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「耐荷重が気になる」 レンジフードに乗る〝猫様〟に 公式の答えは
キッチンのレンジフード(換気扇)にちょこんと座るネコ。気持ちよさそうですが、そういえば、ここの「耐荷重」って大丈夫? そんな疑問に、メーカーが答えた回答がSNSで話題になっています。ネコのみならず、あの〝ひさし〟って何か置けそうだと考えたことありませんか? メーカーに聞きました。
《換気扇のこの部分の耐荷重が気になる。
教えてPanasonicさん。》
この投稿には「うちもやる…」「猫ちゃんのまったりスポット」など愛猫家からの共感が相次いだほか、「物を置く想定でないのなら、その形状の意図も教えてほしい」と疑問の声が上がりました。
換気扇のこの部分の対荷重が気になる。
— 猫整体 キュベレイ (@cybele_nakano) November 9, 2024
教えてPanasonicさん。 pic.twitter.com/Y7EcFHySKw
「猫整体 キュベレイ」さんに話を聞くと、ネコ7匹を飼っているとのことですが、レンジフードに乗るのが好きなのは、体重5.5キロの「チャイ」くんだけ。
「直接登るところを見たわけではないのですが、おそらくキッチンからダイレクトにジャンプして飛び乗っていると思います」
チャイくんは、ドアの上にも乗ってしまうという「高いところに登りたがり」の性格。かと言って、このままレンジフードに乗っていてもいいものかと考えあぐね、投稿したのだといいます。
《こんにちは。
レンジフードにつきまして、この部分は物を置く想定になっておりませんので、安全上、猫様はお乗りにならないようにお願いいたします》
《猫様の習性上、この場所は高くて居心地のよい非常に魅力的な場所でございますが何卒ご注意いただけますと幸いです》
ネコのスタンプとともに〝猫様〟呼びにも親近感を持つ人が現れ、Xでは続々と「愛猫」がレンジフードでくつろぐ様子が投稿されました。
これに、パナソニック側も「パニャソニックです」「ここに乗っちゃうと飼い主さんが焦ってニャーニャー下から言ってきて手をのばしてくるにゃ」と〝猫語〟で降りるよう説得を試みるなど、シャレのきいた展開が繰り広げられ、回答の投稿には8万以上のいいねがつきました。
こんにちは。
— パナソニックの住まい 「すむすむ」 (@sumai_panasonic) November 11, 2024
レンジフードにつきまして、この部分は物を置く想定になっておりませんので、安全上、猫様はお乗りにならないようにお願いいたします🙇… https://t.co/bquYge5BUq
パナソニック ハウジングソリューションズに聞きました。答えてくれたのは、水廻りシステム事業部の塚元伸二さんと、綾部香織さん。
まず、レンジフードのあの〝ひさし〟部分、正式名称はないそうです。
では、何キロまでなら乗せても大丈夫なのか聞いたところ、そもそも「耐荷重」が設定されていないとのこと。塚元さんは「物を置く設定にしていないので、何も載せないでほしいです」と指摘します。
レンジフードが変形したり、重さに耐えきれず落ちてくるという危険もあるそう。では、空き箱など軽いものならどうでしょう?
「やっぱり、メーカー的には大丈夫とは言えないです……。耐荷重などの問題以前に、調理中に上から物が落ちてきて、コンロの熱い油に入ったら……。お客様や猫様にけがをさせてしまうことになりますので」
Xでは、ネコがレンジフードに乗れないように物を置いて阻止するなど予防策のアイデアも上がりましたが、「メーカーとしては、『これなら良い』とは言えないので、苦しいところです」。
では一体なぜ、ネコが乗りたくなったり、物を載せたくなったりするような〝ひさし〟がついているのでしょうか。
そもそも、この〝ひさし〟は、最近主流になっている「スリムデザイン」のレンジフードについているもので、従来使われてきたコンロの上を覆うような「ブーツ型」にはないものでした。
スリム型は、キッチンが独立したものでなく、リビングやダイニングと一体になった「対面キッチン」などが人気になるにつれ、主流になってきているそう。
「キッチンも家具のように空間になじむように見せたいという要望が増えて、レンジフードも『存在感』をより抑えたものにする人が増えたのです」と綾部さんは話します。
存在感ごと〝薄く〟小さくなっていったレンジフード。でも「ひさし」は残りました。理由は「消防法」。
「消防法」によると、レンジフードは、ガスコンロやIHなどトッププレート(火を使用する設備)の寸法以上にすること、と決められているそうです。
一方で、上に伸びる換気扇やダクトなどは排気量が確保されていればサイズについては規定がないため、できるだけ「スリム」にすることができたそう。
結果として〝ひさし〟のように残ってしまった部分ですが、そこにも大事な役目がありました。
整流板という煙の吸い込み口があるのです。スリムで頼りなく見えるものの、トッププレートの広い範囲から効率的に油煙を吸い込むことができるような仕組みになっているそうです。
スリム型のレンジフードの〝ひさし〟は、ネコが乗るだけでなく、ホコリもたまりそうですが、「実はブーツ型よりも、油の付着する面積が少なくなったので、スリムタイプの方がお手入れは簡単です」。
お手入れする目安は「月に1回、軽く拭き掃除する」と良いとのこと。
そこまでできない……という方のために、放置した汚れを落とす方法も聞きました。
キッチンの頑固汚れ用のアルカリ性スプレーは、レンジフードの塗装がとれやすくなるため使うのは避けた方が良いそうです。その代わり、「中性洗剤をお湯に溶かして、スポンジを浸して軽く絞って拭く」のがベスト。
それでも落ちない、こびりついた汚れには「キッチンペーパーを中性洗剤を溶かしたお湯に浸して、絞って、貼り付ける。その上からラップで〝パック〟すると、格段に落ちやすくなります」。
そこまで聞いても、やっぱり「ネコが乗れない〝ひさし〟なんていらない!」という方には、トッププレート自体の奥行きをスリムにして、レンジフードの〝ひさし〟を出づらくした商品もあるとのことです。
ユニークな回答で話題になったパナソニックのX投稿。担当していたコミュニケーション企画室の眞鍋優子さんは「パナソニックは家電のイメージがあり、住まいのパナソニックはグループ内で見ると、なかなか認知されにくいアカウントだったのですが、皆さんの関心事から存在を知っていただけて大変うれしく思います」と話します。
話題になった「猫様」呼称ですが、実は眞鍋さんも「愛猫家」で、回答を作る際に、「なんてお呼びしたらいいのか?」と考えた末、「『お客様』に対応するのは『猫様』だ」と思いついたと言います。
ちなみに眞鍋さんの家の猫様は「小さい頃はレンジフードに乗るのが好きだった」とのこと。しかし3歳になり、大きくなるにつれてだんだんと飽きたのか、乗らなくなっていったそうです。
投稿した回答が話題になった後、「ダメなんですけど、試しに」レンジフードに乗せようとしてみたところ嫌がったとのことで、「個体の性格や年齢にもよるのだろうなと思います」。
眞鍋さんは普段からSNSではフォロワーさんなどからの返信に寄り添った回答を心掛けていると言い、今回もXに集まった「80点以上の猫様の画像」はすべて見たとのこと。メーカーの立場として反応しづらいものに返信できなかった心苦しさを感じつつ、「世界中の猫様が幸せでありますようにと願っております」と話していました。
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