連載
#150 鈴木旭の芸人WATCH
漫才とコントの挑戦 さすらいラビー、賞レースへ「一番いいネタを」
M-1は「運命力次第かな」という境地に

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#150 鈴木旭の芸人WATCH
M-1は「運命力次第かな」という境地に
今夏初めて開催される、漫才&コント二刀流No.1決定戦『ダブルインパクト』で、ファイナリスト候補と目されるのが、お笑いコンビ「さすらいラビー」の宇野慎太郎と中田和伸だ。『ABCお笑いグランプリ』や『ツギクル芸人グランプリ』で決勝に進出した実力者である彼らに、大会への意気込みや現在の率直な心境を聞いた。(ライター・鈴木旭)
――今年2月に開催が発表された『ダブルインパクト』1回戦を突破しました。最初から出場するつもりだったのですか?
中田:1月ぐらいからちょっと噂が回ってきて、めちゃくちゃやる気ではありました。もうその時点で「出るしかない」って緊張してましたね。
宇野:まだ公に発表もされてない頃から、勝手にこっち(中田)がピリピリし出したんですよ(笑)。事務所とかお客さんが「僕らに期待してくれてるんじゃないか」って過剰なプレッシャーを感じたみたいで。
――なるほど(笑)。1回戦は漫才とコント、どちらで挑んだのですか?
中田:漫才です。ここ3年ぐらいコントに力を入れていますが、経験値で言えば漫才のほうが長いのでいつも通り臨めるだろうと。1回戦は賞レース特有のジメっとした空気になっているときもあるから、漫才のほうがガッと空気を変えられると思ったのもありますね。
宇野:誰でも出られる大会なので、1回戦は一般の方もけっこう出場しているんですよ。だから、「どうもー!さすらいラビーです」って元気よく登場すれば声量でまず勝てるというか。「お、やるな」って感じが出せるのが漫才だと思って。
――5月に開催される2回戦からは、漫才とコントの両方で審査されます。もうネタは決まっていますか?
中田:これから作戦を立てていこうかなと思っています。ダブルインパクトの後に『M-1グランプリ』も控えているので、「やりたいネタはとっておこう」みたいな芸人の話も聞くんですよ。けど、僕らは「ガンガン一番いいネタを持っていこう」と思っています。
宇野:そもそも僕らって、「この賞レースに向けてネタを隠す」みたいなことをやったことがなくて。とにかく目の前の大会に今一番いいと思ったものを出して、結果が振るわなかったらそれ以上にいいものを作ろうという感じですね。
中田:6月、7月にネタを出してからブラッシュアップして、1カ月後とか3カ月後にネタがよくなったりもするんですよ。その可能性も全然信じているから、基本的に「隠しときゃよかった」という後悔はない前提で臨もうと思います。
――昨年のM-1決勝で令和ロマンが連覇。真空ジェシカは3位、ママタルトも決勝に進出しました。おふたりと近しいコンビの活躍は、刺激になっていますか?
宇野:真空ジェシカのガクさんが、同じ青山学院大学のお笑いサークル「ナショグルお笑い愛好会」の1個上の先輩で、昔ルームシェアをしていたんですよ。だから、初めて真空ジェシカがM-1決勝にいったときは「友だちがいくんだ!」って衝撃がありましたし、「頑張んなきゃ」と思いましたけど、もう慣れちゃいましたね。
中田:もう刺激は受け終わっているというか(笑)。あと一歩をつかむかどうかの差って感覚なので、意外と何も思わなかったです。
宇野:周りにいる面白い人たちは、ちゃんと結果を出している。だから、焦りや刺激というよりも、もう真っすぐ「次は俺たちだ」ってモチベーションになっていますね。
中田:でも、来年あたりから、もうそろそろ血の気が引いてくるんじゃないかなっていう(笑)。まだ冷静さを保ててはいますけど。
――昨年、おふたりは準々決勝敗退でした。もうひとつ上に進むには何が必要だと思いますか?
中田:去年の準々決勝は、今までのM-1の中で「一番いい漫才ができたな」って感覚があったんですよ。一方で、落ちる理由も自分たちで想像できている。ダメだった要素をつぶして、もっといい漫才をすれば「上にいける」と信じています。
もちろん努力は大事ですけど、「いい漫才ができるか」「いい設定が降りてくるか」といった要素を全部含めて「あとは運命力次第かな」という境地に達しました。だからこそ、自分たちの漫才がブレないようにしなきゃって感覚がありますね。
宇野:もう今年の大会に向けて進んでいる感じです。去年の結果に悔しさはありますけど、たぶん目指している方向は間違ってない。自分たちなりに「ここをこうすればもっといいよね」ってところは見つかっているので、次はそこを直せばもう1個上にいけると思っています。
――ちなみに、中田さんの「ディズニーっぽいキャラ」や「キモいキャラ」は何をきっかけに誕生したんですか?
中田:ディズニーキャラが2017年あたり。もともと漫才をやるうえで、「いろんなキャラを演じるのが得意かも」とは思っていたんですけど、その中でも「アメリカのキャラが一番人と違うことができてるな」って感覚があったんです。ショートネタにもできたし、ちょっとした特技っぽくなってきたので、一旦これに絞ってやってみようと。
ただ、3年ぐらいやっても一向にM-1で結果が出なくて。「何か手掛かりないか?」と思っていたときに、けっこう前に地下ライブでやったキモいキャラを思い出したんです。当時、予想外にウケたんですけど、アドリブで演じたものだし、「こんなの賞レースでやっていいわけない」と思っていたから、そのまま放置してて。
しばらく経って、「さすがに人と違うことやらないと」となって2021年に封印を解きました。そうしたら、その年の『ABCお笑いグランプリ』で決勝にいけたんです。
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