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〝推し〟のラジオを聞き取りたい! 専業主婦が10数年ぶり英語勉強
3年前、「夢をみたんです」
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3年前、「夢をみたんです」
一度は「やりきった」と思った、英語を職業とする人生。
専業主婦となった女性が、再び英語学習と向き合うきっかけになったのは、働き始めてすぐの頃に夢中になったアメリカのインディーロックバンドとの〝再会〟でした。
石川県に住む41歳のsakoさんは、中学校の英語教諭と、大学での英語通訳事務を経験。結婚を機に退職して専業主婦となり、10数年が経ちます。
「学生時代は、正直英語のおもしろさは感じていませんでした」と語るsakoさんですが、中学教諭になりたいという夢のため、必死に勉強を重ねました。
教員採用試験前には「なんとか英語力を上げないと」との思いで、TOEIC(正式名称はTOEIC® Listening & Reading Test)に向けて対策。1回目は600点だったのが、猛勉強後は740点まで上がったといいます。
そのかいあって無事、中学校の英語教員となりますが、多忙な毎日を過ごし4年が経った頃に退職。
その後は大学の事務補助として英語通訳をする仕事に転職しました。2年ほど続けましたが、結婚を機に退職を決めます。
大学事務を辞めて専業主婦となることについては「後ろ髪を引かれる部分もちょっとあった」といいますが、「教員をやめるときには、かなり悩んで辞めました。その時点でやりきった感覚があった」というsakoさんは振り返ります。
結婚してすぐ、夫の転勤先に引っ越したsakoさん。「できればすぐ子どもを授かれたらいいな」という思いのかたわら、「専業主婦のままでも大丈夫だろうか」という気持ちもあったといいます。二つの気持ちの狭間で揺れ動いていた時期には、人材派遣会社に登録もしました。
ただ、転居先での就職が決まる前に子どもを授かることができ、妊婦生活、そして子育てが始まりました。
しかし、夫婦とも縁もゆかりもない土地での子育て。「夫は週に1日家にいるかいないかの激務。友だちも親戚もなく、全部自分でやらなきゃいけない。余裕がありませんでした」
英語に触れる機会は、まったくありませんでした。
夫の転勤先で、乳児期の子育てに追われていたsakoさんでしたが、子どもが幼稚園に入園する頃、病気が発覚します。
投薬治療や、長期療養が必要になり、家族で地元に帰ることに。
負荷のかからない生活を続けることで、「現状維持」をすることが精いっぱい。子どもを公園に連れて行くのもままならない日々が続きました。
「その頃は、寝たきりの時期もあったし、大好きだった音楽も聴いていませんでした」
無理のできない生活が数年続きましたが、子どもが小学生になった頃から、徐々に症状が落ち着いてきたといいます。
そして3年前、「夢をみたんです」とsakoさん。
教員時代に聴いていた、アメリカのインディーロックバンドVampire Weekendのボーカルであるエズラ・クーニグが、ライブを最前列で聴くsakoさんに向けて演奏する夢を見たのだといいます。
目覚めたsakoさんは、「私好きだった」。
夢中になっていた当時手に入れたCDは保管してありましたが、プレーヤーがみつかりません。サブスクで聴き、「ああ、そうだった」と当時の気持ちをどんどん取り戻していったのだといいます。
そこからは、一番「推し」ていた、エズラの現在をインターネットで検索。インターネットラジオで番組を持っていることを知り、その番組「Time Crisis」を聞いてみましたが「全然わからなかった」。
「昔あれだけ英語を勉強していたんだから、わかるだろうと思ったんですけど」とsakoさん。しかし、楽しそうに話すエズラの声を聴き、「何を話しているのか知りたい気持ちが強くなった」といいます。
そこから再び英語に向き合う気持ちが高まったsakoさんは、半年後のTOEIC試験を受けることを目標に、勉強を始めます。「何度も受けてお金を使いたくない」と、一発勝負を決意しました。
とはいえ、体調を気遣いながら、家事育児をこなす日々に学習を採り入れるのは簡単ではありません。
sakoさんは夫と子どもを送り出したあとの朝、30分ほどかけてNHKラジオの「ラジオ英会話」で学習。さらに、エズラのラジオ番組を、掃除やアイロンがけをしながら聞き続けたといいます。
単語などを学べる語学学習用のアプリを使って、すき間時間にスマホで学習。机に向かう時間はTOEICの公式問題集を解くごくわずかな時間だけだったそうです。
そして、2024年の3月に受けた試験では、990点満点のTOEICで895点の高得点を獲得しました。
TOEICのAからEの5段階の指標では、860点以上はAの「Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる」とされています。
「努力が実ってよかった」と振り返るsakoさん。
最近では、子どもの成長に加え、自分自身の体調の落ち着きもあり、「外で働きたい」という意欲がわいてきたといいます。
「ブランクが長いので不安ですが、この結果があることが、お守り的な存在にもなります。英語力が生かせる仕事があるといいなと思います」
英語学習の熱が再燃するきっかけとなった、「エズラが話していることを聞き取りたい」という目標については「だいぶできるようになってきた」といいます。
番組の共同ホストとエズラとのやりとりで、笑うタイミングが同じだったりすることもあり「まだまだわからないところはありますが、一緒に笑えるようになったことがうれしい」と話しています。
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