MENU CLOSE

お金と仕事

もう1つのマッサン 信州マルスウイスキー 竹鶴ノート元に世界的賞

信州に、もう1つのマッサンの物語がありました。竹鶴政孝を英国に送り出した、当時の上司、岩井喜一郎。通称「竹鶴ノート」を元に蒸留所を開き世界的な賞も獲得しています。

マルスウイスキーの「信州マルス蒸留所」には、竹鶴政孝ゆかりの蒸留機がある
マルスウイスキーの「信州マルス蒸留所」には、竹鶴政孝ゆかりの蒸留機がある 出典: 朝日新聞

目次

 信州に、もう1つのマッサンの物語がありました。マッサンのモデルとなった竹鶴政孝をスコットランド留学に送り出した、当時の会社の上司、岩井喜一郎(1883~1966)は、竹鶴から提出された通称「竹鶴ノート」を元に、ウイスキーの蒸留所を開設。蒸留所のウイスキーは2013年に世界的な賞を獲得するなど、国産ウイスキーの発展に貢献しています。

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

ドラマ「マッサン」好評のうちに幕

 NHK朝の連ドラ「マッサン」は、高い視聴率を維持したまま3月28日、感動の最終回に。玉山鉄二さんと、シャーロット・ケイト・フォックスさんが演じるマッサン夫婦の姿に多くの人が共感。ドラマ本編が好評だったことから、スピンオフの番組が作られることも決まっています。

「マッサン」から一転、ブロードウェーの「シカゴ」で主演するシャーロット・ケイト・フォックスさん=東京都狛江市、早坂元興撮影
「マッサン」から一転、ブロードウェーの「シカゴ」で主演するシャーロット・ケイト・フォックスさん=東京都狛江市、早坂元興撮影
ドラマ「マッサン」で竹鶴政孝の妻、リタがモデルのエリーを演じたシャーロット・ケイト・フォックスさん
ドラマ「マッサン」で竹鶴政孝の妻、リタがモデルのエリーを演じたシャーロット・ケイト・フォックスさん
「マッサン」は、初の外国人ヒロイン、シャーロット・ケイト・フォックス、玉山鉄二が演じる国際結婚した夫妻のウイスキー作りにかける情熱、絆を描き、視聴率は東西とも20%前後を堅持したまま。近年では放送終了後に、スピンオフ作品が制作されているが、前後編の2作が放送されるのは珍しい試み。
好調「マッサン」のスピンオフドラマ2作を発表 - ドラマ : 日刊スポーツ

「竹鶴ノート」元に蒸留所開設

 竹鶴は大阪高等工業学校(現大阪大学)を卒業後、大阪の摂津酒造へ入社。社命によりスコットランドへ渡ります。この時の上司が、岩井喜一郎でした。摂津酒造は、竹鶴の帰国後、ウイスキー事業から撤退したため、竹鶴は退社します。その後、寿屋(後のサントリー)に移り、国産ウイスキーの夢を実現。さらにウイスキーの理想郷を求め、北海道余市に蒸留所を開きます。

 岩井は、竹鶴からスコットランドでの経験をまとめた「竹鶴ノート」を受け取っていたと言われています。この「竹鶴ノート」を元に、岩井自身も1949年にウイスキー作りに取り組みます。1960年には、山梨でウイスキー蒸留工場設計と指導に携わりました。岩井の死後の1985年、長野県宮田村に「信州マルス蒸留所」が生まれ、現在に至ります。

マルスウイスキーのサイトに掲載されている、岩井喜一郎の歩み
マルスウイスキーのサイトに掲載されている、岩井喜一郎の歩み 出典:マルスウイスキー | 本坊酒造株式会社
広島県竹原市生まれのマッサンこと竹鶴政孝は、入社した摂津酒造の命で単身スコットランドで本格ウイスキー造りを習得する。だが帰国後に会社はウイスキーから撤退。やがて鳥井信治郎創業の寿屋(現サントリー)に入り、山崎工場の初代工場長に。その竹鶴の理想郷が余市だった。
2014年6月27日:(まち歩きのススメ)飲み物編 ニッカウヰスキー 余市に息づく琥珀色:朝日新聞紙面から

閉鎖の危機乗り越え、世界最高賞

 「信州マルス蒸留所」は、一時、閉鎖の危機にも直面しました。酒税制度が変わり、主力商品だった2級ウイスキーが2倍の値段になる一方で、輸入物が手頃な価格になり、国産品の需要は低迷しました。結果、1992年を最後に製造を休止しました。

 完全に撤退する案も出ましたが、ハイボールブームをきっかけに需要が増え、2011年3月、製造を再開しました。2013年には世界最高峰のウイスキー品評会「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)2013」で、「マルスモルテージ3プラス25 28年」が世界最高賞を受賞。国内の大手メーカーをはじめ、世界の名だたるウイスキーと競って勝ち取りました。

ウイスキーを持つ本坊酒造の本坊修社長(右)とトロフィーを持つ谷口健二常務=2013年4月1日、鹿児島市南栄3丁目
ウイスキーを持つ本坊酒造の本坊修社長(右)とトロフィーを持つ谷口健二常務=2013年4月1日、鹿児島市南栄3丁目
宮田村の樽(たる)の中で25年間、熟成したウイスキーが先月、ロンドンでの品評会で世界最高賞を受賞した。ウイスキーの需要低迷から19年も製造を休み、一時は部門の閉鎖も検討されたが、2年前に再開。根強いファンに加え、新たな愛好者が増えてくれればと、再開を決断した関係者は受賞の追い風を期待している。英国の専門誌が主催する品評会「ワールド・ウイスキー・アワード2013」で世界最高賞に選ばれたのは、本坊酒造(鹿児島市)の「マルスモルテージ 3プラス25 28年」。鹿児島と山梨で3年熟成されたモルト原酒を、宮田村の「信州マルス蒸留所」で25年間にわたって熟成した。
2013年4月11日:宮田村の自然と25年の歳月で世界一ウイスキー 信州マルス蒸留所:朝日新聞紙面から
しかし、宮田村でのウイスキー製造は7年間で休止に追い込まれた。酒税制度が変わり、同社の主力商品、一升瓶で1600円だった2級ウイスキーは、一挙に2倍に。一方で輸入物が手頃な価格になり、国産品の需要は低迷した。樽の置き場が満杯となったこともあり、92年を最後に製造を休止。以来、新たな熟成はやめ、在庫を少しずつ出荷してきた。「売り切ったら身軽になろう」と一時は完全に撤退する案も出た。しかし、ハイボールブームをきっかけに需要が増え、2011年3月、製造を再開した。
2013年4月11日:宮田村の自然と25年の歳月で世界一ウイスキー 信州マルス蒸留所:朝日新聞紙面から

理想求めた、もう1人のマッサン

 信州マルス蒸留所を運営する本坊酒造の本坊修社長は、世界最高賞の受賞あいさつで「1949年からウイスキーに取り組んで、ここまで来た。受賞をもう一つのスタートラインとして、世界に日本のウイスキーを発信していきたい」と語っています。

 「いつか日本の風土を生かした本物のウイスキーを造りたい」という思いで生まれたという信州マルス蒸留所。けっして大きな蒸留所ではありませんが、地元でしか作れないウイスキーを追い求めてきました。そんな信州マルス蒸留所の礎を築いた岩井喜一郎は、まさに、もう1人のマッサンともいえる人物でした。

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます