話題の晴海フラッグのすぐそばに、何やら昭和の雰囲気を感じるレトロな建物が。近づくとそこからは“だし”のいい匂いがしてきて――。看板に「東京鰹節センター」とあるこの建物では、いったい、何が行われているのでしょうか。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
<東京五輪のレガシーでもある旧選手村のマンション群、晴海フラッグのほど近くを歩いていると、何やら“だし”のようないい匂いがしてきます。年季の入った看板には、「東京鰹節センター」の文字が。鰹節に関係することはわかりますが、いったい何の建物なのでしょうか。>
結論から言うと、この東京鰹節センターは、鰹節の卸売業者が所属する「東京鰹節類卸商業協同組合」の施設です。同組合の担当者に話を聞きました。
同組合には10月末時点で55の組合員(鰹節問屋のこと)が加盟。東京鰹節類卸商業協同組合の前身である東京鰹節問屋組合は1887年設立で、明治時代までさかのぼる約140年の歴史があります。その後、1947年に東京鰹節類卸商業協同組合が設立されました。
このセンタービルの落成は50年以上前の1971年6月。センタービルは組合員の一部が会社、倉庫、作業場等として利用するほか、競(せり)も開催されています。また、同敷地内には中央区・佃の住吉神社の分社(住吉神社晴海分社)があるのも特徴。周辺の深い歴史を感じさせます。
基本的に卸売で、一般の人の立ち入りはお断り。問屋さんたちということで、たくさんの鰹節が集まっているため、ビルに近づくといい匂いがしてきます。
晴海地区では周辺と一体の再開発計画も進んでおり、いずれは東京鰹節センターの建物も見られなくなってしまいます。ただし、現時点では具体的な予定はないということでした。
この建物が気になった人には「鰹節をお使いいただければ幸いです」と同担当者。東京の新旧の文化が混在する、今だけの風景を、近くに立ち寄った際に確認してみるのはいかがでしょうか。