話題
ネットの記事、45%が15秒以内に離脱 最後まで読まれない理由は
朝日新聞ポッドキャスト、チーフパーソナリティの神田大介
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朝日新聞ポッドキャスト、チーフパーソナリティの神田大介
新聞記事には「短く書かなければいけない」という制約があります。ですが、これは紙の大きさに制限があったから。ウェブ上にはいくらでも長い記事を載せることができます。
ところが、長く書いても最後まで読んでもらえない……という課題もあります。(朝日新聞ポッドキャスト・神田大介)
なぜ新聞記事が難しいのかを考えると、まず「書き言葉」を理解するのが難しい。ついで、短い文字数で物事を説明するのが難しいという理由が挙げられます。
ならば、わかりやすい言葉で長く書けば良いのではないかと考えますよね。
ですが、記事は長くなればなるほど読んでもらえないのです。
「チャートビート」というウェブ分析ツールがあります。
アメリカのニューヨークタイムズ、フランスのルモンド、中東カタールのアルジャジーラなどなど、世界の報道機関で幅広く使われているそうです。
読者がいまどの記事を読んでいるかを詳細に分析するもので、日本のメディアでも普及しています。
その調査によると、読者の45%は15秒以内にサイト上の記事から離脱しているそうです。
15秒で読み切れる記事というのはそうそうありません。
日本速読解力協会によると、社会人の読むスピードは1分あたり約600字。
15秒だと150字となります。
これは新聞記事に換算すると、おおむね第2段落が始まったあたりになります。さらに次の15秒で15%くらいの読者が去ります。
つまり、6割の読者が30秒以内に記事から離脱してしまうということです。長い記事を書いても最後まで読んでもらえることはまれです。
また、別の研究によると、一般的なウェブサイトで読まれるテキストは全体の2割程度であるということです。
ごく一般的な新聞記事、11字詰め換算で60行(660字)のテキストにあてはめると、2割なら12行(132字)。おおむね上記の結果と一致します。
この記事もここまで読んでいる方は少ないということですね……。
離脱せずにいて下さって、ありがとうございます。感謝感謝です。
要するに、読者は記事を読んでいません。
その理由については、
とか、いろいろなことが言われています。
謎解きは専門家に任せるとして、われわれが受け止めなければいけないのは「長い記事は読まれない」という現実です。
これに対して、ポッドキャストは長くても聞かれます。
朝日新聞ポッドキャスト(朝ポキ)の場合、番組によってまちまちではありますが、おおむね7割くらいの人が番組を最後まで聞いています。9割を超える番組もあります。
一般的な番組は30分~1時間程度ですが、長さと離脱率に強い関連性はない様子です。中には4時間近い番組もあるんですが、6割近くの人が終わりまで聞いたというデータが出ています。
周囲のポッドキャスターさんの話を聞くと、これは朝ポキに限った話ではなく、ポッドキャスト全般にみられる傾向のようです。
YouTubeの場合、平均視聴時間は2~3分、再生維持率は10~40%程度であると言われています。なぜこんなに違いがあるのでしょうか。
一つの回答になりそうなのが、ポッドキャストは「ながら聞き」が多いという事実です。
オトナルと朝日新聞社による市場調査によると、ユーザーの85.6%が「何かをしながらポッドキャストを聴取している」と答えています。
複数回答で多い順に、就寝前(24.2%)、趣味の作業中(23.5%)、公共交通機関(バスや電車など)の利用中(23.3%)、家事中(23.3%)、歩いている時(23.1%)、休憩中(21.6%)、車の運転中(20.0%)、食事中(15.2%)、運動中(14.2%)、身支度中(12.8%)、仕事中(11.5%)、入浴中(11.1%)。
現代人は多忙です。目は常に情報を摂取しています。が、耳は空いています。
朝ポキのリスナーさんから寄せられた声でも、果樹の剪定中に聞いているという農家の方や、長い観察が必要な実験のおともにしているという理系研究者の方がいました。
そして、これこそが離脱率の低い理由なのではないかと。
たとえば台所でお皿を洗っているとき、聞いているポッドキャストを変えるとします。
まず泡だらけの手を水道で洗い流し、タオルで拭き、スマホを取り出し、ロック画面を解除して、ポッドキャストのアプリを起動し、いま流れている番組を止め、別の番組を探し、再生ボタンを押して、再びスマホの画面を落とし、別の場所に置いて、再び汚れたお皿に向き合うという手順を踏まなければなりません。
つまり、面倒くさいんです。
ジョギング中にポッドキャストを聞く人もいます。わざわざ走るのを止めるくらいなら、ちょっとくらいつまらない番組でも我慢して聞き続ける人は少なくないでしょう。
理由の1位、寝落ちに使う人ならなおさら。むしろ面白くない方が眠りにつきやすいかもしれません。
つまり、離脱率が低いのは、番組の内容が面白いからだとは限らないということです。
私たちには、面白ければ聞いてもらえる、見てもらえる、読んでもらえるという思い込みがないでしょうか。
それを否定するわけではありませんが、そんなことよりももっと大きな違いが「伝え方」によって生じているのかもしれません。
スマホの画面に向き合っているときは、手を動かすのも容易です。ゆえに離脱もしやすい。
この連載では繰り返し言ってきましたが、新聞社には今もなお、中身の充実した記事は読まれる、ページビューが高くなるという信仰のようなものがあります。
読者が喜ぶ正解のようなものがあり、そこに向かって内容を鍛えれば結果は出るはずだという考え方です。
本当にそれだけでしょうか。コンテンツの中身のことばかり考えすぎなのでは。
良い取材をした、良い記事を書いた、良い見出しを付けた……。
あえて言うと、この情報過多時代に、コンテンツの中身を充実させるというのは誰でもやっている、当たり前のことでしかありません。
でも、ちょっと視野を広げてどう届けるかを考えたとき、まったく別のものが見えてきます。
中身は大事ですが、伝え方も大事なのです。