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#7 withnews10周年

「味方でありたい」悩みと向き合う臨床心理士みたらし加奈さんの願い

広がる〝お悩み相談〟への懸念もあります

みたらし加奈さんの連載「味方でありたい」
みたらし加奈さんの連載「味方でありたい」 出典: 朝日新聞デジタル

目次

「自分の考えを押しつけない」「決めつけない」。臨床心理士として活動するみたらし加奈さんは、悩みに答える際に気をつけていることがあります。現在、SNSなどでは多くの人がモヤモヤをはき出し、見ず知らずの人にも気軽に相談できるようになりましたが、みたらしさんはそこに潜む〝危うさ〟も感じているそうです。モヤモヤを受け止める立場としての想いを聞きました。

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みたらし加奈さん
1993年東京都生まれ。大学院卒業後、総合病院の精神科に勤務。現在は国際心理支援協会に勤務しながら、メディアにも出演し、SNSを通してLGBTQに関する情報発信や精神疾患の認知を広める活動を行っている。専門家と共に性被害や性的同意に関する情報発信をおこなうNPO法人『mimosas(ミモザ)』の代表副理事。書に『マインドトークあなたと私の心の話』、『テイラー声をさがす物語』。
 

「味方でありたい」

臨床心理士として多くのカウンセリングを担当し、メディアを通じてたくさんの悩みと向き合ってきたみたらし加奈さん。現在、朝日新聞デジタルRe:Ronの連載「みたらし加奈の味方でありたい」で読者の悩みに答えていますが、「味方でありたい」という言葉には、みたらしさん自身の覚悟が込められています。

モヤモヤに答える際に意識しているのは、「自分の考えを押しつけないこと」です。

「お悩みというかたちでメッセージを送ってくださる方は、何かしらのアドバイスを求めている場合が多いと思います。私の実体験を紹介したり、専門的な知見からの意見を提示したりしますが、あくまでそれは私が行き着いたものです。いくつかの選択肢を提示して、『押し付けない』『決めつけない』形で参考になれば、と気をつけてます」

社会の先入観を前提にしないことにも気を配ります。恋人に関する相談があったときも、異性愛と決めつけず、「できるだけ主語を開いていくことを意識している」そうです。

「私のところに寄せられる質問は、性被害や性的同意、ジェンダーセクシャリティーといった内容が多くあります。『もしあなたがこういう思いや不安を抱えているのであれば、それはあなたのせいではないし、私はあなたの味方でありたいと思ってます』という言葉の選び方をするようにしています」と語ります。

「『味方でありたい』というのは、ときにエゴになってしまうこともある。それでもエゴだけで終わらせず、自分の持っている専門知識とともに、あなたの痛みを一緒に引き受ける覚悟があるという『味方でありたい』でもあります。味方であるために考え続けることへの、自分自身への約束のようなものなのかもしれません」

【関連記事】朝日新聞デジタルRe:Ronの連載「みたらし加奈の味方でありたい」

相談を受ける側に必要な視点は

悩みを打ち明け、識者が答える人生相談のコーナーは、昭和初期から新聞などで続けられてきました。現代では、X(旧Twitter)やInstagram、YouTube、TikTokなど、多くのSNSで「お悩み相談」が広がっています。

みたらしさんは「誰かが誰かのサポーターになるといった風潮はいいことだと思います」と話します。

一方で、「必ずしも相談のすべてを専門家に頼らないといけないわけではありませんが、例えば睡眠が取れていない、明らかに食欲が落ちているなど体に影響が出ているのに、精神論的な部分で補おうとするのは心配です。専門家に相談した方がいいラインとそうでないラインはすみわけが知られてほしい」と指摘します。

しんどさを感じている人たちが悩みを表出化して送ってくれたものに対して、受け手のメンタルヘルスへの影響を考えずレスポンスしていないか――。そんな危惧を抱いているそうです。

「専門機関に相談することとそうでないことの違いを理解した上で悩み相談を企画してほしい。マスメディアであっても、悩みに対して真摯に向き合ってほしいと思います」

ネット上のコンテンツには、関心を引くために見出しやサムネイル(トップに表示される画像)に強い言葉を使ったり、あおるようなデザインにしたりするものもありますが、その表現方法への懸念もあるそうです。

みたらしさん自身、インタビュー記事でキャッチーなタイトルを付けられることに違和感があるといい、自身の連載では刺激的な言葉を使わないように意識しているといいます。

「アクセス数が大事なのは分かりますが、YouTubeなど多くのサムネイルやタイトルに強い言葉が使われているので、受け手の方も心がまひしやすい現状があるのかもしれません」

みたらし加奈さんの連載「味方でありたい」
みたらし加奈さんの連載「味方でありたい」 出典:朝日新聞デジタル

「言語化する」だけではない

お悩み相談の多くは、そのモヤモヤを言語化することが前提となっていますが、みたらしさんは「言語化しなくてもいい」と話します。

「カウンセリングは言語化が求められる場所と思われがちですが、言語化が苦手な人もいます。絵や図にした方が話しやすい人もいたり、人によって言語化できるタイミングが違ったり、グラデーションがある。言語化できない人たちが取り残されてしまうことは避けたいですよね」

モヤモヤや悩みを表現する方法は何であれ、「表出することは大事」だといいます。

「メンタルヘルスにおいて『健康な状況』とは、『抑圧せずに、答えが出ないことをそのまま持っておける状態』でもあると思うんです。生きる意味や意義なんて、本来は考えなくていいこと。でも答えが出ないまま、心がモヤモヤしているのは苦しい。それを一緒に持っておけるのがカウンセリングだったり、サポートだったりします」とみたらしさん。

「その一方で『自分がモヤモヤしてる』と受け止めてあげる力をつけるためには、モヤモヤを分解していく必要がある場合もあります。分解してみると、意外とシンプルなことだったり、自分でフィルターをかけてしまったりしていることもあるかもしれません」と語ります。

そんな思いで、専門知識を生かしながら寄せられた「お悩み」に回答しているみたらしさん。

「自分の回答がその方の選択肢の広がりを1ミリでもサポートする支えになったらいいな、1本の枝ぐらいの支えになればいいなと思っています」と話しています。

  ◇  ◇  ◇

朝日新聞デジタルRe:Ronの連載「みたらし加奈の味方でありたい」では、読者のみなさまからの悩みやメッセージに答えるかたちで考えていきます。みなさまの声をお寄せください。
【応募フォームはこちら】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdAAchIgWlWsf8VJNsMoLCWO-tpC-RQpys_AcEs2wVilA6Cxg/viewform
 
【イベント開催します!】

みたらし加奈さんも登壇する、withnewsの10周年イベント「【withnews10周年記念】ウェブメディア激動の10年 令和の温故知新フェス!」を、10月19日にオンラインで開催します。参加無料。

イベントページ

3部構成で、みたらし加奈さんが桃山商事代表の清田隆之さんと「モヤモヤのこれから」について語る第3部は、16時30分からの開催を予定しています。

出演者への質問も受け付けています。

【申し込み・詳細はこちら】https://withnews10th.peatix.com/

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