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ネットの話題

大赤字…でも売れたらアカン!おもしろ蛇口にこだわる大阪企業の執念

蛇口がやかん、上下逆…。大阪市の水道用品メーカーがユニークな蛇口を作り続けています。 その理由を聞きました。

カクダイが製造している蛇口。商品名は「魔法の水」
カクダイが製造している蛇口。商品名は「魔法の水」 出典: 同社提供

目次

 大阪市の水道用品メーカーがユニークな蛇口を作り続けています。 ハンドル部分がやかんだったり、手裏剣だったり…。商品名も「いや~ん」「ぺらっぺら」などと、とにかくゆるいのです。実はこうしたユニーク蛇口、事業としては「大赤字」。なのに、一定数売れた商品は「生産中止」にしています。なぜなのでしょう?その理由には崇高な「ものづくりの精神」がありました。

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ギャグ全開の蛇口カタログ

 大阪市西区に本社がある水道用品・水栓金具メーカー「カクダイ」。ここ最近、公式ホームページ上で公開しているカタログが「とにかく面白い」とインターネット上で話題を呼んでいます。


誰や!こんな蛇口つくったん?

 評判なのは「Da Reya アイキャッチ水栓」のシリーズ。「誰や!こんな蛇口つくったん?」という大阪弁から由来するものですが、なるほど確かにそうつぶやきたくなる物ばかりです。

 商品名「誰や!パイプ上向けにしたん?」は、蛇口が上下逆さま。パイプ部分をひねると、ハンドルから水が出るのです。

商品名「誰や!パイプ上向けにしたん?」
商品名「誰や!パイプ上向けにしたん?」 出典: カクダイ提供

 「いや~ん」は蛇口の上半分を回転させて水を出す仕組み。回転させるとそこには「いや~ん」の文字が登場するのです……。

商品名「いや~ん」
商品名「いや~ん」 出典: 同社提供

 ほかにも「魔法の水」という商品名は蛇口全体が「やかん」に。2016年度の新商品「手裏剣蛇口」はその名の通り、果たし状に突き刺さった手裏剣が蛇口になっています。とにかくツッコミどころ満載の蛇口ばかりなのです。

2016年度の新商品「手裏剣蛇口」
2016年度の新商品「手裏剣蛇口」 出典: 同社提供

広報担当者が語る開発コンセプト

 どういう狙いでこんな蛇口を製造しているのか、カクダイの広報担当者を取材しました。

 最初に尋ねたのは「Da Reya」の開発コンセプトについて。担当者はこう答えます。

 「今まで、当たり前の形をしていて、単なる水の開け閉めの機能を持った器具である水栓金具に対して、子どもさんにまず、興味を持ってもらうということ。これが開発のメインテーマでした。子どもさんが驚いて、お家の方に駆け足で、笑顔で、大声で報告する。こんな情景を目指してデザインいたしました」

商品名「誰や!メタボにしたん?」
商品名「誰や!メタボにしたん?」 出典: 同社提供

 「子ども」を念頭に置いたのは、このシリーズを目にした子が、将来世界に通用するデザイナーやエンジニアになってほしいとの願いもあったからだそうです。

 「『蛇口の中の構造はどうなっているんだろうね』『自分なら、こんな蛇口をつくってみたいな』『こんなところから水が出たら、おもしろいのに』。子供さんたちが、こんな風に考えてくれて、将来、物づくりに携わるきっかけになってもらいたいとも願っております。
 そして日本の水、水道インフラの素晴らしさに気づいてもらいたいのです。どうして日本人は譲り合って、列を作って待つことができるのか。その理由の中の一つに『水の豊かさ』があるのかもしれません」

実は大赤字、でも製造やめない

 「Da Reya」は2012年1月に販売スタート。この4年間で、シリーズの全モデル累計で約7千個を販売しました。しかし、開発のために費やした金型費用、製造のための設備部品の費用、人件費は膨大なもので、「収益事業としては大赤字です」(同社)。

 それでも製造し続けるのはなぜか――。担当者はこう言います。

 「作った経験がない形に挑戦することで新たな技術、イノベーションを得ることができ、トータル評価では、会社業績にも貢献できたと考えています」

 「近年、コストダウンと不良撲滅だけが、生産工場の目標とされる風潮の中で『おもしろいものを造ろう』という使命は、当社で働く者にも笑顔を取り戻してくれました。その結果、工場全体の不良率も下がり、コストダウンもできたのです」

売れたら生産中止

 さらに驚くのは、同社の商品開発への向き合い方。担当者はこんなことを明かします。

 「収益が出るほど売れた時点で『おもしろくない蛇口』になりますので、一定数売れたら生産中止とし、新型を作ります。つまり収益は永遠に赤字です。でも、不採算事業を整理して業績を確保するよりも、おもしろくした方が社会全体でハッピーになれるということを、我々は学びました。おこがましくも、これをお笑いの街、大阪から世界に発信したいと思っていますので、インターネット上で話題にしていただけることは、とてもありがたいと感じています」


 次から次へと登場するカクダイのユニークな蛇口。そこには採算を度外視してでも「面白いものを作り続ける」というものづくり企業の執念が隠れていました。

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