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図書館が「ルーツ」を調査…沖縄で事業化 「豊富な郷土資料」生かす
資料収集や、渡航記録のデータベース化も
本を借り、返し、勉強し――。図書館にどんな思い出がありますか? 図書館の先進的な活動を表彰する「Library of the Year」の最終選考会がありました。図書館のレファレンス機能を生かして、利用者の「ルーツ」を調べる、沖縄県立図書館のプロジェクトが大賞を受賞しました。どんな取り組みなのでしょうか?
図書館の先進的な活動を選考し、顕彰する「LIbrary of the Year」。NPO法人知的資源イニシアチブ(IRI)が主催し、図書館総合展運営委員会が共催しています。2006年から開催され、これまでに89の機関や活動が表彰されました。
11月7日の最終選考会では、沖縄県立図書館の「Finding Okinawa Roots」プロジェクト、大阪府の泉大津市立図書館「シープラ」、国立がん研究センターの「がん情報ギフト」プロジェクト、岡山県の真庭市立図書館の取り組みについて、それぞれの担当者から発表がありました。
大賞をとった沖縄県立図書館の「Finding Okinawa Roots」プロジェクトは2016年から始まりました。
沖縄からハワイやブラジルなど海外に移り住んだ歴史を持つ人たちに関わる資料を提供する事業です。
担当者で司書の原裕昭さんは「豊富な郷土資料があり、個人の情報ニーズに応えるレファレンスサービスを実施している図書館だからこそ、この取り組みを実現できる」と語ります。
事業開始以来、自身のルーツを知りたいと訪れる人たちから計2000件ほどの調査依頼があり、いまでは年間200件ほどの調査依頼があるといいます。
さらに、資料収集や、渡航記録のデータベース化にも取り組んでいます。
原さんは「ルーツ調査というレファレンスサービスを通じて、海外と沖縄との絆の再構築に努めています」といいます。このプロジェクトは、図書館の事業として予算化され、県の文化芸術振興計画にも盛り込まれています。
ほかに選考会で発表されたのは、大阪府泉大津市立図書館「シープラ」の取り組みです。「子どもの読書活動推進計画」の策定段階で、実際に子どもの意見を取り入れたことでした。
担当者は「策定では多くの場合、有識者による会議が開かれますが、本好きの大人が考えても本を読まない子どものことはわからない。わからないことは子どもに教えてもらったらいい」と、小中学生を中心としたワークショップを開催したといいます。そこで出た意見を元に策定を進めたのだそう。
その結果できた計画の「目標とする姿」はこうです。
「様々な場所や方法で、こどもが自ら情報にアクセスすることができる環境を大人が整備することにより、わからないことは調べ、知ること読むことを喜びに感じ、伝えることができ、かつ将来への想像もできるようになる」
岡山県の真庭市立図書館は、「真庭校歌研究室」の取り組みを発表しました。
真庭市では、人口減に伴い学校の統廃合が進み、戦後75校あった小中学校がいまでは26校にまで減少しているといいます。
「真庭校歌研究室」は、すべての学校の校歌情報を集めるプロジェクトで、現在全体の3分の2まで情報が集まっているそうです。
校歌を歌っている様子を動画で残し、YouTubeで配信するなどの取り組みも進めているのだそう。
他にも、来館者が企画したイベントを実行する取り組みも。例えば、本に囲まれて図書館で一泊できる「お泊まり図書館」や、「積ん読本」を紹介し合う回も開催しています。
担当者は「人口減に悩む市だが、大人も子どもも、一人一人が『この町なら何かできる』『暮らしていける』と思ってもらえるように挑戦を続けたい」と意気込みを語っていました。
国立がん研究センターの、がんにまつわる正確な知識を専門家の知見をもって図書館などを通じて全国に広げる活動「がん情報ギフト」プロジェクトについても発表がありました。
一般参加者の投票によって決まるオーディエンス賞と大賞は、いずれも沖縄県立図書館の「Finding Okinawa Roots」プロジェクトが受賞しました。
原さんは「プロジェクトを通じて依頼者に喜んでいただき、感動していただくこともあり、図書館職員になってよかったと思った。この取り組みを共有させていただき、他の図書館とノウハウや経験を共有して広げていきたい」と語りました。
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