連載
#151 鈴木旭の芸人WATCH
先輩芸人に煙たがられた「大学お笑い」さすらいラビーが感じるエモさ
盟友と「売れたい」

連載
#151 鈴木旭の芸人WATCH
盟友と「売れたい」
2021年の『ABCお笑いグランプリ』、2023年の『ツギクル芸人グランプリ』で決勝に進出。今年初開催の漫才&コント二刀流No.1決定戦『ダブルインパクト』でもファイナリスト候補と目される、「さすらいラビー」の宇野慎太郎と中田和伸。2人は大学のお笑いサークルで腕を磨いてきた。2人にとって〝大学お笑い〟とは何なのか。学生時代から切磋琢磨してきた「ストレッチーズ」ら盟友に対する思いなどを聞いた。(ライター・鈴木旭)
――大学卒業後の2年間は、『学生才能発掘バラエティ 学生HEROES!』(テレビ朝日)の制作会社でもあるタイズブリックに所属されていたんですよね。
宇野:番組に出演したご縁もあってお世話になりました。当時は大手と違ってテレビのオーディション枠がないことにモヤモヤしたりもしましたけど、冷静に考えればフリーで売れる芸人もいるわけだし、甘えていたなと思います。今はあのときサポートしていただいた感謝のほうが全然大きいですね。
中田:大手の事務所では味わえない経験もできたんですよ。毎週、会議室でネタ見せがあって、例えばコンビニのネタを見せたら、まずダメ出しを受ける。そこから、作家さんと一緒に「別の案がないか」っていうのを缶詰め状態で3時間ぐらいずっとやるんです。それが、めちゃめちゃしんどい(苦笑)。
同じ事務所にいたストレッチーズもそんな感じで、一緒に終電を逃して朝までファミレスで過ごすみたいな。かなり根性系のネタ見せだったんですけど、「そこまで考えないと、ネタって完成しないよな」って感覚がそこで身につきました。
――ママタルトの檜原洋平さんも、当時はサンストレンジ(2015年に解散)というコンビで同じ事務所でしたね。
宇野:いまだにママタルトと劇場の楽屋とかで一緒になると、「(軽く手を上げて)マイメン」って挨拶するんですよ。
中田:大鶴肥満の「まーごめ」より、もっと内々のやつです(笑)。全く深い意味はなくて、「アロハ」みたいに「マイメン」って言い合うっていう。もう10年以上やってますね。
宇野:ライバルではないけど、檜原はタイズブリック時代も一緒にいたし、友だちと言えば友だちだし。なんか不思議な戦友みたいな感じですよね。
中田:もともと檜原は大阪だし、肥満も大学お笑いの時期はバラバラで。けど、ストレッチーズはもうずっと一緒にいて、大学3年ぐらいからいろんな大会で「どっちが勝った」「どっちが負けた」っていうのを繰り返しているんですよ。
だから、少なくとも僕らにとっては刺激を受け続けているライバルですね。ママタルトは先にバーンってテレビに出たから、それを通じて芸能界の予習をさせてもらっているというか。「こういうロケがあって」といったことを直接聞ける、ありがたい存在です。
宇野:ふたりとも、変なゴシップとかも含めて喜んで教えてくれます(笑)。本当に気のいい人たちです。
――真空ジェシカ、ストレッチーズ、ひつじねいり・細田祥平さん、ママタルト・檜原さん、Gパンパンダなど、おふたりの世代は大学お笑いをやっていた層が特に厚いイメージがあります。
中田:僕らの学年の前後が多いですね。でも、大学卒業後、今ほど大学お笑いが認知されていない時期は、けっこう複雑な心境ではありました。やっぱいろんなライブに出る中で、大学お笑いのノリを少しでも見せると、先輩方から煙たがられるんですよ。だから、当時は「関係ないですよ」って感じで日々を過ごしていました。
けど、あれから10年以上ストレッチーズと同じ事務所でやってきたことを考えると、「これはさすがにエモいな」と思えてきて。芸人を辞めない限り、大学時代から交流がある一生ものの仲間ができたなっていう。もしどっちかが売れて自伝とかを出すときに、「最高じゃん、この期間!」って絶対そのエモさを収穫できると思うんですよね。
宇野:エモさを収穫できる(笑)。たしかに芸歴プラス4年長く付き合ってる人たちがいるっていうのは、今も「お笑い楽しいな」「この人たちと売れたい」って思えるひとつの要因になってます。
中田:あと、Gパンパンダの星野(光樹)は、僕の1学年下で中学・高校も一緒なんですよ。もうずーっと知ってるけど、周りの芸人の中で星野が一番熱いかもしれない。芸人を目指すにあたって、親を説得するために公認会計士になったみたいなやつなので。
星野がTokyo Skechers(昨年12月のアメリカ・シカゴ公演に臨むため、元ゾフィー・上田航平らによって結成されたコントユニット)に入ったのも、「自分の現在地」と「やりたいこと」とかを総合しての判断でしょうし。目先のわかりやすい努力をやり切ったからこそ、そのような動きができるんだと思う。後輩ですけど、すごく尊敬しています。
――5月8日、新ネタライブ『トリケラチョップ』が開催されます。1月、3月、5月、7月と2カ月ごとのライブを始めたきっかけは?
宇野:自分たちで新ネタをおろすタイミングを作らないと、今あるネタをダラダラやっちゃうなと思ったんですよ。実際、普通のライブで新ネタをやろうとしたんですけど、うまく自分たちのリズムが作れなかったことがあって。「だったら、新ネタライブを作っちゃおう」ってことで、2年前の1月から始めました。
中田:だいたい漫才2本、コント4本、計6本のネタをやっています。毎回ギリギリ、どうにか間に合っている感じです。基本的に僕がネタの大元を作っているんですけど、いいアイデアっていつ降りてくるかわからないので「これぐらいのペースでやらないと、〝奇跡の1本〟みたいなネタに出会えないんじゃないか」という感覚があるんですよね。
宇野:完全に初おろしのネタで、僕らも「これどうなるんだろう」ってドキドキワクワクしながらやっているライブです。普段の僕らを見て面白いと思ってくれていた方も満足できますし、このライブだけでしかやらないネタもあるので、絶対に楽しんでもらえると思います。ぜひ観にきてください!
中田:YouTubeに上げているネタ動画と同じように、新ネタライブは僕ららしいネタにいっぱい出会える場所だと思います。それは賞レースっぽいネタかもしれないし、「何やってんだよ」っていうバカみたいなネタかもしれない。いずれにしろ、絶対みなさんにぶっ刺さるネタが1本はあると思うので、ぜひ試しに足を運んでほしいです!
1/18枚