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記事のPVに差がある理由 プラットフォームで超読まれたとしても…

朝日新聞ポッドキャスト、チーフパーソナリティの神田大介

朝日新聞ポッドキャストのイベント「PODCAST MEETING 2024」の様子=2024年9月23日
朝日新聞ポッドキャストのイベント「PODCAST MEETING 2024」の様子=2024年9月23日

「記者が数字を気にするようになった」と言われて久しくなります。ネットに掲載された記事は1本ごとにページビュー(PV、閲覧数)が現れます。

精魂込めて書いた記事のPVが低かったときには、自分の仕事が誰にも求められていないように感じ、落ち込んでしまうこともありますよね。

ところが、朝日新聞ポッドキャスト(朝ポキ)の場合、「聴かれない番組」というのは存在しないんです。(朝日新聞ポッドキャスト・神田大介)

短期連載:ポッドキャストで見えてきたこと
(1)なぜ若者は新聞を読まないのか ポッドキャストを配信して見えたこと

https://withnews.jp/article/f0260210000qq000000000000000W03510101qq000028523A
(2)記事のPVに差がある理由 プラットフォームで超読まれたとしても…(この記事)

誰が何をしゃべっても、さしたる変化なし!

ある1カ月を例に、朝ポキのプレイリストの一つ「ニュースの現場から」で配信された番組の再生回数を調べました。

プレイリストとは番組の束のことで、ラジオやテレビでいうチャンネルに相当します。

多いものは2万回超。少ないもので約1万3000回となっています。

朝日新聞のデジタル版に掲載される記事の場合、PVは100万を超えることもあれば、1000に届かないこともあり、大きな違いがあります。

「現場から」は朝ポキの基幹番組で、政治からスポーツ、文化まで幅広い話題を取り扱っています。どんなテーマの人気がありますか、とよく聞かれますが、ジャンルによる違いは見られません。

また、番組は記者とMCの対話で構成しており、記者は毎回違う人が出演します。MCも固定していません。この月は計9人がMCを務め、やはり再生回数に大差はありませんでした。

そんな話をすると、新聞社のみなさんは驚かれます。

どの新聞もどの記者も、それだけPVの違い、正確に言うと「PVの低い記事があること」に頭を悩ませているということでしょう。

記事のPVに大きな違いがあることは、「良い記事はよく読まれる」という、コンテンツの中身こそが大事だという考え方の裏付けになっています。

ですが、記事のネット配信に真摯に向き合っている人ほど、数字と中身に相関性がないことに気づいているのではないでしょうか。

私はポッドキャスト制作を始める前、朝日新聞の国際報道部でどうしたら記事がネットで読まれるかを考え、実践する仕事をしていました。なのでPVはかなり子細に見ていたつもりですが、ついに「必勝法」を見つけることはできませんでした。

【関連記事】イスラム女子の「コスプレ魂」 ヒジャブで「盛り髪」戒律を逆手
https://withnews.jp/article/f0170612000qq000000000000000W03510101qq000015357A

旧来の新聞的な価値観で評価が高かった記事、特ダネや名文が必ずしもPVを稼がない、というだけではありません。

いかにもネットでバズりそうだなという内容の記事でも、思ったより伸びないことはよくあります。

目立てる場所がありません

逆に、なぜポッドキャストは数字が一定なのか。「ハズレ」がないのか。

実はポッドキャストには、「ここに置けば確実にたくさん聞かれるよ」という場所がほとんど存在しません。

ポッドキャスト配信アプリのトップページがそれに類する存在ですが、各アプリが独自に配信する推し番組が掲載される場合が多く、極めて狭き門です。

記事の場合、たとえばヤフーニュースがあります。

トップ記事8本は「ヤフートピックス」と呼ばれ、掲載されると大きくPVが伸びます。

これはたとえば、渋谷のスクランブル交差点に広告を出すようなもの。たくさんの人が集まる場所に置かれるので、目立ちます。

他にも、スマホやブラウザを使うと自動的に表示される記事に選ばれたり、SNSでの拡散、検索など、記事にはたくさんの導線が存在します。

うまく居場所を見つけられると、記事のPVは伸びます。

しかし、どの記事をどの場所に置くかを決めるのは新聞社ではありません。Yahoo、Google、Apple、スマートニュース、X(ツイッター)など、プラットフォーマーです

Yahooはトピックス入りする記事を編集者が選んでいます。GoogleやAppleはおそらくアルゴリズムで人力を介さずに決めています。

記事そのものの力で拡散していく場合もまれにあります。ただ、まれです。

数字に差が出る原因は「バラ売り」

朝ポキの再生回数は、1週間に計40万ほどです。

これに対し、リスナーさんの数は計12万ほど。

つまり、リスナー1人あたり3~4本程度を聞いている計算になります。

朝ポキは毎日さまざまな番組を配信しています。その中から、自分に関心のあるものを聞くというスタイルが想像できます。

つまり、リスナーは個々の番組ではなく、「朝ポキ」や「ニュースの現場から」を聞きに来ているのです。

これ、新聞本来の読まれ方に近いと思いませんか?

紙の新聞は多くの場合20ページ程度、あるいはそれ以上あり、大小様々な記事が掲載されています。

これを隅から隅まで読んでいる人は決して多くありません。

見出しを拾い読みし、さらに深く知りたい記事に限って中身も読むというのが普通です。新聞は記事や広告のパッケージでした。

それが、ネットに置かれることでバラバラになり、記事1本1本、単体での勝負を迫られています。だから記事によってPVが違うわけです。

新聞記事のPVが低くなるのは、このバラ売りこそが原因です。

なぜ、そんなことしなきゃいけないんでしたっけ?

経営を支えるのは難しい収入

PVを軽視するつもりはありません。一つ一つの数字の背後には人がいます。読んでもらえるのはありがたいことです。

しかし、どれだけPVがあったとしても、大した収入にはなりません。

公正取引委員会が2023年9月に公表した調査報告書によると、ヤフーを含むニュースポータル6社がメディアに支払う記事使用料の平均値は、1PVあたり0.124円。

最高で0.251円、最低だと0.049円でした。

平均値で計算しましょう。1万PV取れたらヒット記事と言っていいと思いますが、これで1240円。

1カ月に何本出るかな、というクラスの10万PVでも1万2400円。

新聞社はたくさん記事を出すので、積み上げればそれなりの数字にはなりますが、どう考えても会社を支えるような収入は見込めません。

「大手ポータルから自社サイトへの流入を狙っているんだ」という指摘はあるでしょう。

確かにそうなんです。ただサイトを持っているだけでは、誰も来てくれません。導線を持っておくことはとても大事です。

一方で、こうして訪れてくれたお客さんは、ほとんどの場合で一期一会の関係にとどまり、自社サイトへ二度とは来てくれない。そんな状況も各種の調査で明らかになっています。

紙の新聞で導線の役割を担ってきたのは販売店です。

私の実家の場合、販売店主が母の小中学校での同級生でした。母は「つきあいで取っている」と言っていましたが、そのつきあいが大事なわけです。

これは一つの極端な例でしょうが、廃品回収など地域の活動を支援したり、高齢者の見守りをしたり、独自にミニコミ誌を作ったり、そんな販売店の努力が読者との関係性をつくり、部数をつなぎとめてきたのは疑いないでしょう。

朝ポキは、リスナーとの関係性を大事にしています。

かなりの頻度で何かしらのイベントを開くほか、プレイリスト「メディアトーク」で配信する番組「制作会議」では、我々の方からリスナーに悩みを相談しています。

交流のツールとしては、コミュニケーションサービス「Discord」や朝日新聞アプリに実装された「記者コミュニケーション機能」を活用しています。

番組の感想フォームも設け、長文の感想が毎日送られてきます。

一方で、記者がニュースを読み上げることはしていません。AIに任せています(「朝日新聞アルキキ」「AJW英語ニュース」)。

記者や社員が人間性を見せ、本音で話すことを最も大事にしています。

おそらくは「朝ポキのお客さん」が付いている。なので、どんなテーマで配信をしても、一定の人が聞いてくれるのです。

大事なのは中身だけ?

前回も書きましたが、新聞社、とりわけ記者には「良い記事を書けば読んでもらえる」という思い込みがあります。

昭和のころ、新聞はプラットフォームであり、インフラでした。他に情報を取得するツールがなかったから読んでもらえた。それを記事の力だと過信していたところはないでしょうか。

むしろ、普段から関係性を築いている読者の方々だからこそ、渾身の記事を書いたときに読んでもらうことができる、という順番なのでは。

そして、新聞がインフラだった時代はとうの昔に終わっています。

記者は書くことだけに専念すればいいんだ、読者となれ合うなんて、と言う人もいます。とりわけベテランに多い印象です。

私にはこうした態度が、仕事にかまけて家事や育児をおざなりにしてきた「昭和のオヤジ」に重なって見えます。

あなたがやって来なかっただけで、誰かがやっているんです。

朝ポキのイベントも「地下アイドルみたいだな」と揶揄されたことがありました。二重に失礼な話で、むしろ地下アイドルのみなさんから学ぶところこそ大きいと考えるべきでしょう。

読者のみなさんと直接つながる努力を怠れば、新聞社は「ネット上の渋谷スクランブル」を持つプラットフォーマーに頭の上がらない存在になります。

いずれは報道の自由に影響してくる恐れも否定できません。

抵抗感があるのは分かります。

私も元来、サービス精神に乏しい方です。イベントもむしろ苦手で、高校・大学を通じて学校祭にはほぼ参加しませんでした。

けれど、そんな個人的な事情より、ジャーナリズムを次代につないでいくことの方が大事だと考えています。

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