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「美しい」「目で楽しむ」ガラスの〝お寿司〟 予約殺到、富山の体験
シャリのつぶつぶ感まで!
美しく透き通るエビ、つやつやのシャリーー。SNSに投稿された〝お寿司〟の画像に注目が集まりました。実はこれ、すべてガラスで作られたもの。富山ガラス工房の制作体験ですが、投稿がバズったことで予約が殺到して満席に。ガラス体験では珍しい、〝お寿司〟作りについて聞きました。
話題になったのは、9月上旬に富山市観光協会(富山市)のアカウントがX(旧Twitter)に投稿した画像です。
透き通ったガラス製のシャリの上に、ツヤツヤのガラス製のエビが乗っている、ガラスのお寿司。
「富山のガラス体験で作ったエビの寿司」というコメントとともにポストすると、「これは美しい」「目で楽しむ寿司」「なぜこれを作ろうと思った」といった反応が寄せられ、11万いいねがつきました。
富山市観光協会が運営する「すしのまちとやま」のアカウントでも10種類の〝お寿司〟の画像が投稿され、多くの人の目を引いています。
ついに9月6日(金)から富山ガラス工房にて、ガラスのお寿司制作体験が始まります! pic.twitter.com/s05bkHiGWh
— すしのまちとやま (@sushinomachitym) September 4, 2024
このお寿司は、9月6日から富山ガラス工房(富山市)で始まったガラスの制作体験のひとつです。
富山ガラス工房ではこれまでも多くの体験プログラムを開いてきましたが、お寿司は初めて。富山市の観光推進事業「すしのまちとやま」とのコラボで、10月31日までの期間限定企画だといいます。
お寿司のネタは10種類。マグロ・たまご・エビ・タコ・サーモン・ブリ・いくら・うに・白エビ・白エビ(海苔なし)が用意されています。
なかでもこだわりのネタは、富山の特産品であるブリと白エビです。富山らしいネタをどう表現するかスタッフ一同頭をひねりました。
富山ガラス工房スタッフの田中沙弥佳さんは、「ガラス体験でお寿司を作ることは珍しく、富山らしい企画だと思います」と話します。
10種類の中から希望のネタを選んで作れますが、田中さんによると一番人気はXで話題になったエビとのことでした。
ガラス体験というと、竿についたガラスを吹くイメージがあるかもしれませんが、今回のお寿司は溶けたガラスをそのまま加工していく「ソリッドワーク」という技法で作るそうです。
まずはネタから。溶解炉から透明なガラスを鉄の竿に巻いてきて、色ガラスの粉をつけます。その後、つぶしたり、筋をつけたりしてネタの形に整えるそうです。
シャリのつぶつぶした部分は、溶けたガラスにあらかじめ用意されたガラスの粒をくっつけて作ります。
ネタとシャリを重ねて、じっくり冷やしたら完成です。
富山ガラス工房では普段、体験でパーツをつけたり、道具を使って筋などをつけたりしていないため、貴重な機会だといいます。
田中さんは、「ガラスの動きのおもしろさに目を向けてもらえるとうれしいです」と話します。
お寿司の制作体験は10月末までですが、Xで話題になったこともあって予約が殺到。すでに全約420枠が満席になっています。通常の体験は富山県内や隣県の申し込みが中心ですが、今回は全国から申し込みがあったそうです。
キャンセルが出た場合は予約サイトに反映されるといいます。
「すしのまちとやま」を担当する富山市観光協会の太田直さんは、「寿司とガラスを組み合わせたら、ものすごいコンテンツになることを発見できました。これは富山市にしかできないオリジナルのコンテンツです」と話します。
太田さんによると、富山は江戸時代に「くすりの富山」として名を馳せ、ガラスの薬びんの産地に発展しました。
1980年代にはガラス作家の育成に取り組み、1991年には全国初で唯一の公立ガラスアート専門学校・富山ガラス造形研究所を設立。2015年には富山市ガラス美術館も開館しました。
ガラスをテーマにしたまちづくりに取り組んできた富山市が昨年12月に始めたのが、観光推進事業「すしのまちとやま」です。
100年以上の歴史がある名産「ます寿司」のほか、「きときと(富山の方言で『新鮮』)」な魚を使ったお寿司を国内外の人に知ってもらおうとPRしています。
太田さんはXでの反響を受け、「『富山市=寿司のまち』はまだまだ認知度不足のため、『ガラスのまちとやま』と『すしのまちとやま』の魅力や認知度の拡大につながれば」と期待します。
「お寿司のガラス作りとおいしいお寿司を食べに、『すしのまちとやま』を旅の目的地に選んでくれる方が増えると大変うれしいです」
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