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連載

#138 #父親のモヤモヤ

「男は仕事」父親を悩ます〝古い価値観〟「弱さを見せられない」本音

「大黒柱プレッシャー」を感じる人も

18日に開かれたイベントで参加者に募集した「『イクメン』と聞いて思いつく単語」
18日に開かれたイベントで参加者に募集した「『イクメン』と聞いて思いつく単語」

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

 

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「忙しそうに振る舞ってしまう」「ワンオペをほめられたいという日もある」。子育てと仕事の両立に取り組む父親コミュニティが、11月19日の「国際男性デー」を前にトークイベントを開きました。キーワードは「カッコつけがち」。共働きでフリーランスの父親3人が、仕事や育児での「カッコつけがち」な部分を語り合うことで、なかなかはき出せない男性の弱音を引き出せたら、という意図がありました。

※国際男性デーは、男性や男の子の健康、男性のロールモデルなどに目を向け、ジェンダーの平等を促す日として、1999年にカリブ海の島国トリニダード・トバゴで始まり、各国に広がったとされる記念日です

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語られた父親たちの本音

「仕事では忙しい時期と案件のない谷間の時期がありますが、周囲には常に仕事が忙しそうに振る舞ってしまいがちです」

11月18日、国際男性デーを前に開かれたオンラインイベント。4歳の長男を育てるIT講師の奈良大輔さん(39)=山梨県在住=がそう明かしました。

「男性で働いていないと思われるのが嫌だなとか、働いていないことで相手に疑問に思われるのを避けたいという気持ちがあります」

4歳の長男を育てる会計士の中山航さん(36)=神奈川県在住=も、「なんとなく全速力でやり抜かないといけない、休暇を取ってはいけない、『働いていることが正義だ』ということなのかな」と共感を寄せていました。

イベントを主催したのは、2016年から活動を続けるコミュニティ「一般社団法人Papa to Children」です。父親を中心におよそ50人が参加しています。

イベントで語られた「カッコつけがち」というキーワードは、設立当初からコミュニティ内でよく話題に上がっていたそうです。

(画像右上から時計回りに)「一般社団法人Papa to Children」の中山航さん、代表理事 の三田村忠仁さん、奈良大輔さん、理事の高橋俊晃さん
(画像右上から時計回りに)「一般社団法人Papa to Children」の中山航さん、代表理事 の三田村忠仁さん、奈良大輔さん、理事の高橋俊晃さん

「カッコつけ」の背景には

コミュニティの創業理事でコンサルタントの高橋俊晃さん(42)=東京都在住=は、父親が「カッコつけがち」になる背景には「世の中の価値観」が関係していると考えています。

「『男は弱音を吐くな』『強くあれ』『仕事だけしてればいい』という時代の空気を吸ってきた分、そういった価値観が少なからず男性にも女性にも内在化されていると思います」

「それでパワーが出て頑張れる、というようなポジティブな効果もありますが、無意識に自分を縛って苦しめる鎧(よろい)のようになっているケースも多いです」

今回のイベントでは、自身も「仕事では自分で何とかするという気持ちを持ちすぎていて、助けを求められず、限界だという気持ちを閉ざしていた」と振り返りました。

高橋さんは9歳と6歳の息子を育てていますが、「『男は仕事、女は家庭』という価値観を根強く感じる中で、育休を取ったり子育てを頑張ったりするパパたちは、外部からも、内面からも『男らしくないぞ』というプレッシャーを感じがちです。それによって『カッコつけがち』になってしまいます」と話します。

父親の等身大の悩みや思いをさらけ出せる場を作りたいという願いから、コミュニティのホームページにもあえて、「現代のパパたちは『男らしさ』に縛られたり、小さなプライドに囚われたり、ついかっこつけてしまいがちな面があると思います」と書いたそうです。

出典:Papa to Childrenのホームページより

「イクメン」は自称で使わない

イベントでは、「『イクメン』という言葉の認知度は約9割だが、使用率は1割未満」という、明治安田生命の調査(※)結果をもとに、意見も交わされました。
※0~6歳の子どもがいる全国の既婚男女1100人を対象に2024年9月に実施

「『イクメン』は自称で使わない」と高橋さんが指摘すると、中山さんも「『今日ワンオペだ』とあえて公開している方もいるけど、普段していなくて特別だから発信するのかもしれない。それはある意味『カッコつけている』のでは」と話しました。

一方、奈良さんは「『ワンオペをほめられたい』というのは自分の意識にもあると思います。まさにワンオペで一日中やったときはほめられたいなぁと思うし、ぽろっと自慢することもあって、カッコつけがちですね」と話します。

参加者らに「『イクメン』と聞いて思いつく単語」を募集したところ、「育児する男性をポジティブにした社会記号の1つ」「イクメン(笑)と接される」「妻側がなんだこれと怒ってる」といった意見が寄せられました。

高橋さんは、「『イクメン』という言葉が男性の子育ては善きことと後押ししてくれたが、男性だけほめられるのはおかしいよね、とモヤモヤワードになってきたと思います」。

中山さんは、「普通に父親をしているだけなので、特別な名前はつけなくてもいいと思う」と話しました。

「『イクメン』と聞いて思いつく単語」について、「育児する男性をポジティブにした社会記号の1つ」「イクメン(笑)と接される」「妻側がなんだこれと怒ってる」といった意見が寄せられました
「『イクメン』と聞いて思いつく単語」について、「育児する男性をポジティブにした社会記号の1つ」「イクメン(笑)と接される」「妻側がなんだこれと怒ってる」といった意見が寄せられました

男性も育児が当たり前の社会で

厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、2023年度に育児休業を取った民間企業の男性の割合は30.1%で、過去最高になりました。

少しずつ男性の育児が「当たり前」になってきていますが、イベントでは依然として「大黒柱として期待される」「弱さを見せてはいけない」「仕事以外でもほめられたい!」というモヤモヤが紹介されました。

高橋さんは、「もともとあった『大黒柱プレッシャー』がなくならないまま、子育てのプレッシャーも加わって、『新しい男らしさ』へのとらわれが出てきているようにも感じる」と懸念を示しました。

「弱さを見せてはいけない」という点について、奈良さんは「今後ひっくり返るのではないか」と期待を込めます。

「子どもが生まれたあとは、女性だけでなく男性の環境にも変化があり、男性でもうつになると指摘されています。 男性も弱さを開示できることがよしとされる社会的風潮が作られるといいなと思います」と話していました。

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共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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