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#8 ことばマガジン
寒い2月なのに「熱波の日」? 熱波師の大会も…サウナ通のサービス
最近、サウナ専用施設だけでなくスーパー銭湯などでも人気なのが、サウナ内でのサービス「ロウリュ」です。
寒い日はサウナの熱さが心地いいです。最近、サウナ専用施設だけでなくスーパー銭湯などでも人気なのが、サウナ内でのサービス「ロウリュ」。熱した石にアロマ水などをかけて蒸気を出し、熱波師とも呼ばれる従業員がタオルやうちわを振って充満させ、お客の前で勢いよくあおいで熱風を送ります。2月8日は関係団体が定めた「熱波の日」、つまりロウリュの日。ただ、日本のロウリュは、実は本場フィンランドとはちょっと違うそうです。(朝日新聞校閲センター・高口信孝/ことばマガジン)
サウナが日本で広く認知されたのは、1964年の東京五輪のとき。選手村にフィンランド式のサウナが造られて注目され、日本全国に広まっていきました。
「サウナ」は、もとはフィンランド語で「蒸し風呂」の意味。フィンランドでは人口約550万人に対して約300万のサウナがあり、国民の10人中9人が週に1度は入ると言われています。
東京都にあるフィンランド大使館の広報部によると、各国に置いている大使館にもそれぞれサウナがあり、東京では「サウナ外交」として不定期にサウナナイトというイベントを行っています。小池百合子都知事も国会議員時代、日本フィンランド友好議員連盟の会長として招待されサウナに入ったそうです。
日本で日常語として使われているフィンランド語由来のことばは、「サウナ」以外にはあまりありません。
そこに登場したのが「ロウリュ」。これもフィンランド語で、「熱気」などの意味です。
ただ、日本サウナ・スパ協会によると、日本のロウリュは厳密には本場とやり方が違います。ドイツ式の「アウフグース」の方が近いのだといいます。
石に水をかけて蒸気を出すまでは同じですが、フィンランドの本来のロウリュは、あおぎません。
「日本では1984年にロウリュとして登場し始めたので、その呼び名のまま広まっていったのでは」と日本サウナ・スパ協会はみています。
熱波師が技やパフォーマンスを競う「熱波甲子園」(日本サウナ熱波協会主催)という大会が、これまで7回開かれています。今年は5月15日に行う予定だそうです。そんな中、スターのような扱いを受ける熱波師も生まれています。
協会は2月8日を「熱波(ねっぱ)の日」と定め、今年もイベントを開催。ちなみに、日本サウナ・スパ協会が制定して日本記念日協会も認定する「サウナの日」も3月7日に迫っています。
熱波甲子園の運営にも携わる「サウナ王」こと温浴施設コンサルタントの太田広さんは、「インターネットで新しい情報が得られることでサウナへ行きやすくなり、相乗効果でロウリュを催す施設や熱波師も増えている」といいます。
太田さんの説明では、スーパー銭湯の広がりで、サウナに入る人が一気に増えました。中高年の男性中心だった利用者も、若者や家族連れ、女性にまで浸透してきています。
一方でスーパー銭湯側は、他店との違いを出す武器として、一部の男性向けサウナ施設を中心に行われていたロウリュの導入を進めています。
ロウリュを、サウナ内だけでなく男女が館内着のまま入浴できる岩盤浴エリアでも行うことで、男女別々でなく家族や友人同士でも体験できるようになりました。
太田さんは「会社の上司と部下など、仲間で一緒に入って人間関係を深めた日本のサウナ文化を復活させたい」と意気込んでいます。
2020年の東京五輪の頃には、56年前のサウナのように、今度はロウリュがフィンランド語由来の外来語として広まっているかもしれません。
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