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お金と仕事

「パートにならざるを得ない構造」「時代の遺物」〝年収の壁〟考える

男女の賃金格差を広げる原因の一つとも指摘

beeboys/stock.adobe.com
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目次

主にパートタイムで働く既婚女性が、収入をおさえるために就労時間を調整する「年収の壁」が問題となっています。いくつかの「壁」がある中でも、注目されているのが「第3号被保険者制度」が関連する「130万円の壁」です。

朝日新聞が「年収の壁」をテーマに、働く時間を調整する理由や、年収の壁/年金の第3号被保険者制度の今後などについて意見を募ったところ、「自然と選ばされているのが現状」「家族手当が給与明細にあった時代の遺物」といったコメントが寄せられました。現在専業主婦だという人からは「長時間労働のパートナーがいる以上、3号を廃止されては困る」という声もありました。

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「年収の壁」について、ご意見をお寄せください。(5月1日締め切り)
https://www.asahi.com/opinion/forum/220/

年収の壁の背景は

「年収の壁」の背景にあるのは、年収130万円以下なら会社員や公務員の配偶者の扶養に入ることで保険料を払わずに基礎年金を受給できる「第3号被保険者制度」で、これが適用されているのは女性がほとんどです。

この制度は、主に専業主婦が無年金になるのを防ぐためにつくられましたが、男女の性別役割分業を前提にした仕組みであり、男女の賃金格差を広げる原因の一つとも指摘されています。

「現在は必要だが、10年後は不要になる」

朝日新聞の調査では、「第3号被保険者制度」の必要性について選択式の質問を設けました。

〝年収130万円以下なら会社員や公務員の配偶者の扶養に入ることで保険料を払わずに基礎年金を受給できる年金の第3号被保険者制度は、日本に必要だと思いますか?
・現在も10年後も必要だと思う
・現在は必要だが10年後には不要になると思う
・現在も10年後も不要だと思う
・その他、わからない〟

「現在は必要だが、10年後は不要になると思う」と答えた人は、次のようにコメントを寄せてくれました。

     ◇

 実は自然と選ばされているのが現状では(30代女性)
ガツガツ働きたい人、あまり働きたくない人が、自分で選択して働き方を選んでいるならいいと思いますが、今の日本社会では、主に女性は、「実は自然と選ばされている」のが現状だと思います。

長時間労働、性別役割分業が根強く残っていると思います。人手不足の中、最も大きな課題である女性の労働に加え、高齢者の活躍、外国人労働者の雇用にも直結する問題かと思います。

パートで働かざるを得ない構造なんとかして(50代女性)
時給は毎年上がっているのに、上限(年収の壁)がずっと同じでは必然的に働ける時間が減るのは誰でも分かるはず。

それ以前に既婚女性が働く=パートという世間、特に男性の思い込みが大きいのが問題。
そもそも世の中の正社員の働き口が女性の方が少ないので、妊娠、出産で何年かブランクができると、再就職で正社員で働きたくてもよほどのコネや資格がない限り正社員にはなれません。

そのため、多くの既婚女性は正社員を諦め、パートで働かざるを得ないのです。 年収の壁の議論以前に、その社会構造をなんとかしてほしい。

「現在も10年後も不要だと思う」

第3号被保険者制度は「現在も10年後も不要だと思う」と回答した人は、次のような意見でした。
     ◇
「家族手当」あった時代の遺物(60代男性)
この制度は「家族手当」が給与明細にあった時代の遺物だと思う。

これは企業が被雇用者の家族を含めて支えた時代の話で、現状に即していない。事実、姉はこの制度を意識して働いていたが、姪たちは皆夫婦共稼ぎをしており、この制度を利用していない。

きつい言い方をすると、行政が社会保障費の負担を企業に甘えていたことであって、特に私企業には、もうその余裕がないのでは?

むろん、制度の廃止にあたり、税制度自体の大幅な見直しは必須で大前提である。

 全員が社保、厚生年金…いいことづくめ(50代女性)
従業員7名の小さな事業所の事業主です。スタッフは全員女性で、フルタイムとパートタイムは半々。

3号被保険者は、事業主にとっても、パートタイム労働者にとっても一見お得な制度に見えますが、労働時間を調整されると困ることと、労働者側も配偶者が社保か国保かによって健康保険料の負担が違うことへの不平等さを解消するために、2020年ごろ週20時間以上の労働者(=従業員7名全員)に社保、厚生年金に加入してもらいました。

それにより、事業所負担は増えましたが、労働時間調整などに頭を使うエネルギーを労使ともに使う必要がなくなり、フルタイムの人が休みたい日にパートの人が出勤してくれるなど、他にもいいことづくめになりました。

「現在も10年後も必要だと思う」

第3号被保険者制度は「現在も10年後も必要だと思う」と回答した人は、次のような意見でした。
     ◇
家庭内労働を担えないパートナー(50代女性)
「長時間労働のパートナー」がいる以上、第3号を廃止されては困ります。

本来ならしなくてもよいはずの「長時間労働のパートナー」のケアおよび、そのパートナーが本来担うべき家庭内労働までも担わされていることは加味されて然るべきかと思います。

役割分担など、したくてしている訳ではありませんが、一方のパートナーが家庭内労働を担えない状況では、そうならざるを得ません。

すべての雇用労働者が生活時間を十分確保できる労働環境でかつ正社員であるならば、第3号は廃止可能かと考えます。

専業主婦という働き方でしか成り立たない家庭も(30代女性)
そもそも「専業主婦(主夫)は、仕事をしていない人・働いてない人」という世の中の意識に疑問です。

自分の気持ちややる気に関わらず、専業主婦という働き方でしか成り立たない家庭もたくさんあることを、もっと多くの人に理解してほしいです。

私は小学校3年生と、幼稚園年長の2人の子どもがいる38歳の専業主婦です。うちの家庭は、私が家にいないと炊事洗濯料理、上の子の勉強を見ることや幼稚園の支度、小学校や幼稚園の行事の参加などが叶いません。

けど、少しの間は働きたい、そんな人のためにもっと税金を抑えて手取りを増やすような働き方ができるようにはならないのでしょうか。年金の第三号被保険者制度は今後も必要だと思います。
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https://www.asahi.com/opinion/forum/220/
   ◇
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