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「当たり前のように泳いでくるやん!」カピバラ〝野生〟の姿に驚がく
〝カピバラ〟と聞いて、どんな姿を思い浮かべますか? 温泉でまったり……と思いきや、ピラニアなど、アマゾンの魚とともに自由気ままに泳ぐ映像が話題になっています。野生に近い姿を展示している水族館に話を聞きました。
《当たり前のように泳いでくるやん!!》。そう投稿した動画には、大水槽で泳ぐアロワナやピラニアなどが映っています。しかしその直後、〝魚〟ではない動物が水槽の右端から突如現れます。カピバラです。
深さ2メートルほどの水槽を、水底を蹴って縦横無尽に泳ぐ姿は、まるで飛んでいるかのよう。
この動画には「小さい温泉に入ってるイメージしかなかったから新鮮」「こんなに潜水能力高いんだな」と既存のイメージを覆された人が多く、8万回表示されるなど話題になりました。
#なかがわ水遊園
— えいぼう (@ornateeagle46) January 18, 2025
当たり前のように泳いでくるやん!! pic.twitter.com/zz0eR8na6C
撮影したえいぼうさんによると、1月18日に、なかがわ水遊園で飼育されている淡水エイを見るために来園したところ、〝泳ぐカピバラ〟を目撃したそうです。
カピバラは展示スペースの〝陸地〟部分に座り込んでいましたが、昼ごろに、陸地部分と地続きの水槽に移動して「おもむろに入水」しました。
しばらく腰のあたりまでつかった後、どんどん水の中を進み、映像の水槽まで行って潜水。
5分ほど泳ぐと、水から上がって干し草が敷いてある場所で休憩しました。その約2時間後に、ふたたび泳ぎ始め、5分ほどで陸に戻ると、またのんびり食事を始めたとのこと。
えいぼうさんは、カピバラが「泳いでいる瞬間」を見られたことに喜びつつ、「ごく当たり前にカピバラと魚たちが混泳している様子がとても素敵だなと感じました」と話します。
これまでテレビ番組などを通して、野生のカピバラが水辺に住んでいることは知っていたそうですが、「こんなにもすいすいと泳ぐことができることに驚きました」と言い、野生本来に近い姿を引き出した水族館の展示の工夫に感心していました。
栃木県の「なかがわ水遊園」に話を聞きました。日本最大級の「川の水族館」として、関東一の清流那珂川から世界の川(アマゾン川)、サンゴ礁に生息する魚まで展示しています。
泳ぐカピバラが目撃されたのは、そのうち「アマゾン大水槽」のエリアです。ここでは、400トンの巨大水槽に100種類の魚が展示されています。水中トンネルなどもあり、アマゾン川の魚を展示する水槽としては「日本最大」という規模。
アマゾン大水槽エリアを担当する森絢女(あやめ)さんによると、園では魚に限らずアマゾン川流域の代表的な生き物を展示しようと、2011年に陸地部分でカピバラの展示を始め、その後もフタユビナマケモノやインコなどへ飼育を広げていったそうです。
現在飼育しているカピバラは5歳のオス「ミチル」です。ちょうど1年前に、那須どうぶつ王国からなかがわ水遊園にやってきた4代目のカピバラ。〝ふるさと〟の那須どうぶつ王国では冬場にカピバラが「ゆず湯」の温泉でのんびりと過ごす姿が有名です。
新生活はまったくの異世界。ミチルは当初、熱帯雨林をイメージした巨大水槽には、近寄ろうとしなかったそうです。
先代の茶々丸(23年に死去)は「泳ぐカピバラ」として名を馳せましたが、ミチルは「けっこう臆病な性格」。でも飼育員たちは「ミチルの気分に任せよう」と気長に見守りました。
昨年11月にはエリアの改修で陸地を広げ、水に出入りしやすいように低い階段を作りました。カピバラは飼育下の寿命が10~14年ほどで、今は若いミチルも、今後、年を取っても過ごしやすくなるようにと考えての〝バリアフリー〟改修でした。
すると改修の効果かミチルは活発になり、大きな魚がいるエリアもぐるぐると泳ぎ回るように。最近のミチルは「こんな活発な子だったんだ」と飼育員が見違えるほどだそうです。
なぜ、泳ぐのでしょうか。
森さんによると、カピバラは草食のため魚は食べませんが、水槽の周りにある植栽を食べようと「エサを求めて」泳いでいたり、皮膚が乾燥しやすいため乾燥を防ぐために水に入ったりしているそうです。
また野生では天敵から身を隠さなければいけないので、自分のニオイを残さないように水辺で排せつしているそう。
水槽にはピラニアなど肉食の魚もいますが、「ピラニアはとても臆病で、自分より大きな動物が来ると一目散に逃げる」とのことで、カピバラは魚たちと共生できているようです。
ミチルのスイスイタイムの撮影に成功しました📷
— 栃木県なかがわ水遊園【公式】 (@tnapofficial) January 19, 2025
水中にいる時の方がおめめがパッチリしていますね👀#カピバラ pic.twitter.com/1Kn0FKRVOg
ちなみに「泳ぐカピバラ」が見たい時は、いつを狙うのが良いか聞いたところ、森さんは「私たちも知りたいです」と即答。
カピバラが泳ぐのは天気か、時間帯か、はたまた湿度なのか、さまざまな仮説を立てて、先代の茶々丸のときに2年間の入水記録を取りました。それを分析したところ、泳ぐ傾向は「分からない」という結果に終わりました。
「泳ぎたいときに泳いでいる」らしく、ミチルも同様で、水だけ飲んで満足してあとは干し草の上でずっと寝ているという日もあるそうです。「カピバラの気分次第なので、気長に待っていただくしかないのです」
しっぽもなく、表情で感情を表すことも少ないカピバラ。飼育に、入社当初の10年前からかかわってきた森さんでも、エサを見ると「目の輝きが変わる」というわずかな変化以外、いまだにカピバラが「何を考えているかは分からない」と言います。
一方で、そんな何を考えているか分からない姿がファンを増やしている理由かもしれない、と森さんは考えます。
キャラクターにもなって、ほのぼのとしたイメージで愛されているカピバラですが、森さんは展示を通して「実はすごく素早く動けて、すいすい泳ぐ、活発な動物」という野生本来の姿も知って欲しいと願っています。
日々、陽が降り注ぐ園内で、自由気ままに泳ぎ、おなかを出して寝ているというミチル。
高温多湿の環境下では、泳いでひなたぼっこしてを繰り返していると、毛皮にこけが生えてくる姿が野生ではよく見られており、先代の茶々丸も「緑のカピバラ」と呼ばれるほどのこけをたくえわえていました。
森さんは「このペースでいくと、ミチルもじきに〝緑のカピバラ〝2世になりそうです」と見守っています。
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