話題
何かと話題の「内閣府」何で注目されている?加計学園・教育無償化…
縦割りの行政をなくすために生まれた内閣府ですが、加計学園の問題では現在、渦中の存在になってます。何が問題になっているのか? 実は加計学園以外にも、自民党の看板議員、小泉進次郎氏が「教育の無償化」の財源問題で発言するなど、最近の大きめなニュースでしばしば登場します。内閣府の今について超解説します。
超解説するのは朝日新聞政治部の松村愛デスクです。
Q:加計学園の問題で、内閣府が話題になっています。
A:「国家戦略特区」ですね。安倍内閣は成長戦略の一環として、自治体を全国一律のルールで縛るのをやめ、地域を限定して大胆に規制緩和する「国家戦略特区」を打ち出しました。
Q:「特区」って何?
A:「東京圏」「関西圏」など全国10地域が指定され、外国人による家事支援サービスや企業による農地の取得などができるように規制をゆるめました。その一つが、学校法人「加計学園」が愛媛県今治(いまばり)市につくることが認められた大学の獣医学部。
Q:なにが問題になっているの?
A:「国家戦略特区」を担当するチームは、経済産業省などから出向している職員が集まっています。獣医師の増えすぎを抑えるために新規の開学を認めてこなかった文部科学省を押し切る形で決まりました。獣医学部の新設は、半世紀ぶりです。
Q:なんで押し切ることに?
A:加計学園の理事長は安倍晋三首相の親しい友人です。報道や国会で明らかになった文書には、特区を担当する内閣府の審議官らが、獣医学部の新設について、学部の設置を検討していた文部科学省に「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」と言った、という内容が記録されていました。
Q:文書の問題点は?
A:国家戦略特区の制度をつくるのも、指定の詳細を決めるのも、内閣の意向を体する内閣府のほう。丁寧な手続きを経ずに、獣医学部の設置が決まっていたのではないかと話題になっているのです。
Q:丁寧な手続きがすっ飛ばされた?
A:2012年12月に就任した安倍首相の在任期間が長くなり、安倍首相が総裁を務める自民党は衆院でも参院でも「1強」と言われる状態。官邸が幹部公務員の人事を握ったり、自民党の中ですらも首相の意向に公然と反対しづらい空気ができたりしているなかで、内閣府のような組織を通して、首相官邸の意向を省庁に押しつける形になっているのだとしたら問題です。
Q:他に注目されていることは?
A:内閣府が今度決める「骨太(ほねぶと)の方針」があります。
Q:「骨太の方針」って何?
A:国の予算は、いろんな省庁がやりたいことを挙げるので、放っておくとどんどん増えていきます。でも税収には限りがあります。
Q:たしかに、やりたいことは選ばないと……
A:なので、年末に編成する来年度の予算案が野放図なものにならないよう、あらかじめ半年前に「タガ」をはめ、重点的に取り組む政策を明らかにする役割が、国の経済財政運営の改革方針である「骨太の方針」です。
Q:「骨太」の意味は?
A:国家予算の骨格だから、「骨細」ではなく、「骨太」。もともとは旧大蔵省が握っていた予算編成の主導県を内閣に移すため、小泉純一郎さんが首相を務めていた2001年に始めた仕組みです。
Q:小泉元首相、懐かしい!
A:その年ごとに主要な課題と方針を示し、6月に政府の「経済財政諮問会議」で決めます。小泉さんは「聖域なき構造改革」を掲げて道路公団や郵政の民営化を進め、予算を重点配分しようとしました。
Q:「骨太の方針」って普通の人に何か関係があるの?
A:今年6月9日にも閣議決定される「骨太の方針」で議論の焦点になっているのが、「教育の無償化」です。つまり、教育にかかる家庭の費用負担をゼロにしよう、ということ。
Q:たしかに大きいです。
A:元文部科学大臣を中心とする自民党の特命チームが、大学や専門学校などの高等教育から、小学校入学前の幼児教育までを無償にするため、「教育国債」を新たに発行して財源をつくろうと提案。「骨太の方針」に盛り込むよう求めています。
Q:何かいいことのようだけど?
A:これに真っ向から反対しているのが、「骨太の方針」の生みの親、小泉元首相の次男である小泉進次郎衆院議員を中心とする若手議員たちです。
Q:何で反対するの?
A:教育にかかる負担をなくして公平な教育の機会をつくろうという目的では一致しています。ただ、小泉議員たちは、国の借金にあたる国債の発行は、将来世代の負担増につながる、という理由で反対しているんです。
Q:では、小泉議員たちはどうしたいの?
A:代わりに、働く世代が負担している社会保険料に薄く広く上乗せして資金を集める「こども保険」方式を提案しています。
◇
「加計学園」の問題で内閣府がどのような役割を果たしたのか。また、6月9日にも示される「骨太の方針」に教育の無償化がどのような表現で盛り込まれるのか。ぜひニュースに注目してみてください。