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IT・科学

アップルが、ドドーンと奨学金! 日本から唯一渡米した近大生の実力

自作のiPhoneアプリが評価され、アップルの奨学制度で今年、日本から唯一渡米した大学生がいます。近畿大学経営学部3年の山田良治さん(21)。じつはプログラミングも英会話も「大学1年から始めて、完全に独学」。「マグロ大学」の近大だけに、どんなイキのいい若者なのか訪ねました。

開発したiPhoneアプリをみせる山田良治さん。独立を視野に「今は簿記も勉強中です」=東大阪市の近畿大学、西村悠輔撮影
開発したiPhoneアプリをみせる山田良治さん。独立を視野に「今は簿記も勉強中です」=東大阪市の近畿大学、西村悠輔撮影

目次

 自作のiPhoneアプリが評価され、アップルの奨学制度で今年、日本から唯一渡米した大学生がいます。近畿大学経営学部3年の山田良治〈よしはる〉さん(21)。6月に渡米しましたが、じつはプログラミングも英会話も「大学1年から始めて、完全に独学」。「マグロ大学」をうたう近大だけに、どんなイキのいい若者なのか、東大阪市のキャンパスを訪ねました。

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アップルの奨学生枠で渡米した近畿大学3年の山田良治さん。WWDC2016の会場前で=6月、米サンフランシスコ
アップルの奨学生枠で渡米した近畿大学3年の山田良治さん。WWDC2016の会場前で=6月、米サンフランシスコ 出典: 山田さんのフェイスブックから

 山田さんが参加したのは、アップルが新製品や技術を発表する場でも知られる開発者会議「WWDC2016(World Wide Developers Conference)」です。その時期、アップルが世界中の学生たちを招く「スカラシップ」に今年、日本人としてただ一人参加しました。

 米アップルは毎年6月に、年次開発者会議「WWDC」を開催しています。今年もサンフランシスコで6月13日(現地時間)からスタートしました(写真1)。基調講演については、例年使われていたモスコーンセンタ…

朝日新聞デジタルの写真特集「WWDC2016レポート」です。

「日本語禁止」の英語村で特訓

英語村のスタッフと話す山田さん。開放的なスペースは、大勢の学生らで賑わう=7月5日、東大阪市の近畿大学、西村悠輔撮影
英語村のスタッフと話す山田さん。開放的なスペースは、大勢の学生らで賑わう=7月5日、東大阪市の近畿大学、西村悠輔撮影

 取材当日、山田さんはキャンパス内の英語村(E3=イー・キューブ)での授業を終えたところでした。「日本語禁止」の学習エリアで、カフェのメニューやマンガ・雑誌、すべてが英語。渡米が決まってからは、ここに連日通い詰め、猛特訓したそうです。

 スタッフのマシュー・ソーントンさんは「彼はとてもポジティブ。モチベーションが高く、ほかの学生とは一味違う」と評価します。山田さんは授業以外の時間にも、ネット電話のスカイプで個人指導をお願いしたといいます。

(左)英語の漫画がずらりと並ぶ棚(右)カフェのメニューも英語表記=近畿大学の英語村
(左)英語の漫画がずらりと並ぶ棚(右)カフェのメニューも英語表記=近畿大学の英語村

 全国各地の大学に「英語村」が次々と誕生している。大学のグローバル化が叫ばれるなか、国内にいながら「使える英語」を身につけさせる狙いだ。学生が運営したり、多国籍のスタッフを集めたりと、その形態は様々だ…

アップルの重役と記念写真

 6月11~19日の日程で渡米し、WWDCの会場やアップル本社があるサンフランシスコに滞在したという山田さん。その体験を「毎日、アプリやプログラミングのことだけを考えていればいい、最高の環境でした」と熱く語ります。

 アップルによると、世界から募った今年のスカラシップ枠は350人。なかには何と9歳の女の子もいました。このうち、旅費支援枠の書類選考に通ったのは山田さんら125人。参加料15万円を含め、渡航・滞在費およそ70万円はアップルが負担し、「全部タダ!」でした。

 現地では仲間と交流したり、プロの開発者から指導を受けたりしました。山田さんのツイッターには、米アップルのクレイグ・フェデリギ上級副社長(ソフトウェアエンジニアリング担当)と笑顔で並んだ写真が投稿されています。


高校時代は数学赤点でも…

 プログラミングを始めたきっかけは、高校1年の頃から思っていた「起業したい」という動機から。でもお金がない、じゃあアプリを作って売ろう、そう思い立ち、大学1年の5月ごろ、iPhoneのアプリ開発に不可欠なC言語から学び始めたといいます。愛機は「当時、12回の学生ローンで買った」という11インチのMacBook Airです。

 高校では理数系でも、じつは「数学は赤点でした」という山田さん。大学1年から1日8~12時間、外国語を覚えるつもりで独学に没頭。勉強法は「アマゾンで評価の高い本を見つけては読み、ひたすらプログラムコードをまねし続ける」という自己流だったそうです。やがてC言語より上位のObjective-Cをマスターし、今ではSwiftまで使いこなしています。

 何とかアプリ販売までこぎつけたものの、伸び悩み、引きこもりがちになっていた今年の春。外に出ようと思い始めた時、スカラシップの募集を知りました。「これは運命じゃないか」と、一気に書類をまとめて提出し、合否の連絡を待たずにパスポート更新に行ったとか。

山田さんのMacBook Air。左腕にはしっかりApple Watch。「親の代からMacユーザー」という
山田さんのMacBook Air。左腕にはしっかりApple Watch。「親の代からMacユーザー」という

まず麻雀、次に学業アプリ開発

 最初に手がけたiPhoneアプリは、麻雀(マージャン)の点数計算でした。麻雀は以前からの趣味で、面倒な計算をスマホでパパッとできたら……と思いついたそうです。「最初からあまり難しいアプリにいかず、まずは簡単な計算機から遊び感覚で作ってみました」と話します。現在1000ダウンロードを超え、無料提供中です。

最初に開発したアプリ「麻雀点数自動計算機」
最初に開発したアプリ「麻雀点数自動計算機」 出典:Appstore

 次につくったのは、大学生活の「学業管理」アプリ。こちらは大学生が1週間の出欠数や遅刻回数を把握できるように、と考えたそうです。あと何回欠席すると単位取得がアウト……と表示する機能や、時間割・宿題の記録ができます。今回、アップル公式の開発者に助言をもらい、近く改良版を出す予定。こちらは120円の有料アプリです。

授業の欠席数や単位管理ができるアプリ「School Life」
授業の欠席数や単位管理ができるアプリ「School Life」 出典:Appstore

 渡米の成果について、山田さんは「数日前、今のアプリで10万ダウンロード狙えるんちゃうか、というアイデアをひらめきました。ただ、これまで趣味や学校という身近なことだけテーマにしてきたのは、ぼくの弱点の気がしています。より考えが深まったので、今後はゼロから全く新しいアプリも作ってみたい」と話します。

高3の夏休み「孫さんに会いたい」

「iPhone3G」を契約した人との記念撮影に応じるソフトバンクモバイルの孫正義社長=2008年7月11日、渋谷区
「iPhone3G」を契約した人との記念撮影に応じるソフトバンクモバイルの孫正義社長=2008年7月11日、渋谷区 出典: 朝日新聞

 山田さん、元々こんなにイキのいい性格だったんでしょうか。幼い頃から暴れん坊ではあったそうですが、「正直、起業家をめざしていた当初はいちびっていた」と打ち明けます。いちびるは関西弁で「調子にのる」という意味です。

 ただ、行動力は以前からずば抜けているようです。高校3年の夏休みに「起業したい」と言うと、母親が「東京で孫正義さんに会ってきたら」と旅費をだしてくれ、ソフトバンク本社前で直訴したという逸話を明かします。

 「やっぱり警備の人に止められて。手紙を置いたりして1週間粘ったんですが、結局、孫さんには会えませんでした。でも、何でもやったら出来るんちゃうか、という手応えはつかめました」

スカラシップをめざす人へ

 山田さんは帰国後、自身の「近畿大学生の全力投球ブログ」にWWDCをめざす学生へのアドバイスを書き記しました。同じような立場で挑戦したい人には、とても参考になりそうです。今月、大学の運営サイト「Kindai Picks」でも渡米体験を詳しくリポートしています。

1.「英語の先生に助けてもらうこと」
僕の場合はネイティブの先生にSkypeのIDを聞いて指導してもらいました。できれば連絡先を聞いておいてネットでスムーズに教えていただける状態を作っておくのが好ましいです。

2.「指導者の連絡先」「指導者の推薦状」
これは一人の先生・教授に頼むのが良いです。複数の人に頼むと別々の手間が発生するので、懇意にしている方に頼みましょう。推薦状も英語で書く必要があるので、そのまま英語の先生の手を借りるのも良いと思います

3.「スケジュール感」
先生・教授に頼むことは自分でどうにも出来ないことなので、できる限り早めにお願いすることが大事です。それと「土日の存在」を忘れてはいけません。先生方もお休みですし、学校も閉まっていることがあります。10日間のなかで「学校でしかできないこと」と「自分で準備できること」を分けて考えて、平日と土日の予定をしっかり立てることが重要となります。
山田さんの個人ブログ「近畿大学生の全力投球ブログ」

毎年、6月にサンフランシスコで開催されるApple主催のWWDC。このイベントに日本人でただ一人スカラシップ枠にて参加した近畿大学経営学部3年の山田良治さんが、その驚きの体験の数々をレポートします。

アップル、人材育成に力

WWDC2016でアップルのティム・クックCEOを囲むスカラシップの学生ら=アップル提供
WWDC2016でアップルのティム・クックCEOを囲むスカラシップの学生ら=アップル提供 出典:Apple:hello--from-wwdc16

 アップルは昨年からスカラシップの枠を200人から350人に増やすなど、将来の人材育成に力を入れています。アップルの広報は「現地では才能ある開発者に出会えるチャンスがあります。英語が苦手だからなどと諦めずに、ぜひ前向きにチャレンジしてほしい」と話しています。

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