ネットの話題
「全国民が知るべき」 国立国会図書館のサービスが話題に

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家にいながら数十万冊の本が読める――。国立国会図書館のサービスがSNSで話題になりました。実はこのサービス、始まったのは四半世紀も前なのだそうです。誕生の経緯や利用方法などを聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
SNSで話題になっていたのは、「国立国会図書館デジタルコレクション」というサービスです。話題になった投稿は、特に学生に向けて呼びかけたもの。東京や大阪に立ち寄る機会があったら利用登録をすれば、そのサービスが使えることを知らせています。
国立国会図書館の担当者によると、同館が収蔵する約4750万点の資料のうち、約1割弱にあたる425万点がデジタル化されているそうです。
「このうち171万点については、著作権などの理由で、閲覧するには来館していただく必要があります。それ以外のものについては、利用者登録をしていただければ、自宅にいながらオンラインで閲覧することが可能です。また、登録不要で閲覧できる資料も64万点あります」
国立国会図書館の利用者登録には、満18歳以上であることと、氏名・生年月日・現住所が確認できる本人確認書類が必要です。登録は無料でできるそうです。
SNSでは「これは全国民が知るべき情報」「そんなに便利になったのですね」といった反応のほか、「利用したことはあるけど、そんな使い方は知らなかった」といった声もありました。
同館によると、SNSで話題になった影響か、利用者登録をする来館者が急増しているそうです。
これだけの資料をデジタル化するには、かなり手間がかかりそうです。
また、膨大な資料の中から、どのようにデジタル化するものを選んでいるのかも気になります。
担当者によると「資料の状態や社会的ニーズ、著作権者・出版者団体・大学・図書館等の関係機関等の関係者との協議事項を踏まえ、対象資料を選定しています」とのこと。
デジタル化に必要な作業は、全て人の手で行っているそうです。
「ブックスキャナを用いて資料を撮影するのですが、当館ではデジタル化後も資料原本を保存するため、原則として資料を解体せず、人力で1ページずつめくりながら撮影しています」
その後、撮影した画像に問題がないかチェックし、必要に応じて修正や再撮影などを行うそうです。
「見開き1ページを1枚の写真として撮影します。作業効率は資料の状態によって大きく変わりますが、おおよそ1人1日500~1,000枚程度です」
資料のデジタル化のはじまりは、1997年にまでさかのぼるそうです。
「最初期にデジタル化の対象となったのは、絵巻や錦絵などの貴重な資料でした。これらの資料は2000年3月に『貴重書画像データベース』として公開されました」
その他にも、著作権の確認・処理が完了した資料や、明治・大正期の図書、児童書などを中心に、年間3万点ほどのペースでデジタル化し、インターネットで公開していたそうです。
デジタル化が加速したのは、2009年の著作権法改正がきっかけでした。
「法改正で、当館における原資料の保存のためのデジタル化の際、著作権者の許諾などが不要になりました。デジタル化に必要な経費が予算化されたこともあり、2011年度までの3年間で、図書、雑誌、博士論文など、約109万点をデジタル化しました」
その後も事業は続いており、年々、デジタル化された資料は増え続けているそうです。
また、同館が所蔵する資料の一部を複写して郵送する「遠隔複写サービス」についても、2月20日からは、オンラインで申し込んだ複写物のPDFをダウンロードできるようになるなど、利便性の向上を目指した取り組みが続いています。
今回、SNSでデジタル化が話題になったことについて担当者は「SNSでの反応は、お褒めの声を励みにしつつ、お叱りやご要望については改善の参考にしています。費用や著作権の問題で難しい場合もありますが、今後もできるところから対応していきたいと考えています」と話しています。
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