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あの〝ウチら〟が大学生になってカムバ 平成女子御用達「一期一会」
実現の裏にはド世代社員の〝絶叫〟

「なっ、懐かしすぎる!!!」。ある日、都内の京王線の駅で見かけたポスターには、28歳の記者が小学生のころ愛してやまなかった「一期一会」のキャラクターたちが並んでいました。ウチらの平成を象徴する一期一会がなぜいま広告に? 京王電鉄に聞きました。(朝日新聞withnews編集部・川村さくら)
「一期一会」とは特に平成の女子のあいだで流行したキャラクター。
「恋」「友」などのシリーズがあり、制服姿の学生たちのイラストとともに青春を感じさせるポエムがあしらわれていました。
「毎日がこんなにもキラキラしているのは いつもそこにサイコーの心友がいるから!!」
「いつだってアタシの心をあったかくしてくれる、アンタは太陽みたいな存在なんだよ。」
一期一会を展開している「マインドウェイブ」のホームページには、見覚えのあるポエムとイラストがずらり…。
思い返せば、小学生のころは下敷きもレターセットも筆箱も全部一期一会グッズを使っていました。
大人になってからはグッズを持つことも見かけることもなくなっていましたが、今回の再会で大興奮。
幼なじみに連絡し、「エモすぎる!」と盛り上がりました。
今回の広告は京王電鉄が高尾山のPRの一環として、京王線と京王井の頭線の全線に出したもの。
横291センチ、縦103センチの大きな広告は駅で存在感を放っています。
「高尾山で過ごすウチらだけの時間」「また来よう、次はアタシが誘うね」とおなじみのポエムもばっちり入っています。
担当した京王電鉄広報部企画宣伝担当の松本洋征さん(49)と内藤沙弥さん(27)に経緯を聞きました。
広告のシチュエーションは、高校生だったキャラクターたちが大学生になってかつての同級生たちと高尾山に登るというものなのだそう。
時間が経っても変わらない仲の良さと緑豊かな高尾山の魅力が表現されています。
毎年、夏と冬に出す高尾山の広告。
元は高尾山の風景などをアピールするものでしたが、近年は若い層へアプローチするために若者人気が高いイラストレーターとコラボするなどしていました。
松本さんは「今の若い子は行き先よりも『誰と行くか』を重要視する傾向がある気がしていて、『友達と楽しい時間を過ごせる』ことを伝える広告を意識しています」と話します。
そんななか、2025年夏の広告の内容について広告会社から提案を受けたときのこと。
20代女性の担当者がいくつか挙げた提案のうちのひとつが「一期一会」でした。
それを見たとたん、普段提案を受ける最中には発言しない内藤さんが「絶叫」したのだそう。
内藤さんは「小学生のころ、身の回りの文具は一期一会だらけでした。もう懐かしくてたまらなくて、提案の中でも一期一会しか目に入らなくなりました」と振り返ります。
内藤さんが「絶対一期一会!!」と熱くなる一方、居合わせたほかの30代超の京王電鉄社員3人はピンと来ず、ぽかーん。
松本さんも「イラストに『相田みつを』とか『326(ミツル)』みたいなポエムが付いてる…」と鈍い反応でしたが、「内藤のこの興奮ぶりは異常事態だ…!」とも感じたそう。
「かつて当社の広告はいろんな属性の人に刺さる『最大公約数』的な表現方法が多かった。けれど、価値観や趣向が多様化している現代でそれでは誰にも刺さりにくい。特定の層に鋭く刺さる方が大切だと思っています」
「内藤の様子が明らかにおかしくて、この世代には刺さるだろうと思い、この段階でもう一期一会の案にほぼ決まりました」
絶叫の力もあって実現した一期一会広告。
内藤さんのもとに昔の同級生から連絡が来たり、インスタグラムへ広告の写真をアップしている子がいたり。
「やっぱり間違ってなかったと思いました」と内藤さんはにんまり。
「高尾山は都心から近くて山としても手軽に登れますが、本格的な自然を楽しめます。最近は周りにスイーツの店もありますし、ぜひ若い方々にお越しいただきたいです」
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