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沖ノ島、女人禁制・裸でみそぎ 本気で守られている「しきたり」

7月28日、福岡県宗像市の沖ノ島が世界文化遺産登録の国内候補に選ばれました。「神の島」と呼ばれる島には、今も、独特なしきたりが残っています。

沖ノ島で大海原に向かって手を合わせる神職たち=2010年9月3日
沖ノ島で大海原に向かって手を合わせる神職たち=2010年9月3日 出典: 朝日新聞

目次

 7月28日、福岡県宗像市の沖ノ島が世界文化遺産登録の国内候補に選ばれました。「神の島」と呼ばれる島には、今も、独特なしきたりが残っています。島全体がご神体とされる沖ノ島。千数百年前からの祭祀(さいし)遺跡があり「海の正倉院」とも呼ばれています。

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周囲4キロ、絶海の孤島

 沖ノ島は、福岡県宗像市の沖合約60キロの玄界灘に浮かぶ周囲約4キロの孤島です。港を除く全島が宗像大社沖津宮の境内です。4世紀後半~10世紀初頭の大和王権による祭祀遺跡が確認されています。遺物は鏡や玉類、武器、馬具、装身具など8万点(国宝)に及びます。朝鮮半島製の金の指輪や中国製の金銅製竜頭なども発見されています。

 2017年の世界文化遺産の登録を目指す候補として、国内から「『神宿る島』宗像(むなかた)・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)を推薦することを7月28日、文化審議会が決めました。政府は9月末までに暫定版の推薦書をユネスコ(国連教育科学文化機関)に提出し、閣議了解を経て、来年2月1日までに正式な推薦書を出します。

沖ノ島=2008年9月25日
沖ノ島=2008年9月25日 出典: 朝日新聞
福岡県宗像市の沖合約60キロの玄界灘に浮かぶ周囲約4キロの孤島。50~70年代の3回の調査で、4世紀後半~10世紀初頭の大和王権による祭祀遺跡を確認。遺物は鏡や玉類、武器、馬具、装身具など8万点(国宝)に及び、朝鮮半島製の金の指輪や中国製の金銅製竜頭など豊かな国際色から「海の正倉院」とも呼ばれている。国指定史跡。港を除く全島が宗像大社沖津宮の境内で、いまも女人禁制など宗教的禁忌を守る。原始林は亜熱帯植物の北限地とされ、オオミズナギドリの繁殖地。今年9月、世界遺産の国内暫定リストに記載された。
2008年12月29日:「神の島」大戦の記憶 原始林に眠る要塞 福岡・沖ノ島:朝日新聞紙面から

島での出来事漏らしてはいけない

 神域である島に入るにはしきたりがあります。神職がただ一人勤務する社務所横の浜で衣服を脱ぎ、首まで海に入って禊(みそ)ぎをしなければなりません。冬でも、このしきたりは守られています。

 また島は女人禁制で、女性が入ることはできません。島内で見聞きしたことを漏らしてはならない「お言わず様」というしきたりもあり、一木一草も持ち帰ることは許されません。

沖ノ島の宗像大社沖津宮=2007年8月8日
沖ノ島の宗像大社沖津宮=2007年8月8日 出典: 朝日新聞
神域である島に入るにはしきたりがある。神職がただ一人勤務する社務所横の浜で衣服を脱ぎ、首まで海に入って禊(みそ)ぎをする。風はなかったが、冷たい水が肌を刺す。
2008年12月29日:「神の島」大戦の記憶 原始林に眠る要塞 福岡・沖ノ島:朝日新聞紙面から
島内で見聞きしたことを漏らしてはならない「お言わず様」であり、一木一草も持ち帰ってはならない島。そして、女人禁制。こんなタブーがあるからこそ、島の神聖性は守られてきた。が、世界遺産は人類全体の財産として、すべての人々に開け放たれているのが原則。数々の禁忌との摩擦が心配される。
2009年4月10日:神の地、世界遺産へ試練 知名度・女人禁制 沖ノ島+古墳群、暫定リストに:朝日新聞紙面から

神職1人が交代で守る

 島には、宗像大社から神職が交代でやってきて1人で島を守ります。絶海の孤島での時間をどう過ごすのか。ベテラン神職の1人は「最初は時間の使い方がわからず、参道の掃除ばかりしてた」と話します。「携帯電話も入らないし、『むこう』ではできないまとまった仕事ができる」。ひちりきなどの楽器を練習する人もいるそうです。

 漁師が魚を献上してくることもあります。船に乗り込み、一緒に夕食を食べることも。漁師にとっても島は神聖な存在です。「島は神様そのもの」「魚の小骨がのどに刺さっても島の水を飲むと取れる」と信じられており、信仰は暮らしに根付いています。

沖ノ島の沖津宮の参道を上がる神職=2010年6月2日
沖ノ島の沖津宮の参道を上がる神職=2010年6月2日 出典: 朝日新聞
島での時間をどう過ごすか。18年間に約50回、島勤めをした杉山さんは「最初は時間の使い方がわからず、参道の掃除ばかりしてた」と笑う。最近は読書が多い。「携帯電話も入らないし、『むこう』ではできないまとまった仕事ができる」。ひちりきなどの楽器を練習する同僚もいるという。
2002年8月9日:海の正倉院 祈り続く絶海の神域 福岡県沖ノ島(島へ:3):朝日新聞紙面から
隣の島の漁師が、タイなどを献上しに来た。夕食に誘われた杉山さんは、一升瓶をぶら下げて船に乗り込み「お神酒です」。漁師たちは「島は神様そのもの」「魚の小骨がのどに刺さっても島の水を飲むと取れる」という。信仰は今も暮らしに根付いている。夜も更けた。杉山さんは社務所に戻る。日露戦争のころと同じ形の日誌に、筆で記すと、一日が終わる。
2002年8月9日:海の正倉院 祈り続く絶海の神域 福岡県沖ノ島(島へ:3):朝日新聞紙面から

藤原新也さん「禁忌の姿が残っている」

 北九州出身の写真家・作家、藤原新也さんは、2013年に「神の島 沖ノ島」(小学館)を出版しています。

 藤原さんは、出版時のインタビューで、沖ノ島について次のように語っています。
 
 「原子の光も自然の光。光そのものに罪はない。だが、それを人間が制御できると思い込んだ結果が今回の原発事故だった。沖ノ島には触れてはいけない禁忌の姿が残っている」

 また世界文化遺産を巡っては「多くの人が知らない島の存在を知ってもらい、古代から続く考え方を子孫に伝えるのに役立つのであれば、世界遺産登録も悪くない」と述べました。

 一方で、「ランク付けする世界遺産って西欧主導で作られたものでしょう? 西欧の目で評価されれば、自由平等や民主主義といった考えが入ってくる。女人禁制はおかしい、という意見も出てくるだろう」と指摘。

 その上で「そういった場面で必要となるのが、日本人のDNAが培った自然への敬い、沖ノ島を守ってきた禁忌を貫く矜持(きょうじ)だ。いまは登録に一生懸命だが、へたしたらそこが戦いになるぞとの覚悟を持ってやらないと」と強調しています。

藤原新也さん=2006年9月26日
藤原新也さん=2006年9月26日 出典: 朝日新聞
先月、宗像大社に出版を報告し奉納した書の1枚には「残耿(ざんこう)」と揮毫(きごう)した。上陸した時に「耿々と聞こえるような光」を感じたという。「原子の光も自然の光。光そのものに罪はない。だが、それを人間が制御できると思い込んだ結果が今回の原発事故だった。沖ノ島には触れてはいけない禁忌の姿が残っている」
2013年7月10日:沖ノ島、神秘の記録 藤原新也と安部龍太郎、写真と紀行文:朝日新聞紙面から
沖ノ島は独特のしきたりが継承されている、世界でも数少ない島だ。「人間が干渉してはいけないものが世にあることを伝える象徴として非常に大事な島。多くの人が知らない島の存在を知ってもらい、古代から続く考え方を子孫に伝えるのに役立つのであれば、世界遺産登録も悪くない」
2014年6月10日:世界遺産登録、禁忌を貫く一助に 藤原新也さん、沖ノ島への思い語る:朝日新聞紙面から
一方で、「ランク付けする世界遺産って西欧主導で作られたものでしょう? 西欧の目で評価されれば、自由平等や民主主義といった考えが入ってくる。女人禁制はおかしい、という意見も出てくるだろう」と指摘。「そういった場面で必要となるのが、日本人のDNAが培った自然への敬い、沖ノ島を守ってきた禁忌を貫く矜持(きょうじ)だ。いまは登録に一生懸命だが、へたしたらそこが戦いになるぞとの覚悟を持ってやらないと」
2014年6月10日:世界遺産登録、禁忌を貫く一助に 藤原新也さん、沖ノ島への思い語る:朝日新聞紙面から

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