話題
「つらい」「血が出る」パンプス強制に声あげた「#KuToo」運動
女性だけが働きづらく、けがにもつながるパンプスを強制される職場っておかしいのでは――。そんな疑問を投げかける「#KuToo」運動が共感を集めています。ハッシュタグは「靴」と「苦痛」をかけたもの。同じようにヒールで働くのがつらい女性からの切実な声が集まっています。ネット署名を呼びかけているグラビア女優・ライターの石川優実(32)さんは「『マナーだから』と同じ職場で女性だけ靴を強制されるというおかしさに気づいてほしい」と訴えます。
はじまりは、今年1月、石川さんが何げなくツイッターでつぶやいたツイートでした。
私はいつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたいと思ってるの。
— 石川優実@#KuToo署名中 (@ishikawa_yumi) 2019年1月24日
専門の時ホテルに泊まり込みで1ヶ月バイトしたのだけどパンプスで足がもうダメで、専門もやめた。なんで足怪我しながら仕事しなきゃいけないんだろう、男の人はぺたんこぐつなのに。
葬儀の案内のアルバイトをしている石川さん。仕事中、男性社員の革靴をそろえようと手にしたところ、その軽さに驚きました。
「すごく軽くて、ヒールも平ら。これで働いたら体への負担が減って、楽だろうなと思ったんです」
つぶやきは、6万8千もの「いいね」、3万以上のリツイート(拡散)をされ、多くの女性から共感の声が集まりました。
「私もつらい」「血が出る」「外反母趾になり、かわいい靴が履けなくなってしまった」「女性の就活はスカートと決まってると言われた」「すぐやぶけるストッキングの出費も痛い」
自分だけが足に合ったパンプスを見つけられずつらいんだと思い込んでいた石川さんは、多くの女性が共感してくれたことに驚いたそうです。
18歳の頃、通っていた専門学校のホテル接客の研修で、パンプスを履いて働くのに耐えられず、それからパンプスが必要な仕事は避けてきたといいます。
今回のツイートで、そもそもなぜ女性だけが、働きにくく、脚を痛めたりけがをしたりするかもしれない靴を強制されているんだろうと考えるようになりました。
「これって差別なんじゃないか」
そう発信していくと、ツイッターでは、男性から「男も革靴をはいて痛い」「オフィスでカジュアルな服を着られるのは女性」といった反応もありました。
「でも、男性も我慢してるんだから女性も我慢しろって変ですよね。男性も女性も働きやすい、生きやすい方がいいじゃないですか」
共感した人が拡散用のハッシュタグ「#KuToo」を考案してくれ、SNSで広がっていきました。セクハラや性的被害の体験を告白したり、被害者に寄り添うことを表明したりする「#MeToo」運動ともかけています。
現在、石川さんはネット署名サイト「Change.org」で署名を集めています。
イギリスでは、ハイヒールの強制は「性差別」として禁じられています。
「ハイヒールを履かなかったからと解雇された女性が行った署名活動には、3日で10万筆が集まりました。企業には、イギリス政府からジェンダー平等の観点から望ましい就業規則を作るよう通達が出ているんです」
石川さんは、「同じ職場・仕事内容なのに性別によって許される服装が違う」「効率が悪い・健康に害があることより、マナーを優先させる」という二つに大きな違和感をおぼえています。
ネット署名が集まれば、厚生労働省へ提出し「同じ仕事で性によってハイヒールやパンプスを強制することを禁止するよう、企業側に通達を出してほしい」と伝える予定です。
1万人を超えました!
— 石川優実@#KuToo署名中 (@ishikawa_yumi) 2019年2月21日
メールアドレスとお名前だけで署名ができます。
問題点:
①性別によって同じ職場で強制される服装が違うこと
②健康を害してまで強制されるマナーとは?
「厚生労働省宛: #KuToo 職場でのヒール・パンプスの強制をなくしたい!」 https://t.co/q61K5E2TVw @change_jpより
そもそもなぜパンプスがマナーになっているのでしょうか?
黒いスーツ、タイトスカートにパンプスで歩く就職活動中と思われる女子大学生をよく見かけます。しんどそうです。
記者自身は、事件や事故の現場にすぐ駆けつけられないからと、ヒールのある靴は履かない方がいいと言われました。
けれど、結婚式に出席する時には「マナー」を調べ、慣れないヒールを履いて、式場への行き帰りはぺたんこ靴に履き替え……というとても面倒なことをしていました。
パンプスのほかにも、ストッキングや化粧……女性は、男性よりも「見た目の美しさ」を「マナー」として求められることが多いと感じています。
石川さんは、そんな女性の「見た目」ともからむ「だってわたし、可愛くないから。の呪い」というブログを書いています。
女性に求められる「見た目の美しさ」「かわいさ」のプレッシャーから、自分もその呪いにかかっていたといいます。それはどんな「呪い」なのか? 女の子がその「呪い」から逃れるにはどうしたらいいのでしょうか?
◇
3月9日、グラビア女優・ライター石川優実さんと、プラスサイズモデルの吉野なお(Nao)さんのトークイベント「からだのシューレ vol.15 『だって私、かわいくないから』の呪い」が開かれます。
石川さんの書いたブログを読んだなおさんも「私、『かわいくないからの呪い』にかかってました」と言います。「かわいい」って一体なんなの? 女性にとってなぜそんなに大切なの? 参加者のみなさんと考える催しです。
1/27枚