連載
#15 #コミュ力社会がしんどい
漢字が書けない「書字障害」だけではなかった…検査して分かった困難
毎年10月は、学習障害のひとつ「ディスレクシア(読み書き障害)」について理解を広めるための啓発月間です
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#15 #コミュ力社会がしんどい
毎年10月は、学習障害のひとつ「ディスレクシア(読み書き障害)」について理解を広めるための啓発月間です
もともとコミュニケーションが苦手だったゆめのさんは、30代になって専門病院を受診したところ、「注意欠如多動性障害(ADHD)」と「自閉スペクトラム症(ASD)」の診断を受けました。
以前から極端に漢字やひらがなが書けないことに悩んでいましたが、LDのひとつである「書字障害」とも診断されたそうです。書字障害は、文字や文章を書くことに困難を伴います。
そんななか、知人から読み書きや言語発達全般についてサポートするNPO法人LD・Dyslexiaセンター(千葉県市川市)を紹介されました。
センターでは現在、新規の受け付けはしていませんが、センターの理事長で発達性ディスレクシア研究会の理事長も務める宇野彰・筑波大学元教授の研究に協力する形で、検査を受けられることになったそうです。
知能や読み書き、認知機能の検査をした結果、宇野さんに指摘されたのは「発達性ディスレクシア(発達性読み書き障害)」でした。
「書くこと」が苦手なだけではなく「字を音読する速度が非常に遅い」とも指摘されたといいます。
まったく自覚がなかったゆめのさん。ただ、思い返してみると「本を読むときって、飛ばし読みしていてちゃんと読んでいないかも」と気づきました。
「どうも私は文字をざっと見て要所だけを読み、推測で全体を理解する読み方を身に着けていて、自分の読みの遅さに気づいていませんでした」
試しに一文字ずつ音読してみましたが、「時間がかかるし、変なところでつっかえる。読むのに苦労して内容が頭に入ってこなかった」そうです。
小学生の頃は何度ノートに漢字を書き写しても形を記憶できなかったという、ゆめのさん。親に相談しても「ちゃんと勉強すれば誰だって書けるようになるの!」と励まされるばかりで、劣等感だけが積み重なっていたそうです。
学校のテストでも、時間が足りなくなることが多々ありました。宇野さんによると、読むことが遅いと書くことも遅くなることが多いといいます。
小学校に行きたくなかったり、中学校時代には不登校も経験したりしたゆめのさんは、「自分が発達性読み書き障害であると、できれば子どもの頃に知りたかった」と悔やみます。
しかし、「困難の原因を知れば未来の選択肢が変わる。それは子どもでも大人でも同じ」と前向きに捉えているそうです。
「読み書きが苦手だった原因を詳しく知れたことで、長年のモヤモヤが晴れた気がしました」とゆめのさん。
「私のように気づかれにくい発達性読み書き障害を抱えている人は、子どもはもちろん大人にもたくさんいるのではないでしょうか」
発達性読み書き障害について知られる世の中になるように、漫画で伝えていくことを胸に誓ったゆめのさんでした。
(監修:発達性ディスレクシア研究会理事長・宇野彰さん)
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