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2017年02月21日

シリアの廃墟で会った「自撮りギャル」“普段の生活”貫くたくましさ

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世界遺産「アレッポ城」の前で自撮りするシリアの女性たち

世界遺産「アレッポ城」の前で自撮りするシリアの女性たち

 内戦の続くシリア北部「アレッポ」は、史上最悪の激戦地と言われています。そんな場所で見かけたのは、友人同士、頰を寄せ合ってスマホで自撮りをする女性たち。現地の学生とは「進撃の巨人」で盛り上がり……。戦争という異常の中で見たのは、“普段の生活”を続けようとする現地の人々のたくましさでした。(朝日新聞国際報道カメラマン・矢木隆晴)

「現代における最も壊滅的な紛争のひとつ」

 国際観光都市アレッポには、戦争が始まる前、約300万人が住んでいました。しかし、2012年夏頃から紛争が激しくなっていきました。

 反政府グループがアレッポの東側を、政府側が西側を抑え、激しい市街戦を繰り広げました。主な戦場になったのは東側。シリア軍やロシア軍が空爆や砲撃で攻撃しました。

 火力で政府軍に劣る反政府グループは、トンネルを掘ったり、廃墟に隠れたりして持久戦を展開したわけです。ついに、政府側はロシアの協力を得て、昨年12月に東側を「制圧」しました。

 アレッポの戦いは、「現代における最も壊滅的な紛争のひとつ」(赤十字国際委員会のマウラー総裁)で、数万人の市民が犠牲になったと考えられています。


リアルな「北斗の拳」の街

 わたしが同僚の春日芳晃記者(朝日新聞イスタンブール支局長)とアレッポを取材で訪れたのは、今年1月8日。「東側」に入ると、街は破壊され尽くしていました。

 政府側が収容した後だったのか、戦闘で犠牲になった遺体を見ることはありませんでした。しかし、見たところ8~9割の建物が、爆弾や砲弾でなんらかの被害を受けていたように思います。日本とさほど変わらない都市が壊滅しているのは、複雑な気持ちになりました。

 「当たり前の生活が、人の手で壊される」怖さというか……。不謹慎な言い方かもしれませんが、子どもの頃に読んだ漫画「北斗の拳」に出てくる街そのものでした。街の「色」を失って荒廃した町並みが広がっていました。

アレッポ東部のハイダリーア地区では空爆や砲撃で激しく建物が破壊されていました

アレッポ東部のハイダリーア地区では空爆や砲撃で激しく建物が破壊されていました

地獄の街にも「今どき女子」の姿

 海外で取材をしていると、日本では想像しえないことによく出会います。こんな地獄のような状況でも、それは起きました。

 アレッポ東部の旧市街地区にある世界遺産「アレッポ城」の近くを車で走っていると、10代か20代前半の女子たちが、ピンク色の自撮り棒にスマホをセットし、顔を寄せ合ってセルフィー写真を撮っていたのです。

 アレッポ城は、反政府グループの拠点の一つでした。城の外観を見る限りそれほど破壊されているように見えませんが、周囲は同じく「北斗の拳」の様相です。歴史ある旧市街の建物が崩れ落ちています。

アレッポ城のお堀の塀に立って自撮り棒でセルフィーを撮る女性たち。戦闘が続いていた旧市街にも、ようやく訪れることができるようになりました

アレッポ城のお堀の塀に立って自撮り棒でセルフィーを撮る女性たち。戦闘が続いていた旧市街にも、ようやく訪れることができるようになりました

 「紛争があっただけで、暮らしているのは私たちと何も変わらない市民なんだ」と気づかされました。

 この時だけではありません。続いてがれきの街を歩いていると、老若男女問わず「おー、写真撮ろうよ」とよく声をかけられます。ニコニコとなんとも人なつっこい笑顔!肩を組んで、スマホでセルフィーを撮ります。

 わたしも「アナ、ヤバニ(私は日本人です)」、「シュクラン(ありがとう)」とカタコトのアラビア語で返すと、彼らはとても驚き、一気に仲良くなります。

 長らく続く戦闘の舞台になっていたことから、アレッポ城周辺の旧市街には市民も近づくことができませんでした。

 ようやく戦いがおさまったことから、多くの人々が心配して訪れていました。がれきの片付けなども徐々に始まって、ほっとした表情を見せる人々もいました。

世界遺産に登録されている「古代都市アレッポ」の大モスクにて休憩する老夫婦。「そのカメラで写真を撮ってくれ」と頼まれました。戦闘の舞台となったモスク内はがれきが散乱していました

世界遺産に登録されている「古代都市アレッポ」の大モスクにて休憩する老夫婦。「そのカメラで写真を撮ってくれ」と頼まれました。戦闘の舞台となったモスク内はがれきが散乱していました

砲撃と隣り合わせの生活

 紛争時には閉鎖されていた小学校も、授業が徐々に再開されています。旧市街で取材したある学校では児童が帰り際に国家を歌っていました。その時です。

「ズーン・・・」

 砲撃のような音が聞こえてきました。アレッポ市内での戦闘は終了しているので、音は郊外からだと思われますが、身が縮みます。しかし、子どもたちは誰一人表情も変えず、歌い続けていました。

 以前、シリアの首都ダマスカスのダマスカス大学を訪ねた時のことを思い出しました。

 同じように、聞こえてきた砲撃の音に驚いていると、学生の一人が「大丈夫ですよ。気にしていたら日常生活を送れなくなります。だから、気にしないようにしています」と話していました。

再開したアレッポ旧市街の小学校で国歌を歌う児童たち。この時、砲撃のような音が聞こえましたが、子どもたちは歌い続けていました

再開したアレッポ旧市街の小学校で国歌を歌う児童たち。この時、砲撃のような音が聞こえましたが、子どもたちは歌い続けていました

アニメが「共通言語」 日本語学ぶ学生も

 戦争が続くシリアでも日本のマンガやアニメは深く浸透しています。「進撃の巨人」や「ワンピース」「Naruto」「ドラえもん」などは誰もが知っています。

 日本人とシリア人の「共通言語」となり、初めて会った人ともマンガの話題で盛り上がります。

 またアレッポにあるアレッポ大学の学術交流日本センターでは、約60人の学生が日本語を学んでいました。中には、なんと紛争中も関わらずオリジナルのマンガを描き続けている学生たちもいたのです。

オリジナルの漫画を描くアレッポ大学の学生たち。画材などを日本から援助してもらったそうです。写真中央の女子学生、バスマさんは「悩みや喜びなど、シリア人の思いをマンガで表現したいです」と日本語で説明してくれました

オリジナルの漫画を描くアレッポ大学の学生たち。画材などを日本から援助してもらったそうです。写真中央の女子学生、バスマさんは「悩みや喜びなど、シリア人の思いをマンガで表現したいです」と日本語で説明してくれました

 学校に行けたり、スマホを持っていたりする人たちは、「比較的」恵まれた状況にいるのかもしれません。しかし、アレッポでは西側も含めて断水が続くなど、戦争が始まる前の「普通の状況」ではありません。

 彼らの中にも、知人や友人、親族を亡くしたり、住居など大切な何かを失ったりした人はいるはずです。

 そんな中でも、戦争が始まる前の「日常」が、存在していました。非日常的な出来事が続く中でも「日常」を送ろうとすることは、異常な状態で生きていくための、ある種の「適応」なのかもしれません。

 日常と異常が混在した状況。それが、アレッポで見たリアルでした。

激戦地ルポ シリア・アレッポはいま
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シリアの首都ダマスカスからアレッポまでの途上、広大な砂漠が続いていた=1月8日、シリア、矢木隆晴撮影
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出典:朝日新聞社
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