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友人が失踪、SNSたどると…「闇バイト」疑似体験のゲーム、学校で

「大人なら判断のつく一般的な知識がないからこそ」

「レイの失踪」について、東京都主催のスタートアップコンテスト「Tokyo Startup Gateway」で発表する、classroom adventureの今井善太郎さん=同社提供
「レイの失踪」について、東京都主催のスタートアップコンテスト「Tokyo Startup Gateway」で発表する、classroom adventureの今井善太郎さん=同社提供

目次

突然、失踪してしまった友達のSNSを探索したら「闇バイト」とつながっていた――。SNSや求人情報サイトから応募した人を犯罪に加担させる「闇バイト」。若い世代が関与し、被害者が殺害されてしまう事件も報じられています。そんななか、スタートアップ企業が「闇バイト」を疑似体験して学べるゲームを開発しました。どんな思いでつくられたのか、話を聞きました。

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ゲーム名は「レイの失踪」

「5分でわかる!『レイの失踪』| 闇バイト対策ゲームプログラム」とされた紹介動画 出典: クラスルームアドベンチャーのYouTubeチャンネルより

闇バイトの手口を学ぶことができるゲームは、スタートアップ企業「classroom adventure」が開発した「レイの失踪」です。

classroom adventureはほかにも、ファクトチェックやインターネットリテラシーを教育現場で学ぶためのプログラムを開発しています。2年前、慶応義塾大学の学生が立ち上げました。

「闇バイト」は、「#ホワイト案件」や「#高額報酬」といった言葉を使い、犯罪の実行者を募集するもの。通称として「闇バイト」と言われていますが、警察庁は注意喚起のページで「犯罪実行者募集情報」と言い切っています。

昨年、その闇バイトによる事件が相次いだころ、classroom adventureには教員関係者から「闇バイトが心配」「教育プログラムを作ってもらえないか」といった声が届き始めたといいます。

副代表の今井善太郎さんは、「調べてみると、『闇バイト』についての教材はなかったため、自分たちになにかできることはないかとすぐに作り始めました」と話します。

関心が高まっているうちにプログラムを提供したいと、昨年11月に開発に着手。12月にはリリースしました。

ゲームのストーリーは友人の「レイ」が失踪したことから始まります。友人たちがレイのSNSを探索すると、「闇バイト」とつながっていることを知り、警察に通報するまでの流れを、その世界観に没入しながら学ぶことができます。

ゲームのプレイ中画面のイメージ=classroom adventure提供
ゲームのプレイ中画面のイメージ=classroom adventure提供

匿名アカウントで垣間見た世界…「正直衝撃」 

開発にあたり、今井さんたちは闇バイトの実態や対策を正確に把握しようと、警察庁など公の機関が発信している注意喚起や、メディアによる情報をチェックしました。

次に、SNSの匿名アカウントを使い、「ホワイト案件」を調べたといいます。身元を明かさない範囲で募集投稿の主体にアクセスすると、やりとりの一端をのぞき見ることができたそう。

「こんなに簡単にアクセスできるところに、ここまで危ないやりとりがあるのは、正直衝撃的でした」と今井さんは話します。

これらの情報を元に、ゲームの開発を始め、なかでも三つのポイントを重視して学べるように構成しました。

一つ目は、犯罪者集団から「ターゲットにされない」ということ。

ハッシュタグを検索して自分から犯罪グループにアクセスして犯罪に巻き込まれるケースもありますが、「お金に困っている」と発信したり、懸賞企画に応募したりするアカウントには、犯罪グループから近づいてくることもあります。今井さんは「情報発信のリテラシーが大切」と話します。

次のポイントが「ファクトチェックのスキル」。闇バイトの募集は、求人サイトに紛れているケースもあると指摘されています。普段見ている情報の中から、怪しいと思う言葉などを見抜く力をつけることを重視しました。

最後に「相談先を知らせること」。もし足を踏み入れてしまったり、友だちが関わっているとわかったときでも、「相談できる先を知っていれば、立ち止まることができる」と考えたそうです。

ゲームのプレイ中画面のイメージ=classroom adventure提供
ゲームのプレイ中画面のイメージ=classroom adventure提供

ゲームでの追体験と、振り返りのプログラム

「レイの失踪」を含めた、メディアリテラシーの教育プログラム「レイのブログ」は、東京都主催のスタートアップコンテスト「Tokyo Startup Gateway」で昨年末、最優秀賞を獲得しました。

それを機に、ゲーム内容について警察関係者にも助言を受け、内容を順次アップデートしているといいます。

これまで、ゲームによる闇バイトの追体験と、その後の振り返りを含めた教育プログラムを実施したのは、中学から大学までの5校ほど。来年度以降、すでに30校ほどでの実施が決まっています。

すでに実施した学校でのプログラムでは、「闇バイト」という言葉を知らなかった生徒・学生はいなかったそうで、今井さんは「ある先生からは、高校入試の面接をしているときに関心のあるニュースを聞くと、ほとんどが闇バイトを挙げたと聞きました。中高生の関心も高いことを感じました」と話します。

基礎的な知識がない…巻き込まれる可能性

一方で、生徒たちは「関心はあるけれど、具体的なことは知らなかった」とも感じたといいます。なかでも、「働くことへの知識がないことに気づかされた」と言います。

「ゲームの振り返りの中で『報酬形態が適切かどうか見てほしい』と伝えても、いまいちピンときていませんでした。詳しく聞くと、そもそも職場で採用されるまでの過程、適切な報酬額や報酬形態、最低賃金など、労働にまつわる基礎的な知識がありませんでした」

今井さんは「確かに学校生活ではわからないことです。大人なら判断のつく一般的な知識がないからこそ、犯罪に巻き込まれてしまう可能性があるんだ、と気づかされました」と話します。

「今後は、リテラシーのボトムアップのために、このプログラムを届けないといけないと感じています」と話しています。

ゲームのプレイ中画面のイメージ=classroom adventure提供
ゲームのプレイ中画面のイメージ=classroom adventure提供
       ◇
「レイの失踪」についての問い合わせはclassroom adventureまで。
https://www.classroom-adventure.com/rays-gone

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