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内閣府って何?内閣・内閣官房…全部違う!「地下通路」の行き先は…
たくさんある省庁の中でも、わかりにくいのが「内閣府」。名前からは、どんな仕事をしているのかイメージがわきません。一つの省なのに大臣が9人もいたり、首相官邸の地下通路で結ばれていたり。いったい、内閣府とは何者なのか。超解説します。
超解説するのは朝日新聞政治部の松村愛デスクです。
Q:そもそも内閣府ってなにをしている役所なの?
A:総理大臣やその他の大臣が、法律をつくったり、道路をつくったりする国の「政策」を行うのが内閣です。そうした政策がスムーズに進むようにする「縁の下の力持ち」といえる組織です。
Q:「縁の下の力持ち」って?
A:たとえば少子化対策や地方創生、沖縄対策のように、内閣が進めようとしている政策には複数の省庁にまたがるテーマが多いんです。だから、相反する利害を調整したり、どの法律で対応するかを決めたりする調整役の事務職員が必要。そうした政策の実行部隊、つまり「黒衣(くろご)役」といえます。
Q:「内閣」ってつく組織はほかにもあるみたいだけど?
A:内閣、内閣官房、内閣府。名前は似ていますが、それぞれ違う組織なんです。このうち内閣府は、2001年の「省庁再編」で総理府と沖縄開発庁、経済企画庁が合わさって誕生した、まだ新しい役所です。
Q:普通の省庁とは何が違うの?
A:さまざまなテーマを扱うだけに、財務省、外務省、法務省など仕事内容がわかりやすい役所とはちょっと違っていますね。
Q:ややこしい……
A:総理大臣を右腕としてすぐそばで補佐する組織が「内閣官房」。ここには内閣のスポークスマンである官房長官のほか、総理大臣補佐官、さらに内閣官房副長官、内閣官房副長官補、内閣危機管理監といった人たちがいて、総理大臣の仕事を支えています。
Q:菅官房長官、よく見ます!
A:政治家や官僚のほか、官僚出身の民間人もその手腕を買われて起用されています。
Q:菅官房長官は内閣?内閣官房?
A:内閣官房です。内閣官房は、そのときの内閣、今でいえば安倍内閣の考えが色濃く反映されたテーマを扱うことが多いです。例えばアベノミクス、一億総活躍、働き方改革、国土強靱(きょうじん)化、2020年東京五輪・パラリンピックなどがあります。
Q:一方で、内閣府は具体的になにをやっているの?
A:内閣府が扱うのは、大臣の顔ぶれを入れ替える内閣改造や政権交代があっても、継続してやらなきゃいけないテーマなどです。
Q:というと?
A:経済政策や金融、原子力防災、男女共同参画、さらに叙勲など多岐にわたり、扱うテーマはどんどん増えている状況です。
Q:安倍さんを支える首相官邸と内閣府は密接な間柄なんですね。
A:はい。それを示すかのように、首相官邸と内閣府の本庁舎は道路を隔てて向かい合っていますが、実は地下通路で結ばれているんです。
Q:地下通路!
A:首相官邸で開かれる内閣の会議「閣議」や多くの会議には膨大な書類が必要。機密保持が必要な情報も多く、いちいち台車で公道を運ぶわけにもいきません。職員たちがたやすく行き来するためにできたようです。
Q:内閣府はどんな人たちが働いているの?
A:まず、大臣がいます。実は内閣府には、大臣が9人もいるんです。安倍内閣の大臣は現在19人。このうち「内閣府特命担当大臣」に9人が任命され、複数の省庁にまたがるテーマを任されています。
Q:なんで9人も大臣がいるの?
A:内閣府が扱う幅広いテーマすべてに一人の大臣が目を通すことは難しいし、大臣の数は決まっているからそれぞれに担当を置くわけにもいかない。そこで、「内閣府特命担当大臣」として課題ごとに大臣を置くことを法律で決めたんです。
Q:1人で二つの大臣をする人も?
A:財務大臣の麻生太郎さんは「金融」担当の特命担当大臣、総務大臣の高市早苗さんは「マイナンバー制度」の特命担当大臣、といった具合に兼務している大臣が多いです。内閣府には大臣室が5つもあり、副大臣6人と政務官6人の計12人が分担して各大臣に仕えています。
Q:大臣以外は?
A:各省庁との調整役を担うため、内閣府の職員は各省庁が出向の形で送り込んだ職員が多くを占めます。この職員は、出身の省庁との「併任」という身分です。
Q:職員は何人いるの?
A:内閣府によると、安倍内閣が発足した2012年当時の職員数は1352人。現在は1451人と100人ほど増えました。
Q:結局、内閣府って作ってよかったの?
A:省庁のタテ割りをなくすというもともとの省庁再編の考え方からすると、調整機能ができたのはいいことでしょう。ただ、首相官邸の意向を省庁に押しつける形になっていないかなど、デメリットも見えてきました。