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「日活ロマンポルノ」女性たちの素朴な疑問 「AVと何が違うの?」

復活した日活ロマンポルノの新作『風に濡れた女』。舞台挨拶に登場した(左から)塩田明彦監督、間宮夕貴さん、永岡佑さん
復活した日活ロマンポルノの新作『風に濡れた女』。舞台挨拶に登場した(左から)塩田明彦監督、間宮夕貴さん、永岡佑さん 出典: 朝日新聞

目次

 かつて数多くの映画監督を世に送りだすきっかけになった日活ロマンポルノ。その最新作「風に濡れた女」(塩田明彦監督)を、女性4人が新宿の映画館で鑑賞しました。「AVとの違いは?」「生活感ないと…」。ロマンポルノに詳しい石飛徳樹編集委員に、色々と疑問をぶつけちゃいました。(構成 朝日新聞大阪本社生活文化部・伊藤恵里奈)

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実際には「している」?

 まず、映画のあらすじです。

 高介(永岡佑)は都会を避けて、過去から逃げるように山小屋で暮らしている。ある日、高介の前に、生命力と野性味あふれる魅力を放つ謎の女・汐里(間宮夕貴)があらわれる。数々の男たちと奔放に関係を結ぶ汐里の欲望の渦に、高介も次第に巻き込まれていく。

「風に濡れた女」の冒頭。港にたたずんでいた高介の前に、自転車に乗った汐里があらわれて、そのまま海に突っ込んで濡れた体をさらけだす。
「風に濡れた女」の冒頭。港にたたずんでいた高介の前に、自転車に乗った汐里があらわれて、そのまま海に突っ込んで濡れた体をさらけだす。 出典: (C)2016日活

 

ひかり

質問なんですが、これは実際には「している」のですか? AVとかって、実際にヤっていると聞くのですが……。

 

4人

そうそう、すごく気になった~。

 

石飛編集委員

いい質問ですね。ロマンポルノはしていませんっ(きっぱり)。これは演技です。

 

ひかり

よかったです~。やっぱり現実との線引きが欲しい。ロマンポルノって一つのブランドですよね。単なるエロじゃなくて、ストーリーがあって面白くって。実際にしているのと、していないのと大きな違いですよね。

 

リカ

もし本当にしていたら……。上映後の舞台あいさつがなんだか生々しく思えますよね。

 

石飛編集委員

女優も男優も、アソコを隠すために「前張り」をするんですよ。すごい蒸れるし、痛いし、大変らしいですね。

 

4人

へえ~。
上映後、なごやかな雰囲気の中でおこなわれたトークイベント
上映後、なごやかな雰囲気の中でおこなわれたトークイベント 出典: 朝日新聞

「濡れ場までの流れ、みていて楽しい」

 

石飛編集委員

AVと違って、さっきみた映画にはボカシがないでしょう?

 

4人

うんうん。

 

ユリ

私は映画の濡れ場が大好きなんです。濡れ場が出る映画をチェックしちゃいます。

 

石飛編集委員

濡れ場で印象に残っている映画は?

 

ユリ

印象に残っている濡れ場ですか……

 

4人

(笑)

 

ユリ

「ストロベリー・ショートケイクス」(2006年、矢崎仁司監督)ですかね。  安藤政信さんと中村優子さんが切ない絡みをするんです。それが忘れられなくて。女優さんが脱ぐのをみるのが好きなんです。その心意気に感動しちゃいます。だけど濡れ場にもっていくまでの流れも、みていて楽しいです。

 

アヤカ

女性用のAVって、流れを大事にしていますよね。

ボカシを出さない工夫

 

石飛編集委員

日活ロマンポルノでは、そういう濡れ場のシーンで、どうやってボカシを出さないようにするか、すごく工夫しています。その不自由な中から、変わった独特なショットが生まれてくるのが見どころに一つなんです。

 

リカ

前張りはみせているのですか?

 

石飛編集委員

前張りで隠しているのが分からないようにしています。前に壺や花瓶を置いたりとか……。よくみると不自然な設定がありますよ。

 

リカ

その視点で探してみても、面白いですよね。
「風に濡れた女」の一場面から、「やったらあんたの負けだから」と高介を挑発しながら誘惑する汐里
「風に濡れた女」の一場面から、「やったらあんたの負けだから」と高介を挑発しながら誘惑する汐里 出典: (C)2016日活

実際、ムラムラした?

 

アヤカ

「風に濡れた女」をみて、ムラムラしましたか?

 

ひかり

この作品は、設定的にはそんなに好みではなかったかな。私にとっては、設定が大事なんです。たとえば「お父さんが息子の嫁とヤル」的な。

 

ユリ

すがすがしかったです。私は切ない濡れ場が好きなんですが、今回の欲と欲のぶつかりあうような激しい絡み場面も、気持ちよくみられました。私はおっぱいが大きい女優さんが好きなんです。自分の願望ですかね。女優さんの胸が揺れるのが美しいなって思いながらみていました。

 

ヒカリ

裸になった女優さんが3人いましたよね。胸が大きい人と小さい人がいましたよね。

 

リカ

3人目の女優さんは、胸がペッタンコでしたよね。

 

ヒカリ

私は女性向けAVをみるとき、胸が小さい女性を応援したくなるんですよ。だから3人目の女性が結構好きです。胸の小さい女性観客を、配慮した設定ではないでしょうが(笑)。
3人目の女優さんこと、初々しいメガネ女子・夕子(中谷仁美)
3人目の女優さんこと、初々しいメガネ女子・夕子(中谷仁美) 出典: (C)2016日活

「プチおっぱいをみると応援したくなる」

 

アヤカ

この映画で一番興奮したのは、3人目のプチおっぱいの女の子が、男の目線がないのにあえいでいるシーン。

 

石飛編集委員

ほお。

 

リカ

え、私的には全然。逆にイラッときたけど。

 

ひかり

プチおっぱいの人は、声が可愛かった。自分もあまり胸がないので、プチおっぱいをみると応援したくなる。

 

ユリ

ポスターにもなっていた場面がよかったです。トマトを交互に食べながら、ヤっているシーンが大好き。ストーリーも大事だけど、ただ激しくぶつかりあう中で、気持ちが伝わっていくところもよかった。

 

あやか

この映画自体が、すごく動物的な話ですよね。ワゴンや小屋の中でヤッっているのを、外からみると大きく揺れているのが漫画みたいで面白かったです。ワゴンの中に男を連れ込んでヤッっている汐里を、順番待ちしている男性たちの姿も笑えました。

 

リカ

何なのこれ、って思いましたよ。

 

ひかり

女性優位のストーリーで、みていて気持ちよかったですね。

 

石飛編集委員

完全にそうですよね。

 

ひかり

女性向けのAVは、男性が優しくリードしてくれるっていうのが多い。それとはまた違う。なんか小池都知事みたいな力強い感じで。

 

4人

(爆笑)
「風に濡れた女」の後半で登場する高介の過去の女・響子(鈴木美智子)も、かなりぶっ飛んでいます
「風に濡れた女」の後半で登場する高介の過去の女・響子(鈴木美智子)も、かなりぶっ飛んでいます 出典: (C)2016日活

いかにも男性が作った映画?

 

アヤカ

女性が頑張っている物語って好きですか?

 

ユリ

はい、そうなりたいという憧れの方が強いかもしれないけど。

 

アヤカ

私は物足りないなあ。

 

ひかり

優しくリードされるだけでは、物足りない?

 

ユリ

刺激が足りない?

 

アヤカ

この映画だって、汐里は自分から男を襲っていくくせに、男に反撃されると「ヤメテ」って言うし。一体、何がしたいんだよって思いますよね。

 

リカ

あんなめんどくさい女は嫌ですね。自分で誘ったくせにね。汐里はあくまで自分のタイミングで、したかったんですかね。

 

ひかり

「風に濡れた女」に出てくるような男って、世の中にたくさんいると思うんです。だけど女性たちは、「こういう女性がいたらいいな」っていう男の願望じゃないかなと思いました。そう考えたら、いかにも男性が作った映画ですよね。

「SMっぽく縛られたい」妄想

 

石飛編集委員

塩田監督は「現実にこういう女がいたら嫌だけど、映画の中では好きだ」と話していましたね。みなさんは個人的にどんなロマンポルノをみたいですか?

 

ユリ

私の妄想の中の願望なんですけど、SMっぽく縛られたいです。
 

 

ひかり

私、実は一回だけ縛られて吊られたことがあります。

 

4人

おお~っ

 

ひかり

もちろん服を着たままですよ。

生活感がないと物足りない

 

アヤカ

私はこの作品には現代の生活感がなかったのが、物足りなかったです。野性的な女性の話だったからかな。主人公の汐里さんに、「あなたはその服をどこから買ってきたのか」とか、突っこみたくなりました。

 

リカ

今回はファンタジーですよね。最後も?だったし。

 

アヤカ

ロマンポルノではないですが、阿部定事件を映画化した「愛のコリーダ」(大島渚監督)のような、「あなたを自分の物にしたい」っていう女性の強い気持ちをみてみたない。

 

石飛編集委員

「愛のコリーダ」は、若き頃の藤竜也さんが、とてもかっこよかったですよね。今回みたロマンポルノに出てきた男優さんたちは、どうでしたか?

 

ひかり

昭和臭くて、作品に合っていましたね。スタイルもいいし。

 

ユリ

女優さんが引き立っていましたね。

 

石飛編集委員

顔とか大したことがないのに、モテまくる男っているじゃないですか。今回もそうですが、日活ロマンポルノにはそういう男たちがたくさん出ています。
「世界の中心で、愛をさけぶ」の行定勲監督によるロマンポルノ「ジムノペディに乱れる」。主演の板尾創路が扮する映画監督は、なぜか色々な女性からモテまくる。まさに男の願望丸出しの作品
「世界の中心で、愛をさけぶ」の行定勲監督によるロマンポルノ「ジムノペディに乱れる」。主演の板尾創路が扮する映画監督は、なぜか色々な女性からモテまくる。まさに男の願望丸出しの作品 出典: (C)2016日活

 次回は、実際に映画館でロマンポルノをみた感想を話し合います。

     ◇

 「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」は東京・新宿武蔵野館などで上映中。大阪・シネ・リーブル梅田など各地で順次公開。

【後編】「日活ロマンポルノ」女性ファン増やすには? 生々しさから共感へ
 

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