあるそうです。
確かにアニメでも、サーバルちゃんが近くにいる動物の気配を耳で察知していたり、人間には聞こえないくらい小さな声も聞きとれる描写がありましたね。
ところでしんざきおにいさんはアニメ「けものフレンズ」を見ていたのでしょうか。
新崎さん
野口
新崎さん
音声でしか登場しない「しんざきおにいさん」が人気なのは、優しい声やおっとりとした語り口調で伝わる「人の良さ」や、「親しみやすさ」だと思います。
恥ずかしがり屋のこんな一面も「けものフレンズ」もとい、「しんざきおにいさん」ファンが増える所以なのかもしれません。照れながらもアニメについての感想を教えてくれました。
新崎さん
番組内で「汗をかかない」と言われているサーバルですが、実際にネコ科をはじめ犬なども、皮膚ではなく、肉球や舌で体温調節するそうです。
新崎さん
野口
新崎さん
野口
新崎さん
野口
新崎さん
「頼ってもらえるのはありがたい」とは、奥ゆかしいコメント。その素朴な口調に、肌になじんだコットンに包まれるような感覚を与えられます。
一番好きなキャラクターは?と聞くと、やっぱり「サーバル」でした。
新崎さん
というのも、アニメが放送される前はサーバル舎の前に人が集まることはあまりなかったそうです。
「近くにチーター舎があるので、その流れで見るというか。チーターの赤ちゃんだと勘違いされたり、名前を書いたプレートが置いてあるんですが、間違われたりで…。お父さんやお母さんが子どもに『サバールだよ』と説明してて、ちょっと寂しいというか」
「知ってもらえるということはありがたいです」と話す新崎さん。
実際にサーバル舎の前には常に10人以上のお客さんがおり、サーバルが移動するとそれを追いかけてお客さんも檻の前を行ったり来たり。スマホやカメラで写真を撮ったり、サーバルを模写したりしている姿もありました。
サーバル舎の前にいた北井さん(17)と小泉さん(17)は、「けものフレンズ」でサーバルの存在を知り、この日初めて見たそうです。
「アニメのサーバルの好きなところは元気なところや優しいところ。実際に見てみると細くてかわいい」と話します。
「しんざきおにいさんも好き。しゃべり方が落ち着くし、動物への愛を感じる」そうで、このインタビュー後に新崎さんに話しかけていました。
「サインもらいたかったけど、言えなかった」とまるで芸能人を見るようなまなざしです。
「けものフレンズ」の最終回が放送されるとすぐに、新作の制作決定が発表されました。この情報は新崎さんもご存じのようで、次回作への期待を話してくれました。
新崎さん
新崎さん
ネット上では「しんざきおにいさんは『けものフレンズ』に無断で出演したのではないか」という投稿も相次ぎました。この点についても確認しました。
野口
新崎さん
「怒られたりとかもないですが、ネット上の反応に個人的にソワソワした時期はありました…」と振り返ります。
なんだ良かった…。しんざきおにいさんが怒られているところを想像して、気が気でなくなってしまった人もいたのではないでしょうか。
「けものフレンズ」ファンの癒しの源であるしんざきおにいさんの、かけがえのない笑顔が守られていたことで、ほっと胸をなでおろしました。
サーバルは悪天候でなければ、基本的に開園している間はずっと見られるそうで、何時にいっても愛らしい姿を観察することができます。
また、多摩動物公園では月に2~3回、「サーバルジャンプ」というイベントを行っています。檻の上からサーバルのエサである馬肉をひもで吊るし、それをジャンプして取る姿を見ることができます。固定日で行っているのではないのですが、開催される場合は事前にお知らせがあるそうです。
また「サーバルジャンプ」には新崎さんが担当することもあり、イベント後は話しかけるチャンスもあるそうです。
他の仕事もあるので、あまり長い間は話せませんが、声をかけられたら話すようにしているそうです。
野口
新崎さん
新崎さん
最後に「サーバル」の好きなところや魅力をスケッチブックに書いてくださいとお願いしたところ、「なんでしょう…ジャンプ力、以外で考えますね…!」とかなり悩んで考えてくださいました。
「あんまり字は得意じゃないんですが…」と書いていただいたのがこちら!
「好奇心旺盛」、アニメのサーバルちゃんにも通じる魅力を教えてくださいました。新崎さん、ありがとうございました!
取材も終わり、せっかくなのでお土産でも買って帰るかと思ってギフトショップに入ったところ、あれ…サーバルのグッズが見当たりません。
くまなく探しても、ないです。店員さんに確認したところ、取り扱いがないそうで、「1つだけあるっちゃあるんですが…」と教えてくれたのがこれ。
「ワイルドキャットボックス」という、ネコ科の動物たちのフィギュアの詰め合わせです。
10個入っているうちの1個が、サーバルです。お値段税込み3,240円。サーバルちゃんが欲しいだけなのでちょっと割高なのですが、せっかくなので買ってみました(もちろん自腹です)。
試しに手のひらに乗せてみました。手乗りサーバルです。ほどよいサイズ感と土台の安定感、結構しっくりきます。ちなみに社内をこの状態で歩いていたところ、先輩に「やべぇ奴じゃん」と言われました。なんのことでしょう。
観葉植物の脇に置くと、まるでばったり野生のサーバルに遭遇したようなシチュエーションを演出することができます。(ここはあなたたち人間の来るところじゃない…帰りなさい…)と心に直接語りかけられているような錯覚に陥ります。
あまりの愛くるしさに、先輩にこの原稿のチェックをされているときも、サーバルを撫でながら話を聞いていたところ、今後の人間関係に支障が出るくらいに引かれたのでぐっとこらえて席に戻ってきました。こんな私が言うのもなんですが、多摩動物公園さま、もっと商品展開していただければ嬉しいです。
おさらいになりますが、サーバルちゃんとしんざきおにいさんに会えるのは多摩動物公園です。園内は結構広くて、坂もありますので、これから行かれる方はぜひ歩きやすい靴を履いていってくださいね。
1/41枚