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ド派手コーデの議員時代 千葉景子さん「嫌々だったのが楽しく」

 女性政治家の服を見ると、普通の人にはなかなか着られないような派手な色が目立ちます。親近感を持ってもらうには逆効果とも思える服を、なぜあえて身にまとうのでしょうか。弁護士から政治家になった千葉景子・元法務相に聞いてみました。

議員時代の千葉景子さん。左は2009年10月9日、中央は2010年6月8日、右は2010年8月27日撮影
議員時代の千葉景子さん。左は2009年10月9日、中央は2010年6月8日、右は2010年8月27日撮影 出典: 朝日新聞

目次

 女性政治家の服を見ると、普通の人にはなかなか着られないような派手な色が目立ちます。親近感を持ってもらうには逆効果とも思える服を、なぜあえて身にまとうのでしょうか。弁護士から政治家になった千葉景子・元法務相に聞いてみました。(朝日新聞地域報道部記者・田中聡子)

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緑、ピンク、オレンジ…もう着られない

 緑、水色、ピンク、オレンジと、現役時代はさまざまな原色のジャケットやスーツを着ていた千葉さん。弁護士に戻ったいま、横浜市内の事務所を訪ねると、ボーダーのアンサンブルに白いパンツ、ピンクのスカーフという、打って変わったカジュアルな姿で出迎えてくれました。

 「議員の時の服? 困っちゃって。だっていまあんな服を着たら、あの人どうしたの?って思われちゃうから」。もう着ることはないだろう、と思いつつ、クローゼットの奥で数着眠っているそうです。

 引退した女性議員たちが集まった時に聞いてみると、「郷里に帰るときに処分しちゃった」「とてもじゃないけど……」と、みなさん「もう着られない」という事情は同じだったそうです。

議員時代とは変わり、カジュアルなスタイルの千葉景子さん
議員時代とは変わり、カジュアルなスタイルの千葉景子さん

まずは目立て!「交通信号」色のススメ

 選挙に出る前の千葉さんは、ラフなパンツスタイルばかりでした。ところが、1986年の参院選候補に選ばれると、周りの議員から「もっと目立ってくれないと困るよ」。

 ファッションアドバイザーとなった先輩議員の妻から勧められたのは、原色の派手な服ばかりでした。

 「なんでこんな『交通信号』みたいな色の服を着ないといけないの、って驚いちゃってね。でも、選挙に出るには、周りの言うこともきかないといけないし、まずは目立って知ってもらわないといけないっていうのは確かだから、半分は納得したの」

議員時代の千葉景子さん。左と中央は2009年9月16日、右は同年10月23日に撮影
議員時代の千葉景子さん。左と中央は2009年9月16日、右は同年10月23日に撮影 出典: 朝日新聞

 いやいやながら着始めた派手な服。しかも、そこそこ値の張るものばかりで、着続けないわけにもいきません。ところが、違和感だけでなく、次第に楽しくもなっていきます。

 「自分も知らなかった発見があってね。ピンクとか黄色のジャケットとか、絶対に手にすることがなかったような服でも、着てみたら『あら、意外と私、そんなに似合わないわけでもないかしら』って」

 「汚れが目立つから」と唯一避けた白以外は、果敢に挑戦していくようになりました。

法務相時代の記者会見で着ていたのは、ポップなチェック柄=2010年8月27日、杉本康弘撮影
法務相時代の記者会見で着ていたのは、ポップなチェック柄=2010年8月27日、杉本康弘撮影 出典: 朝日新聞

えっ?まさかのスーツ「かぶり」

 一方で、バブルから不景気へ、世の中のファッションの流行は変化し、原色スーツの販売店はどんどん少なくなっていきました。

 「買う店がない」ということが、女性議員の共通の悩みに。限られた2、3軒にニーズが集中し、他の女性議員とかぶってしまったこともあるそうです。

 もう一つの悩みの種は、国会外での服装でした。政治家は議会だけでなく、地元の祭りや運動会、仏事などにも足を運びます。どこでも派手なスーツが受け入れられるわけではありません。

 「議会のあと海辺に直行なんていうこともあって。着替える時間がないときは、ジャケットだけ変えればなんとかなるように組み合わせを考えましたよ。場違いになるのは、ちょっとね」

落選した時に着ていたのは、水色のスーツだった=2010年7月12日、高橋雄大撮影
落選した時に着ていたのは、水色のスーツだった=2010年7月12日、高橋雄大撮影 出典: 朝日新聞

死刑執行 会見で着た色は

 千葉さんが法務相時代に注目されたのは、2010年7月の死刑執行です。かつて死刑廃止議員連盟のメンバーだったことや、執行時はすでに落選していたことなどで批判を浴びながらも、その後刑場を公開するなど、死刑制度の是非の議論に一石を投じました。

 執行後の記者会見に現れた千葉さんは、グレーのパンツスーツでした。どんな気持ちだったのか、言葉少なく語ってくれました。
 
「あのときはいろんな意味で考え、悩みました。亡くなっていく方たちに、失礼にならないような服にしなければいけない。普通の議会に臨む時とは、全く気持ちが違いました」

グレーのスーツで臨んだ、死刑執行の発表会見=2010年7月28日、西畑志朗撮影
グレーのスーツで臨んだ、死刑執行の発表会見=2010年7月28日、西畑志朗撮影 出典: 朝日新聞

「ファッションも政治も、自分の道を」

 24年間の議員生活で、千葉さん自身は服装への批判を受けた体験はほとんどなく、ファッションを楽しんでいたそうです。

 ですが、女性議員の中には、「服装のことばかりとやかく言われる」「派手でも地味でも文句ばかり」と悩む人もいます。

 女性というだけで、容姿やファッションばかり注目してしまいがちな風潮は、女性議員にとっては武器でもあり、ハードルでもあります。同じような「職場」はほかにもありそうです。

黒やグレーのスーツが圧倒的に多い議場で、ピンクや黄色の女性議員が目立っている=2016年5月20日、飯塚晋一撮影
黒やグレーのスーツが圧倒的に多い議場で、ピンクや黄色の女性議員が目立っている=2016年5月20日、飯塚晋一撮影 出典: 朝日新聞

 そこで、千葉さんから女性議員へのエールです。「政治家はきれいに、明るく、目立って人を引きつけるのも大事な力。遠慮なんかせずに、ファッションも政治家としても、自分の道を進んでいって」

 まだまだ女性議員が少なく、男性議員の黒っぽいスーツが集まっている国会が、いつかカラフルに彩られる日を心待ちにしているそうです。

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